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マイクル・コナリー(古沢嘉通訳)『ブラックボックス』(上・下)2017・講談社文庫

2024年01月11日 | 小説を読む

 2018年のブログです

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 この間読んだマイクル・コナリーさんの『転落の街』がとても面白かったので、最新作の『ブラックボックス』(上・下)(2017・講談社文庫)も読んでみました。

 こちらも、ボッシュ刑事のシリーズの一冊ですが、ドキドキ、ハラハラで、すごい小説です。

 詳しくは書けませんが、ロサンゼルス暴動やイラク戦争に関係した犯罪をめぐって、ボッシュ刑事の野生の魂が叫ぶかのような刑事ものです。

 前作同様、官僚制に支配された警察組織の中で、ボッシュはただ被害者やその家族の無念さを決して忘れずに、困難さと闘います。

 現実の世の中では、つい長いものに巻かれてしまいがちなわたくしたちの目を覚ましてくれるかのような行動に、ドキドキしながらも読者は一体化してしまいます。

 ここがこの警察小説の真骨頂でしょう。 

  また、アメリカらしく、再婚同士の恋愛模様やそれぞれの家族との葛藤も描かれ、私生活でもことは楽天的にはなりえない社会が描かれます。

 何が正義で何が悪か、簡単には見極められない、時間と丁寧な生き方を貫かないとわかってこないような現代の世の中がこまやかに描かれます。

 読者も単純な判断はできず、読者は時間と丁寧さと誠実さを持って読み進めなければ、ボッシュ刑事との理解を分かち合えないような、複雑で、深い事態も描かれます。

 そこには、人々への深くて、温かで、確かなまなざしが感じられます。

 だからこそ、年寄りのじーじのような読者にも心地よい満足を与えてくれるのだろうと思います。

 組織や国家、人生や社会を深く考えてみたい人や正義や悪、救いなどを感じてみたい人などにはおすすめの小説だと思います。  (2018.1 記)

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 2020年11月の追記です

 今ごろ、気がつきましたが、ここでも、単純な二分法に陥らずに、あいまいさに耐えることの大切さが描かれているようです。  (2020. 11 記)

 


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