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ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや原っぱカウンセリングなどをやっています

河合俊雄『村上春樹の「物語」-夢テキストとして読み解く』2011・新潮社-物語のちからを考える

2025年07月14日 | ユング心理学に学ぶ

 2011年のブログです

     *   

 河合俊雄さんの『村上春樹の「物語」-夢テキストとして読み解く』(2011・新潮社)を読みました。

 面白かったです。

 難しかったですけど…(河合さんの伝えたいことの2割くらいは理解できたかなあ?)。

 印象に残ったのは「物語の力」ということ。

 俊雄さんのお父さんの河合隼雄さんがどこかで、人はみな自分の人生の物語を書いている、というような趣旨のことを言われていたと思うのですが、本当にそう思います。

 我々は小説までは書けないけれど、自分の人生は書いているのだと思います。

 しかし、たいていは思うようには書けないし、思ってもみない悲しい物語や厭な物語になってしまうのかもしれません。

 でも、物語は書き換えることが可能なようです。

 村上春樹さんの小説を読むとそう感じますし、今回、河合俊雄さんのこの本を読んでますますそう思いました。

 良い小説、物語とはそういうものなのでしょう。

 そして、心理療法もおそらく同じような作業ではないかと思います。

 悲しい物語や厭な物語で苦しんでいるクライエントさんと一緒に、その人に何か他の物語がないのか、ゆっくりと検討をする作業ではないかと思います。

 カウンセラーは直接、クライエントさんの他の物語を見つけることはできませんが、クライエントさんが他の物語を見つけるプロセスのお手伝いはできそうに思います。

 少なくとも今後、そういう訓練を続けていきたいなと思いました。          (2011 記)

     *

 2020年5月の追記です

 物語の書き換え、といっても、なかなか難しいことだと思うのですが、精神分析では、反復の問題に注目します。

 人生の反復に気づくと、少しは何かが違ってくるのかもしれません。         (2020.5 記)

     *   

 ゆうわファミリーカウンセリング新潟(じーじ臨床心理士・赤坂正人)のご紹介

 経歴 

 1954年、北海道函館市に生まれ、旭川市で育つ。

 1970年、旭川東高校に進学するも、1年で落ちこぼれる。 

 1973年、某四流私立大学文学部社会学科に入学。新聞配達をしながら、時々、大学に通うが、落ちこぼれる。 

 1977年、家庭裁判所調査官補採用試験に合格。浦和家庭裁判所、新潟家庭裁判所、同長岡支部、同新発田支部で司法臨床に従事するが、落ちこぼれる。

 1995年頃、家族療法学会や日本語臨床研究会、精神分析学会、遊戯療法学会などで学ぶ。 

 2014年、定年間近に放送大学大学院(臨床心理学プログラム・修士課程)を修了。 

 2017年、臨床心理士になり、個人開業をする。

 仕事  心理相談、カウンセリング、心理療法、家族療法、遊戯療法、メールカウンセリング、面会交流の援助などを研究しています。

 所属学会 精神分析学会、遊戯療法学会

 論文 「家庭裁判所における別れた親子の試行的面会」(2006・『臨床心理学』)、「家庭裁判所での別れた親子の試行的面会」(2011・『遊戯療法学研究』)ほか 

 住所  新潟市西区

 mail    yuwa0421family@gmail.com

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村上春樹『一人称単数』2020・文藝春秋-死の影、邪悪なるもの、そして、黒ビール

2025年07月14日 | 村上春樹さんを読む

 2020年7月のブログです

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 村上春樹さんの新しい短編集『一人称単数』(2020・文藝春秋)を読みました。

 6年ぶりの短編小説集ということで、8作からなります。

 面白かったです。

 短編小説集というのは、いろいろな小説が入っているので、それぞれに感じるところがあって、面白いです。

 いわば、日替わり定食みたいで、どれもそれぞれにいいです。

 ここで、突然、日替わり定食のたとえが出てきたのは、おそらくは、最近、読んだ原田マハさんの『まぐだら屋のマリア』(2014・幻冬舎文庫)のせいだと思うのですが、そういえば、マハさんのこの小説も、死、邪悪、そして、生き残ることなどがテーマだとも読めます。

 さて、村上さんの短編集。

 それぞれに味わい深い小説が並びますが、そこに流れている共通なもの、それは、死の影、邪悪なるもの、などでしょうか。

 もちろん、これは、あくまでも、じーじの今の感じ方ですが、ただ、村上さんの小説といえば、『羊をめぐる冒険』以来、死と邪悪なるもの、がテーマの一つではないか、とじーじは思っていて、この短編集でもそれを感じてしまいます。

 そんな中で、「クリーム」に出てくる関西弁の不思議な老人、知恵を授けてくれるかのような「老賢者」のような老人、ここの場面でじーじはなぜか河合隼雄さんを思い浮かべました。河合さんが大切なことを関西弁でしゃべっている…。

 そして、黒ビール。

 これは、「ヤクルト・スワローズ詩集」という短編に出てくるのですが、村上さんは、自分の書いている小説を、みなさんの好まれる普通のラガービールでなく、黒ビールにたとえます。

 ちょっと苦いけど、奥の深い黒ビール。

 いいですねぇ。じーじも大好きです。

 文字通り、味わい深い短編集です。      (2020.7 記)

 

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