台湾風俗誌第1集
第1章 台湾人の出産
第1節 病囝(ビイキア)
夫人の懐胎の始めを病囝と称す、これ内地の「つわり」なり、病囝婦人の身体生理状態は内地婦人の「つわり」と異なる所なく、唾液は頻(しき)りに出て酸味を欲し時々頭痛あり、又悪寒嘔吐を催し心気万時に懶き(ものうき)など皆同じ。
第2節 迷信
病囝より臨月に至るまでの間衛生上の注意として別に記すべきことなし、只迷信的注意二三あり、胎児は胎なる神の支配を受け居るものなれば若し此の怒りに触れるる時は胎児を奪われると云う、此の胎は姙婦の居住する家屋内に在りて或る時は箱、ある時は桶、籠等何れの處に居るや一定せず、若し不知の間に妊婦之れに触るる時は胎怒りて妊婦を病ましむ、此の時妊婦は道士と称する祈祷者を呼び来たり「安胎」と称する祈祷をなす。道士は病囝者(妊婦の枕邊)にて鉦笛を鳴らし数時間読経し後ち符(ふ)と称する呪文書きたるものを床柱或いは門柱に貼布し、尚ほ呪文を唱へつ、湯又は水を飲ましめ、之を以て胎去り、胎児安全を得たるものとなす風あり、又「換斗(オアタウ)」という語あり、
已(すで)に懐胎せる胎児を祈祷の結果女子又は男子に変胎せしむるものなりといふ、その法先ず「青瞑(セエメエ)」と称する盲目の祈祷者又は道士に請ひ、米桝に根のある芙蓉花を植え祈祷者とともに神廟に持ち行き、牲醴香燭を供へ、道士神前にて読経し、婦人はその傍らに香を焚き紙を焼き(銭紙と称するもの)三跪九拝し心中に換斗(オアタウ)(變胎)を祈り、数時にして家に帰る、其れより三日間室内に於いて祈祷を継続し、後芙蓉花を庭前に植え以て變胎し終わりたるものなりと云う、此の時詣づる廟は臨水婦人廟(リムツイフジンビオ)又は「註生娘娘[ツウシイニウニウ」の廟にしてこれ等の神は胎児を授くるの神なりと云う、妊婦室内に於いて物品を縛するときは手足湾曲せる俗に茗荷児(ミョウガジ)なるものを生ず、又剪刀を以て鋏む時は無耳児(ムジジ)生じ、錐又は針にて物を貫けば盲目児(モウモクジ)物を焼けば(ショウランジ)、傀儡戯を見れば無骨児(ムコツジ)牛を牽く縄を跨ぐときは十二箇月にして児生まれ、喪家の演出したる芝居を看れば不吉なりと云う、又夜間外出すれば黒虎神に觸れ必ず凶あり、盂蘭盆会の時妊婦の腰桶を庭前に露出するときは普度公(ポオトオコン)の怒りに觸れ凶あり、死人の棺に觸るれば児夭折すると云う(その他迷信の部参照)
(うーん、これは家事をやらせない為の知恵かもしれないね。)
第1章 台湾人の出産
第1節 病囝(ビイキア)
夫人の懐胎の始めを病囝と称す、これ内地の「つわり」なり、病囝婦人の身体生理状態は内地婦人の「つわり」と異なる所なく、唾液は頻(しき)りに出て酸味を欲し時々頭痛あり、又悪寒嘔吐を催し心気万時に懶き(ものうき)など皆同じ。
第2節 迷信
病囝より臨月に至るまでの間衛生上の注意として別に記すべきことなし、只迷信的注意二三あり、胎児は胎なる神の支配を受け居るものなれば若し此の怒りに触れるる時は胎児を奪われると云う、此の胎は姙婦の居住する家屋内に在りて或る時は箱、ある時は桶、籠等何れの處に居るや一定せず、若し不知の間に妊婦之れに触るる時は胎怒りて妊婦を病ましむ、此の時妊婦は道士と称する祈祷者を呼び来たり「安胎」と称する祈祷をなす。道士は病囝者(妊婦の枕邊)にて鉦笛を鳴らし数時間読経し後ち符(ふ)と称する呪文書きたるものを床柱或いは門柱に貼布し、尚ほ呪文を唱へつ、湯又は水を飲ましめ、之を以て胎去り、胎児安全を得たるものとなす風あり、又「換斗(オアタウ)」という語あり、
已(すで)に懐胎せる胎児を祈祷の結果女子又は男子に変胎せしむるものなりといふ、その法先ず「青瞑(セエメエ)」と称する盲目の祈祷者又は道士に請ひ、米桝に根のある芙蓉花を植え祈祷者とともに神廟に持ち行き、牲醴香燭を供へ、道士神前にて読経し、婦人はその傍らに香を焚き紙を焼き(銭紙と称するもの)三跪九拝し心中に換斗(オアタウ)(變胎)を祈り、数時にして家に帰る、其れより三日間室内に於いて祈祷を継続し、後芙蓉花を庭前に植え以て變胎し終わりたるものなりと云う、此の時詣づる廟は臨水婦人廟(リムツイフジンビオ)又は「註生娘娘[ツウシイニウニウ」の廟にしてこれ等の神は胎児を授くるの神なりと云う、妊婦室内に於いて物品を縛するときは手足湾曲せる俗に茗荷児(ミョウガジ)なるものを生ず、又剪刀を以て鋏む時は無耳児(ムジジ)生じ、錐又は針にて物を貫けば盲目児(モウモクジ)物を焼けば(ショウランジ)、傀儡戯を見れば無骨児(ムコツジ)牛を牽く縄を跨ぐときは十二箇月にして児生まれ、喪家の演出したる芝居を看れば不吉なりと云う、又夜間外出すれば黒虎神に觸れ必ず凶あり、盂蘭盆会の時妊婦の腰桶を庭前に露出するときは普度公(ポオトオコン)の怒りに觸れ凶あり、死人の棺に觸るれば児夭折すると云う(その他迷信の部参照)
(うーん、これは家事をやらせない為の知恵かもしれないね。)