どんまい

いろいろあるけれど、それでいい。

ばあちゃん、おめでとう

2008年09月11日 | little story
「迷惑をかけたくない」
ばあちゃんの言葉を聞いて、
母さんは、ばあちゃんの子どもだったんだと改めて感じた。

「迷惑かけるんじゃない」
母さんは、しきりに俺に言ってたっけ。

「たまあには、迷惑かけても良いんじゃない?」
俺は、ばあちゃんに、そう言った。

ばあちゃんが、10日ばかり入院した。
盲腸以来の入院だって、ばあちゃんは言ってた。

ぽっくり逝きたいねぇと、昔、言っていた、ばあちゃんの言葉の意味を知った。
ばあちゃんは、人に迷惑をかけたくないんだ。
人に迷惑をかけたいなんて思ってる人はいないだろうけれど、
ばあちゃんは、その想いが人一倍強い。
今回の入院で、初めて知った。


退院の日、ばあちゃんが「冷蔵庫にあるものでも食いなさい」って言ったから、
ベッドの横に座っていた俺は、腰を上げ、
缶コーヒーでも入っていないかって、
冷蔵庫を開けた。

「ばあちゃん、これ何?」

ビニールに入った白い箱。
そこには、ケーキが入っていて、
「退院おめでとう」の言葉。

一番上のいとこの姉ちゃんからのプレゼントだって、ばあちゃんが教えてくれた。

ケーキかぁ。思いつかんかったなぁ。
「退院おめでとう」を書くのにプレートがなかったんだな、
それで誕生日のプレートの上に書いたんだなって、一人で呟いていたら、

「入院していて何日かも忘れていたけれど、今日は、誕生日だったねぇ」
ばあちゃんは静かに、そう言った。

まじで?
ということは、退院の日と、誕生日が一緒で、
そのことまで、一番上のいとこの姉ちゃんは知ってたのか?
すげぇ。
誕生日まで覚えてるのすげぇ。
俺はばあちゃんよりも興奮した。


写真嫌いのばあちゃんが、そのケーキを持ち、
俺が向けたカメラの前で、微笑んだ。


ばあちゃん、退院できたのみんな喜んでるよ。
退院おめでとう。
そして、誕生日、おめでとう。



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