どんまい

いろいろあるけれど、それでいい。

ねぇ、マザーテレサ

2008年01月29日 | little story
二人は、別れを惜しみ、力強く握手をして、それぞれの旅を続けた。
一人は、「サイババに会うんだ」と南に向かい、
一人は、「マザーテレサゆかりの地に行くんだ」と東に向かった。

マザーテレサゆかりの地を目指した俺は、
その旅の途中、タクシーに乗れば金をぼられ、
金をぼられたかと思ったら、インド人と喧嘩をし、
インド人と喧嘩をしたかと思えば、病気になり、
帰りたい、帰って、まずはラーメンを食いたいと、
いつしか、頭の中は、帰りたい一色になっていた。

旅は終わりを迎え、
マザーテレサゆかりの地であるカルカッタに辿り着いた。
今すぐにでも帰りたくて、何も見ないまま、
空港に向かい、日本に帰ってきた。


「愛の反対は、無関心です」


あれから数年後、どこで聞いたかも忘れた、
マザーテレサの言葉が頭に繰り返される。

「ねぇ、マザーテレサ。無関心も悲しいけれど、
悪口、陰口を言われるくらいなら、無関心の方が良いんじゃないだろうか?」

そんなことを考えながら、ビデオ屋で見つけた1本のビデオ。
「マザーテレサ」

マザーテレサは、時に悪口を言われ、時に陰口を言われていた。
カルカッタの貧しい人々への活動は、
時に、修道院の気品を落とすと言われ、
時に、マスコミのスキャンダルに巻き込まれた。

どうして、それでも続けてこれたんだろうか?

無関心も悲しいことです。
悪口も悲しいことです。
陰口も悲しいことです。

マザーテレサが言っていたわけじゃないけれど、
DVDを観ながら、俺の質問は愚問だったと気づいた。


まだ会っていない人に元気づけたいって気持ちは変わらんけれども、
まずは、身近な、大切にしている人からだな。


笑うことからだな。





吹雪の中に鳴り響く三味線の音色

2008年01月26日 | little story
すごい陽気で、俺の母ちゃんよりも年上のおばちゃんが一人いて、
そのおばちゃんは、いつも笑顔で、分け隔てなく、人に声を掛ける。

俺が、この土地に来たばかりで、誰も知っている人がいなかった頃、
陽気に声をかけてきてくれたのも、このおばちゃんだった。

そのおばちゃん。
今まで、二度ほど、すごい落ち込んでいることがあってね。

昨年の夏の話だ。

旦那さんが亡くなってね。
そりゃあ、もう生きている意味がないくらいな感じで、俺は、声をかけるのも緊張した。
言葉がみつからない。

やっと、少しずつ、少しずつ、元気になってきた数ヶ月後、
今度は、地震だ。
中越沖地震。

「地震、大丈夫でしたか?」俺は、そう尋ねると、
「だめだったよ。避難しろって。旦那との思い出の家も奪うのかって思ったよ」
「追い打ちをかけるんじゃねぇよ。地震」と俺は、心の中で頭を掻いた。
そのおばちゃんは、仮設住宅に入った。

あれから、少しばかりの時が流れ、冬。
おばちゃんは、元気だ。

たぶん、俺の知らないところで、いろんな人が元気をわけたんだろう。
おばちゃんが、知らず知らずのうちに、人に配っていた笑顔は、
おばちゃんが辛い時に戻ってきたんだろう。


昨日、そのおばちゃんから「伝言だ」って言う人がいて、
俺は珍しいこともあるもんだなって話を聞いた。

「明日、津軽三味線を弾くから聴きに来いって。あなたが津軽三味線好きだから、
来たいはずだって言ってたよ」
「は~」俺は力なく返事をし、「津軽三味線が好きだって、言ったことないっすよ」と答える。
おばちゃんの中で、どこで、どう、俺が、津軽三味線好きってことになったんだろう。
俺のイメージか?

三味線に興味もないから適当に話しを聞いていたんだけど、
また、少したった頃、
「明日、来れるかな?来れるかな?」って言ってたよと二度目の伝言。

「明日、用事あるんだよなぁ」と思ったけれど、時間と場所だけでも、
聞いておくかって、伝言をしてくれた人に聞き直した。

「3時半だって」

やっぱ、無理だ。
おばちゃんの喜ぶ顔は見られそうもない。
今度、会った時に謝るか。




555

2008年01月25日 | little story
「¥555」


「おっ」
そう、俺は心の中で、つぶやき、目は少し、カッと開いた。
レジに並んだ5の数字が3つ。
ちょっとしたラッキーを味わい、
俺は1005円を店員に渡し、お釣りを受け取る。

外はあいかわらず雪。
今日、一日、強い風に、ひっきりなしの雪。
首を引っ込め、車に乗り込み、家路についた。

夕飯を食ったのに、夜中になると、再び、腹が減ってくる。
よくある話だ。

そうこうしていると、待ちに待った3分。
お湯をきるため、焼きそばを持ち、傾ける。

ボットン

銀色の台所に、白い麺。
見るからに全部。
ふたを開けたら、少しのお湯とかやく。
残っている麺はカス。

「楽しみにしてたのによ」
こんな寒い中、再び、ハンドルを握る意欲もわかず、
部屋に戻り、ストーブの前に座る。

「特製ソース」

スタンバイしていたソースの袋を眺めながら、
「特製」ってのが、何か虚しいなと、
俺は、溜息を飲み込む。

良いことがあれば、悪いこともあり、
悪いこともあれば、良いこともある。
よくある話だ。


特製ソースは、お湯の前には入れるなよ。
それは、それで悲しい話だから。




後ろを振り返り、足跡を確認

2008年01月22日 | little story
「最近、パチンコ行ってんのか?」俺は、後輩とすれ違う時に、そう尋ねる。
「行ってないっすよ。最近、ボードに行ってます」スノーボードに行った感じもしない肌の後輩は、そう答える。
「また、無駄な金の遣い方だな」
「いや、いや…」と後輩は笑う。


先日、俺は、一人作戦会議に集合するため、とある喫茶店に向かう途中だった。
向かう途中には、一軒のパチンコ屋があって、ふと目にすると、2台の車とパトカー。

「ぶつけたんだな…。仮にだ。仮に、一人は、これからパチンコを打つぞと意気込み、かたや、財布の中身を眺め、落胆し、くそったれと、イライラした状態で、ぶつかったとする。その瞬間…。死にたくなるだろうなぁ」

また、最近、聞いたパチンコにまつわる話を思い出す。
「いやな想いをして、働いた金をパチンコで、なくなるのは、もういや」心に突き刺さった。その通りだ。

俺は、そんなことを想像し、到着。
ここ最近、体が炭酸を求める。
疲れた時には、甘いものを欲するけど、炭酸は、何のサインなんだろうか?

コーラを飲みながら、この楽雲庵日記を読む。

「俺は、昨年も、一昨年も、この時期には、寝太郎こと眠気と闘い、2月、3月には、別れを惜しみ、憂欝に飲み込まれる。代わり映えしねぇな」

久々に振り返った、自分の足跡。



もう、既に、今年も同じ感じだけど、2月、3月は、ちげぇぞと、俺が俺につぶやく。

たこ、たこ上がれ。

2008年01月15日 | little story
「横をこの長さにすると、縦は・・・・」

俺は、もっと高く、凧を飛ばしたくて、
もっとでかい、凧を作った。

なんていう種類の凧だったか。
ビニールで作り、両サイドに1本ずつの棒をつけ、
棒から先、三角形になっているてっぺんに、1本ずつの糸をつける。
売っている凧を買ったこともあったが、全然、飛ばず、
この通称、ビニール凧が初めて、空高く飛んだ。

中央には、好きな絵や文字を、マジックで入れる。
たぶん、ぬけ作先生を描いていた気がする。

俺の実家は、畑が多く、
凧を飛ばすには、もってこいの場所だ。

そのでっかい凧は、見事、空に舞う。

「もっと、もっと高く飛ばしてぇな」って、
今度は、タコ糸を、合体させる。

2本分にしても、飽きたらず、
3本分のタコ糸を、1本にする。
タコ糸も強烈な長さ。

あまりのひきの強さに、糸は、ナイフのような状態となり、
指を切りながら、飛ばす。

何百メートル上空を飛んでいるんだろう。
あんなでっかい凧が、小さく見える。
嬉しくて仕方がない。


何度目だっただろう。
その時は、今までになく高いところを飛んでいた。

そう思っていた時、
一気に、手元の手応えはなくなった。

視線の先の凧は、ゆらゆらと揺れ、
ゆっくりと落ちていく。

糸が切れた。

それは、結び目から切れたのか、耐えられなくなって途中で切れたかは、
定かではないが、とにかく切れた。

俺は、泣きそうになりながら、
じっと、落ちていく凧を眺めた。

「もう、あの高さからだと、どこに行ったかも見つけられないだろうな。あ~あ、住所を書いておけば良かったなぁ」
探すのをあきらめ、いじけながら、家に向かった。


こんな雪降る季節の数十年前の記憶。


『江戸川ハートブレイカーズ』須田信太郎:講談社

2008年01月15日 | book
「人に勇気を与えるには、どうしたら良いんだろうか?」

そんなことを考えることがある。
ただ、前向きな言葉だけで良いのか?
否。

この漫画に登場する中心的な人物。勝又と浅ちゃん。
冴えない生活を送り、迷いながら生きている。
迷いながら生きてはいるけど、自分に素直に生きようとしている。

そんな大学生とプー太郎の物語なんだけど、
時々、すごいカッコイイ言葉やカッコイイ行動があり、メッセージ性が強い。


この漫画は、既に廃盤になっており、なかなか手に入れることはできない。
ラッキーなことに、近所の古本屋で、2巻を最初に手にしたんだけど、
その後、1巻が見つからない。
もう、こうなったら、少々高くても、1巻を読みたい。
そうして、やっと手に入れた1巻。
全2巻なんだけど、2冊で終わるには、もったいない。
そんな漫画。


「今がクソでさ・・・、これからが地獄だろうが・・・・、親を発狂させようが・・・、感じてることを殺して生きていくなんて、アホじゃん・・・」
(江戸川ハートブレイカーズ2巻)


俺も格好良く、ありたいなぁ。


カマキリの涙

2008年01月08日 | little story
俺は、寒い空の下、煙草を吸いながら、
ふと、足元の先に2匹のカマキリがいることに気づいた。
1匹のカマキリが、もう1匹のカマキリを喰らっている。

「これが、交尾後のカマキリの姿か。むごいな・・・」

俺は、その2匹のカマキリを、じっと眺めた。
しばらく眺めていると、1匹のカマキリが、
急に振り返り、俺を見る。
いや、睨みつける。
俺には、そう見え、ドキッとした。

「カマキリに睨まれたくらいで、ビビるかよ」
俺も負けじと目を反らさなかったけれど、
ふと、「もし、カマキリに涙があったなら、今は、泣いているのかもしれないな」と思えてきて、「申し訳ない」と目を反らした。

愛すべき人を自らの手で失い、それでも子孫を残す。
カマキリに、悲しいという感情があるかはわからない。
ないような気もする。
だけれども、俺にとっては辛いことのように思える。
そんな場面を興味本位で、見てはいけない。
そう思った。


そもそも、交尾後のカマキリの話は、友達から聞いた。

「交尾後、子どもを産むために、メスはオスを食う。
俺も、食われてもいいやって思えるくらいの人と一緒になりたい」
そんな内容で、「かっこいいよ、その話」と、俺は、友達に言った。

友達は、その話をした数年後、言葉通りの行動をとる。
その行動は、すごい勇気がいる行動だった。
なんとなく、申し訳ない気がするから、詳しくは書かないけれど、
片思いからのスタートを切るわけだ。
俺は、その話を聞き、再び、「かっこいいよ」と伝えた。

それから、さらに数年後の2008年。
その友達は、結婚することとなった。
想いが実現した。

俺は、その結婚式で、三度、「かっこいいな」って、つぶやくだろう。

寒い冬の夜空

2008年01月07日 | little story
「シュッポ、シュッポ。ピューッ」

赤い楕円形の灯油ポンプの脇から、
一直線に、時には、手に流れ落ちながら、灯油を入れる。

「くそっ。灯油が高くなってきているに」
壊れかけた赤い色の灯油ポンプ。
新しい灯油ポンプを買えば済む話だけど、それもめんどくさい。
たいした量しか入らなかったタンクを持ち、部屋に入る。

ここの所、灯油ポンプを見る度に、
「考えついた人、すげぇな」って思う。

ちなみに、灯油のポリタンクの位置を高くして、
灯油を入れる側のタンクを下にすると、
自動で灯油は流れ落ちる。

すげぇって思っているまもなく、
大量の灯油が玄関にある靴の中に流れ込んだ。
それ以来、この手法は用いていない。


部屋に寝っ転がり、足は、ストーブの前にのばし一人。
ただ、その時、流れているテレビを見る。

年末は、地元、北海道にも帰らず、
年越しそばは、緑のきつね、いや、たぬきか。
どっちかも、今はわからず、
ダラダラと、ただダラダラと、
時だけが流れる。


年の暮れの12月の夜に、ふと、こんなことを考えた。
「何か、元気がないサラリーマンが元気になるような本でも書きたいな」

どんなきっかけで、元気になるのだろうか。
いや、ちょっと待てよ。
俺自身が、掴んでいない。
よって、保留。

これからの楽雲庵塾を、いろいろ考えた。


そんな2008年のスタート。
今年も悪あがこうか。