○ まひるまにすべてのあかりこうとつけたったひとりの海の記念日
○ 髪の毛のかかる視界でこの町を見ていたのびていくあいだじゅう
○ 双子座をわたる惑星心臓の音が聴こえてきそうなくらい
○ 誰も知らないことなのに両腕に鳩をあつめるあのおじさんは
○ はじめからゆうがたみたいな日のおわり近づきたくてココアをいれる
○ コーヒーをむらすたまゆら香りたちひとり暮らしで覚えたことは
○ バスタブに水を満たして一日の確かに冷えてゆくまでを見る
○ そういえば、友の便りに先の夫父になったと知る春炬燵
○ ソメイヨシノの泡いっぱいの窓ガラス 父はチューブで生かされ眠る
○ ひとは行くさくらの下をほほえんでひとりにならないように探して
○ 晴れの日も自分の好きな色ひとつうしなっているこのごろの母
○ まっしろなさくらのかげがひらひらと落ちてくる橋母と渡りぬ
○ おまえは、おとうさん似と母が言うわたしの顔を見もせずに言う
○ 稲の穂がさわぐわたしは母の手をひいていかねばならないだろう
○ からからとマーブルチョコはちらばって風邪ひきの日の夢のあかるさ
○ なかゆびのゆびわがひかる急に日が落ちたとおもう鏡の中で
○ 手づかみで落したケーキひろいおりきのうの夢の瑞々しくて
○ 夏ごとに黒くなる腕過ぎてきたひかり確かに刻まれてゆく
○ からからとマーブルチョコはちらばって風邪ひきの日の夢のあかるさ
○ すなどけいおちていくのをさいごまでみていたご飯の支度しなくちゃ
○ 一日はすぐ四時になる食べかけたチーズケーキの思わぬ甘さ
○ なかゆびのゆびわがひかる急に日が落ちたとおもう鏡の中で
○ きょうまでのことをひとつのお茶碗ですませるような夜をつくろう
○ 思い出の指輪をバケた歯ブラシでみがく あしたの天気予報は
○ 三人だけの家族を照らす店灯りぜったい変わることのないもの
○ 眠る前顔を洗っている母の音まだなのかもう終わるのか
○ 病院の庭といるのはさみしくてきょう一日はなんの一日
○ この家の鍵を上手にあけるのは弟だけのわたしの家族
○ 弟はわたしにつかめない空のなかを飛びおり生業として
○ 友はいま舞台の上で琴を弾く海のむこうで生まれたひとと
○ ひとは行くさくらの下をほほえんでひとりにならないように探して
○ 冬の陽は平等に射す街路樹も人も車も色を失う
○ 八階の窓から見える艶のない街にコップの水をかけたい
○ 地下鉄で卒園式の子を連れた人の現実感と行き会う
○ 引越しの荷物見送り泣いていた友を今夜はわが家に泊める
○ 忘れ物とりに戻った玄関のおぼえていたい靴の大きさ
○ どうしたら枯れるのだろう君といた五月の緑のような記憶は
○ 踏切でひとの叫びに似た音がしたわたしいまここにいたのに
○ すばらしい日々を半音ずつ上がり下がりしながらやがて忘れる
○ 澄んでいく町に味方はいらなくて帽子を深く被って歩く
○ 言い訳も美談も恋も謙遜もなくて田んぼのなかの鉄塔
○ ぬけだしたみどりほうれん草よりもみどりの水となって流れる
○ 受け止めることのできないあたたかい言葉残らずこの身を通れ
○ そろばんの背で線を引く母の引く境界線の今日はうちがわ
○ ひざこぞううつくしいのはつくりものきみはひとりで見つけなさいね
○ おかえりなさい海の色したブルドーザー町をひたひたくずしていく
○ すばらしい日々を半音ずつ上がり下がりしながらやがて忘れる
○ 稲の穂がさわぐわたしは母の手をひいていかねばならないだろう
○ じゅんばんに遠いところへ近づいていく信号は青にかわって
○ 髪の毛のかかる視界でこの町を見ていたのびていくあいだじゅう
○ 双子座をわたる惑星心臓の音が聴こえてきそうなくらい
○ 誰も知らないことなのに両腕に鳩をあつめるあのおじさんは
○ はじめからゆうがたみたいな日のおわり近づきたくてココアをいれる
○ コーヒーをむらすたまゆら香りたちひとり暮らしで覚えたことは
○ バスタブに水を満たして一日の確かに冷えてゆくまでを見る
○ そういえば、友の便りに先の夫父になったと知る春炬燵
○ ソメイヨシノの泡いっぱいの窓ガラス 父はチューブで生かされ眠る
○ ひとは行くさくらの下をほほえんでひとりにならないように探して
○ 晴れの日も自分の好きな色ひとつうしなっているこのごろの母
○ まっしろなさくらのかげがひらひらと落ちてくる橋母と渡りぬ
○ おまえは、おとうさん似と母が言うわたしの顔を見もせずに言う
○ 稲の穂がさわぐわたしは母の手をひいていかねばならないだろう
○ からからとマーブルチョコはちらばって風邪ひきの日の夢のあかるさ
○ なかゆびのゆびわがひかる急に日が落ちたとおもう鏡の中で
○ 手づかみで落したケーキひろいおりきのうの夢の瑞々しくて
○ 夏ごとに黒くなる腕過ぎてきたひかり確かに刻まれてゆく
○ からからとマーブルチョコはちらばって風邪ひきの日の夢のあかるさ
○ すなどけいおちていくのをさいごまでみていたご飯の支度しなくちゃ
○ 一日はすぐ四時になる食べかけたチーズケーキの思わぬ甘さ
○ なかゆびのゆびわがひかる急に日が落ちたとおもう鏡の中で
○ きょうまでのことをひとつのお茶碗ですませるような夜をつくろう
○ 思い出の指輪をバケた歯ブラシでみがく あしたの天気予報は
○ 三人だけの家族を照らす店灯りぜったい変わることのないもの
○ 眠る前顔を洗っている母の音まだなのかもう終わるのか
○ 病院の庭といるのはさみしくてきょう一日はなんの一日
○ この家の鍵を上手にあけるのは弟だけのわたしの家族
○ 弟はわたしにつかめない空のなかを飛びおり生業として
○ 友はいま舞台の上で琴を弾く海のむこうで生まれたひとと
○ ひとは行くさくらの下をほほえんでひとりにならないように探して
○ 冬の陽は平等に射す街路樹も人も車も色を失う
○ 八階の窓から見える艶のない街にコップの水をかけたい
○ 地下鉄で卒園式の子を連れた人の現実感と行き会う
○ 引越しの荷物見送り泣いていた友を今夜はわが家に泊める
○ 忘れ物とりに戻った玄関のおぼえていたい靴の大きさ
○ どうしたら枯れるのだろう君といた五月の緑のような記憶は
○ 踏切でひとの叫びに似た音がしたわたしいまここにいたのに
○ すばらしい日々を半音ずつ上がり下がりしながらやがて忘れる
○ 澄んでいく町に味方はいらなくて帽子を深く被って歩く
○ 言い訳も美談も恋も謙遜もなくて田んぼのなかの鉄塔
○ ぬけだしたみどりほうれん草よりもみどりの水となって流れる
○ 受け止めることのできないあたたかい言葉残らずこの身を通れ
○ そろばんの背で線を引く母の引く境界線の今日はうちがわ
○ ひざこぞううつくしいのはつくりものきみはひとりで見つけなさいね
○ おかえりなさい海の色したブルドーザー町をひたひたくずしていく
○ すばらしい日々を半音ずつ上がり下がりしながらやがて忘れる
○ 稲の穂がさわぐわたしは母の手をひいていかねばならないだろう
○ じゅんばんに遠いところへ近づいていく信号は青にかわって