ただなんとなくね

日々のあれこれ
ふとした気づきや思い
忘れないうちに留めておく場所

新作です。

2008-12-25 | Weblog
      「善人にあらず」                         2008.12.24イブの夜に  
 H氏は善人である。その日もH氏は嘆いていた。テレビをつければ富の奪い合いを繰り広げる大国の争いと名も無き民衆の悲惨な生活ばかりがH氏の目に飛び込んでくる。核エネルギー研究者でもあるH氏は人はどこから来てどこへ行くのか?という疑問を持ちせめてよりよい道にみんなと行きたいそのために、自分の力を役立てたいと思い研究に没頭していた。しかし研究は遅々として進まず焦りと共に、世界中のみんなのためにと言うその思いは日増しに強くなり、最近ではほとんど祈りに近いものとなっていた。
 祈りは通じるものである。その日いつものように研究室に閉じこもっているH氏の机の前に、突然の何もない空間からまばゆい光と共に彼はやってきた。
彼は唖然とするH氏に告げた「あなたの祈りは聞き届けられた。あなたは求める答えを与えられるであろう。」そう告げると右手を指先を訳も分からず立ちつくすH氏に向けた。その指先が徐々に光を強めていった。「ちょっと待ってください。突然そういわれても戸惑うばかりです時間をください」H氏にはそう言うのが精一杯だった。彼は「それでは今夜もう一度あなたに会いに来ましょう」そう告げると光の中に入っていき徐々に姿を消してしまった。奇跡を目にしたH氏はそれを否定する頑迷な石頭でもなかった。ただ、この現実をどうするかを考え始めた。
 その夜、H氏の前に再びまばゆい光と共に彼は姿を現した。
「今あなたはその答えを得るであろう」そう告げると右手から白い光の筋がH氏の眉間を今度は確実に貫いた。答えは突然湧いてくるものである。そのアイデアはまるで地の底から吹き出すようにH氏の脳内に吹き出した。そのアイデアとは物質を完全に原子化し、その際に放出される莫大なエネルギーを安定的に放出させる理論が生産工程すらビジュアルとなり脳裏に映し出されるのである。たとえば、ひとしずくの水で、一枚の葉っぱで、一般家庭の1年間のエネルギーを賄い、しかも環境に与える影響は限りなく0に近いと言うものも理解できた。
 しかし、H氏は自分の研究が必ずしも人類の幸福に結びつくかどうか大いに不安も持っていた。「ありがとうございました。この装置をさっそく作り世界に発表しようと思います。その前にあなたの力で100年後の世界を見せてもらうことは出来るでしょうか?」彼は「たやすいことだ」と告げて右手をあげようとした。H氏はふと人はどこから来てどこへ行くのかという疑問の答えもほしいと思い「厚かましいお願いですが人類の誕生の瞬間も見せて頂けますでしょうか?それとも願い事は数に制限でもあるのでしょうか?」と言ってみた。彼は微笑みながら「そんなことはない。あなたの願いは全て聞き届けられた」そういうと指先をH氏の眉間に向けた。

 H氏は視界が次第にはっきりするのを感じた。
半砂漠の荒野に粗末な毛皮をまとった人影が、棍棒を振り回している。その人間が叩いているのはなんと同じ人間である。血みどろになった片方の人間は次第に動かなくなっていく。すると棍棒をふるっていたものが突然倒れた相手に食らいついた。
なんと言うことだ、人は始まりの時にすでに罪を負っていたのか・・・H氏の胸は痛んだ。H氏が堅く目をつぶると新たな映像が浮かんできた。そこでは柔らかな日差しの中、優雅な着物を着た人々が満ち足りた笑顔で豊かな食事をとる映像だった。人はすでに働かなくても過ごせるらしい。なんと健やかな人たちだ。安心したH氏は再び目を閉じた。

 その夜以来H氏は寝食を忘れて装置の制作に取りかかった。輝かしい未来のために。そしてついに装置は完成した。

 しかしH氏は気付かなかった。光の彼はH氏の求めたとおりの順番に映像を見せたことに・・・


   しかしイブの夜にこんなこと書いてるなんて、寂しいね・・・
   でも、明日っていうか今日だね。学校のエッセイ仲間にお披露目です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

思い出の磁力

2008-12-18 | Weblog
学校の忘年会の出し物でうちの学部からは教師の小さい頃からの写真を投影し、あてっこするということになった。それぞれが数枚持ってくるようにと言われ屋根裏の書庫へ・・・
アルバムって見始めるとどうしても時間がかかる。大した過去でもないけど、そんなに短時間で回想できるほど薄っぺらでもないような人生。普段思い出すこともない当時の事柄がこの時とばかりに、出口を探してくるようにどんどんわき出してきて自己主張始める。
元々ウェットな性格だからついつい深入りしてしまう。とっつかまったらどの写真も離してくれそうにないエナジーを感じる。ふと気がつくとずっと同じ姿勢だったので足を伸ばそうとしたら、膝がきりりと痛んだ。思い出にとっつかまっていたらしい。どれも大切な思い出だけど、今更どうしようもないと無理にでも割り切って、思い出は適当に忘れていく方がいいみたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

若松の間から紹君の間を

2008-12-18 | Weblog
江戸時代の図面をもとに作って、確かに豪華だけども、やっぱり再建したものにはなんだか違和感がある。熊本城はやっぱり石垣だね。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今日はここまで

2008-12-07 | Weblog
3作目に取りかかりました。2作目は途中でモデルの生姜と南瓜が腐っちゃったので、リタイヤしました。3作目は荒尾の万田杭跡にある線路を描いてます。スケッチじゃないし、カメラで撮ったのをしかも部分を切り取ったので、ハッキリしないところがあるし、線路なんて光って真っ白だったし、特に上部の機械類は何なのか分かりません。
上部の暗いところをもう少し狭くしないとなぁ。それに右側の土の色が気に入らないので何とかしないとね。ついでにもう少し明度を上げたいと思います。なんやかやで、これから全然違ったものになりそうです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする