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私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「力道山」

2006-03-05 18:32:12 | 映画(ら・わ行)
外国人レスラーを相手に空手チョップで立ち向かい、敗戦の傷跡癒えない日本に希望を与えたヒーロー力道山。その生涯を日韓のキャストとスタッフで映画化。
監督はソン・ヘソン。
出演は「シルミド」のソル・ギョング。日本からは中谷美紀らが参加。


僕にとって力道山は歴史の中の人物だ。加えてプロレスにも僕は興味がない。大体、橋本真也のプロレス技だってまともに見るのは今回が初めてだったくらいである。
そういうこともあって、力道山に関してはほとんど予備知識も持っていなかった。そのおかげで映画の内容をありのまま受け取れることができたのは幸運というほかにない。(あとでネットで調べたら、力道山の人生は映画とは違う面がいくつか見られた)

実際の細かいところは知らないが、映画の中の力道山は相当に激しく直情的な人だ。差別を乗り越えようとして、彼が選んだのはひたすら上を目指すというものであり、激しい性格が幸いして、勢いよく上へと上り詰めていく。
しかし実際に上に行けば、その分いくらでもしがらみが増えてくる。そういうとき、彼のような直情的なタイプでは自らの首を絞める結果にだってなりかねない。
彼は直情的にプラスして、純粋で、駆け引きも苦手であったのも不幸だった。そのために孤立せざるを得なくなり、より暴力的になり、さらに孤立するという悪循環に陥っている。
そのヒーローの孤独な姿が悲しくも印象深い。なかなかの佳品であった。

ソル・ギョングは日本語のセリフを全部自分で演じており、なかなか頑張っているのは伝わってくる。とは言え朝鮮なまりはさすがに消せず、若干気になったが、まあこれも仕方ないのかもしれない。
これを観ながら、個人的には「SAYURI」のことを思い出した。チャン・ツィイーや渡辺謙の英語も向うの国の人にとっては、相当なまりがあったのだろうか、とふと考えたりした。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

「ランド・オブ・プレンティ」

2006-02-19 21:28:35 | 映画(ら・わ行)
9・11以降、アメリカを守ろうと戦う伯父と、イスラエルから久々に帰ってきた姪との出会いと二人の旅を描く。
監督は「パリ、テキサス」のヴィム・ヴェンダース。


まっすぐなテーマ性を持った作品である。
伯父のポールはベトナム戦争で心の傷を負った男だ。そんな彼が911以降のアメリカを守ろうと誓い、アラブ系の人間を執拗に疑い、疑心暗鬼の固まりになっている。
当然、これはアメリカの戯画だ。彼の国を思う気持ちは本物だろうけれど、その姿は滑稽以外の何者でもなく、その描写にはアイロニーが満ちている。

大体タイトルの豊かな土地という意味自体が、ある種の皮肉をもったタイトルである。アメリカの豊かさは一部にすぎず、貧困に満ち溢れている。そう、ここに描かれているのはアメリカが抱えている矛盾そのものなのだ。

そんな中で、アメリカから離れた土地で育ったレナは虚心に物事を捉えているように見える。
個人的にはラスト近くで語られた911の時の歓声の話とグランドゼロのシーンが印象深い。そのときに見せたポールの表情が極めて切なさに溢れていたからだ。しかし、その切ない表情こそがこの映画における救いなのだろう、と僕は思う。
はっきり言って、この映画は甘い映画だと僕は思う。しかし時にはまっすぐなまでに甘い理想を語ることも必要なのだろう。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

「輪廻」

2006-01-15 15:37:09 | 映画(ら・わ行)


日本人監督として初めてハリウッドでナンバーワンを獲得した「呪怨」の清水崇。日本凱旋第一作はミステリアススリラーである。出演は優香ら。


正直、そんなに期待していなかったのだが、期待しなかった分、予想以上に面白かった。
これはストーリーのどんでん返しが効果的だったからだろう。冷静に考えれば古典的なミスディレクションなのだけど、何も考えずに見ていたので、すんなり騙されることができた。もちろん清水崇の撮り方もうまかったと言える。

とはいえ、ストーリー的にはいくつか問題がある。大事な部分がまったく説明されず、そのため非常にとってつけたような感は強い。でもこのタイプの映画はそこまで言っても仕方ないのかもしれない。単純に展開のうまさを楽しめばいいのかもしれない。

一応、ホラー映画として売り出されているが、怖さ的にはそこそこという印象である。あっと驚く怖さはないが、それなりにホラーテーストを味わえるのではないでしょうか。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

「理想の女」

2005-12-12 22:34:55 | 映画(ら・わ行)
オスカー・ワイルドの原作を映画化、1930年代のイタリアの社交界を舞台に描く。出演はスカーレット・ヨハンソン。監督はマイク・バーカー

正直言って、今ひとつ心に響かなかった。セレブの日常に興味がないせいなのか、知らないけれど、前半の淡々としたテンポがどうも物足りない。

一応、ストーリー自体は意外な展開やどんでん返しがあったりして、楽しめるものに仕上がっている。ラストの方もなかなか気がきいていて、つくりはうまい。理想の女という、原題の意味合いがうまく使われていると感じた。

しかし、これを言ってしまったら元も子もないのだけど、「だから何」という気もしないではない。つくりはうまいけど、めちゃくちゃ目新しいわけでもなく、カタルシスがあるわけでもない。
早い話、地味なのだ。舞台設定は非常に華やかなのだけど。

というわけで、個人的には可もなく不可もない映画というところである。

評価:★★★(満点は★★★★★)