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私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「レッドクリフ Part I」

2008-11-08 19:05:24 | 映画(ら・わ行)

2008年度作品。中国=香港=日本=韓国=台湾映画。
80万人の兵と2000隻の戦艦を率いて、曹操が攻めてくる。降伏を拒み、同盟を結んで立ち向かうのは劉備と孫権のたった5万の軍。陸と水上から攻め入る巨大な帝国の支配者曹操との圧倒的な勢力の差を覆すために仕掛けられた連合軍の奇策とは。
監督は「M:I-2」のジョン・ウー。
出演は「ラスト、コーション」のトニー・レオン。「リターナー」の金城武 ら。


 「三国志」は日本でも人気の高い物語だ。僕も横山光輝や「蒼天航路」、NHKの人形劇を通して、内容を大ざっぱではあるが把握している。
「三国志」の魅力は、僕個人の考えで言うなら、キャラたちの存在感にあると思っている。そしてそのキャラクターが互いに雌雄を決し、駆け引きや戦闘を行なうのが物語の中でも最大の見せ場と言えるだろう。
本作もその「三国志」の魅力を引き出そうと苦心している様子がうかがえる。

特に「三国志」の見せ場と言うべき、戦闘シーンなどは見事だ。
100億もつぎ込んだだけあり、バトルシーンは臨場感抜群。騎馬シーンや槍を使ったバトルシーン、ワイヤーアクションによる個人技などは迫力があり、華麗とさえ言える。あれだけの人間、馬、衣装、小道具をそろえるのはかなり大変だったろうが、それに見合う仕事内容だ。

ただアクションシーン以外が幾分弱いかなという気がしなくはない。
中盤には周瑜の人間性を見せるエピソードがあって興味深かったし、孔明と周瑜の琴のシーンも趣向としてはおもしろかった。父や兄に及ばないと考えているナイーブな孫権の像も良かったと思う(どうでもいいが、チャン・チェンは男なのに色気がある)。
ただテンポが悪いせいでいささかだれてしまう面があった。

ジョン・ウーの映画でときどき思うことだが、この人はアクションを撮るのは一流のわりに、ドラマ部分を撮るのが下手なような気がする。今回もジョン・ウーのそんな悪い面が出てしまった。
もっともそのアクションシーンも力を入れすぎるあまりに幾分冗長にはなっているが。
あるいはそのテンポの悪さが分ける必要もない二部構成につながったのかもしれない。

だが、金を費やした映像は見応えがあるし、迫力も満点。この映像世界を見るだけでも楽しめるのではないだろうか。

評価:★★★(満点は★★★★★)


出演者の関連作品感想
・トニー・レオン出演作
 「傷だらけの男たち」
 「ラスト、コーション」
・金城武出演作
 「傷だらけの男たち」
・中村獅童出演作
 「硫黄島からの手紙」
 「ICHI」
 「男たちの大和/YAMATO」
 「SPIRIT」
 「DEATH NOTE デスノート 前編」
 「DEATH NOTE デスノート the Last name」
 「ハチミツとクローバー」

「レイダース 失われたアーク《聖櫃》」

2008-06-23 21:12:40 | 映画(ら・わ行)

1981年度作品。アメリカ映画。
世界中の宝を探し求める冒険家にして、考古学者のインディアナ・ジョーンズのもとに、アメリカ政府から依頼が来る。世界を我が手にできる力を持つと言われるモーゼの聖櫃を、ナチスドイツが探しているため、それを阻止してほしいとのことだった。
監督は「ジュラシック・パーク」のスティーヴン・スピルバーグ。
出演は「逃亡者」のハリソン・フォード。カレン・アレン ら。


日曜洋画劇場で見る。

冒険活劇第一作目は波乱万丈だ。
冒頭からしてつくりが上手い。迷宮内にある宝を奪うために仕掛けられた罠の数々は遊園地のアトラクションや、ゲームのようで非常によくできている。有名な巨石が転がるシーンといい、さすがスピルバーグ、ともかく見せ方が優れている。
ほかに挿入されたアクションシーンも、どれもが水準以上である。

だが、アクションの良さはともかく、それ以外で良いところはこの映画にはない。
物語自体は盛り上がるようにつくられているものの、大して興味をかきたてられず、インディや主要キャラに惹かれるものは見出せない。
もちろんその単純明快さと潔さがインディ・ジョーンズシリーズの長所とも言える。しかし、映画はプロットと思っている僕としては、トータル的に見て評価できそうになかった。

一言でまとめてしまえば、僕の趣味ではない。それだけの話である。

評価:★★(満点は★★★★★)


そのほかのインディ・ジョーンズシリーズ感想
 「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」
 「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」

「ライラの冒険 黄金の羅針盤」

2008-03-06 23:12:55 | 映画(ら・わ行)

2007年度作品。アメリカ映画。
人々が皆、ダイモンという守護精霊を連れている世界。12歳の少女ライラの周りで、ある日、子供たちが次々に行方不明になる事件が勃発。ライラは持ち前の好奇心で捜索に乗り出す。やがて明らかになる彼女の不思議な力。ライラは、誰も読むことができないと言われる、真実を指し示す「黄金の羅針盤」を読み解くことができるのだ。ライラの旅は、恐るべき北の地へと続いていく。
監督は「アバウト・ア・ボーイ」のクリス・ワイツ
出演はダコタ・ブルー・リチャーズ。「ムーラン・ルージュ」のニコール・キッドマン ら。


原作を読んだことはないが、それが上下二巻本であることを知っている。その長さのゆえだろうか。ずいぶんとエピソードを盛り込んでいるな、と見ている最中何度も思った。
展開が速いと言えば聞こえがいいが、その速さのためにひとつひとつのエピソードがなおざりになっており、どれも描写が薄い。もう少し腰をすえて描いても良かったのに、と個人的には思う。
また厚みのないエピソードのために、いくつかの部分でご都合主義だな、と感じる面が見られた。飛行船のおっさんがついてくる部分や、切り離しの少年が見つかる部分、ラストのバトルで魔女が現れる部分などは、個人的には腑に落ちない。
また敵対関係の構図もつめこみすぎのため、わかりにくくなっていたのがマイナス印象だ。まあおまえがバカだからと言われたら否定はしないが。

けなしてばかりも何なので良かった点も上げよう。
目を引くのはCGの美しさだ。白熊の毛並みの流れるような美しさや、ダストが散らばる描写は素直にきれいだ、と思う。金をかけて技術をつぎ込んでいるだけはある。

またエピソードのつめ込み過ぎはあるものの、おもしろくしようと努力していた姿勢は感じられ、好印象だった。
だがこの作品は個人的には可もなく不可もなくで、積極的に見たい映画ではない。続編があるようだが、いまの段階では次を見るかは保留である。

しかしてっきり一話完結タイプと思っていたが、謎を残したまま終わりとは思わなかった。
そのあたりの説明を事前に徹底してすべきでは、と映画の宣伝部に苦言を呈したい。

評価:★★(満点は★★★★★)


出演者の関連作品感想:
・ダニエル・クレイグ出演作
 「007 カジノ・ロワイヤル」
 「ミュンヘン」
・サム・エリオット出演作
 「サンキュー・スモーキング」

「ラスト、コーション」

2008-02-10 10:12:48 | 映画(ら・わ行)

2007年度作品。アメリカ=中国=台湾=香港映画
1940年、日本統治下の上海。傀儡政権の大臣にまで登り詰めようとする男に近づき、誘惑した末に暗殺を企てる娘。ほのかな思慕を胸に抱きつつも、娘を暗殺者へと教育していく若き革命家。激動の時代に巻き込まれながら、自らの宿命に翻弄されてく男と女。『ブロークバック・マウンテン』の静かな感動から3年の歳月を経て、オスカー受賞監督アン・リーが、極限の愛の映像世界に挑んだ衝撃の問題作。
監督は「グリーン・デスティニー」のアン・リー。
出演は「インファナル・アフェア」のトニー・レオン、タン・ウェイ ら。


日本占領下の上海を舞台に女スパイが敵の高官に接近、やがて愛情を抱く――その設定だけ聞くなら、いかにもベタでメロドラマティックだ。だが映画自体はベタというほどでもなく、退屈することもなく、その豊かなドラマ性を存分に堪能することができる仕上がりとなっている。
映画自体は2時間半とやや長めであるが、長いとほとんど感じることない。
それもうねりのあるプロットで飽きさせないつくりになっているのが大きいだろう。

しかし本作はそういったドラマ性以上に、登場人物の心理描写に大変光るものが感じられた。
繊細な作風のアン・リーだけあり、人物の心理を映像に乗せる手法は堂に入っている。決して説明過多にならず、人物の周囲を描写し、表情を映すことで心理を的確に伝える様は、とにかく抜群に上手い。

たとえば政府の高官のイーはどうだろう。彼は幾分サディスティックな部分があり、暴力的な男だ。
特に最初に女と関係を持つシーンなどはほとんど強姦そのもので、見ていてドン引きしてしまう。
しかしそのサドな部分は(もちろん生来のものもあろうが)何者をも信じることができず、拷問をすることが仕事になってしまったがゆえに、心がすさんでしまったことも起因していることが何となく伝わってくる。また時間が経つにつれ、徐々に女に向ける視線が柔らかくなっており、ああこの人は女に惹かれているんだな、ということが感じ取れ、見ていても心地よいものがあった。ラストの表情にも哀感が読み取れる。
もちろんトニー・レオンの演技の上手さがあって、それらが初めて成立することは言うまでもない。

また女の方の心理描写も非常に上手い。
女は抗日戦争に身を投じているが、その理由は決して高邁な理想のためではなく(もちろん日本軍に向ける視線からして、日本を嫌っているのは伝わるが)、もっと個人的な恋愛感情なり仲間意識なりが原因らしい点が個人的にはおもしろく見えた。そんなことはどこにも言及されていないが、そう感じさせる余地を与えているところが好ましい。
また香港時代に目的のため、好きでもない男と関係を持たざるをえなかったときの表情がきわめて情感豊かで、胸に突き刺さるものもある。また男との関係を重ねるにつれ、イーに惹かれていく姿も丁寧に描かれているのが目を引く。
こちらもトニー・レオン同様、新人女優タン・ウェイの演技があってのもので、彼女のすばらしさを知らされた思いだ。

ドラマ性、心理描写共に際立っており、映画を見ている間は非常に楽しい時間をすごすことができる。
ただラストが物足りなかったことが個人的には残念だ。ダイヤモンドの使い方は上手いものの、ラストの着地で衝撃を生むわけでも、余韻を残すわけでもなく、そのあたりにツメの甘さを感じる。そのため見終わった後、パンチが弱いな、と感じたことは否定できない。
しかし映画としてはべらぼうに上手く、文学的な雰囲気も漂っており、鑑賞中はドキドキしながら見ることができる。
個人的には多くの人に見てほしい作品である。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)


制作者・出演者の関連作品感想:
・アン・リー監督作
 「ブロークバック・マウンテン」
・トニー・レオン出演作
 「傷だらけの男たち」

「リトル・チルドレン」

2007-09-18 20:09:04 | 映画(ら・わ行)

2006年度作品。アメリカ映画。
元受刑者のロニーが釈放され、近くに住むことになった郊外の町。主婦のサラは公園に集まる主婦の中にうまくなじめず、孤独を感じていた。ある日、主婦たちの憧れの的であった主夫のブラッドと出会ったサラは、気紛れから彼とキスをする。それから二人は互いに惹かれあうようになる。
監督は「イン・ザ・ベッドルーム」のトッド・フィールド。
出演は「タイタニック」のケイト・ウィンスレット。「オペラ座の怪人」のパトリック・ウィルソン ら。


ここに登場する人物はだれも皆、いろんな意味で不完全だ。
たとえば主人公のサラは夫と娘との生活に満ち足りない思いを抱いているし、ブラッドは司法試験に落ち続けて勉強にも身が入らず、犯罪者のロニーは自身の異常な性欲に苦しんでいる。
事例が極端だったりするが、それは僕たちが暮らす日常の、負の側面を照射している。

そんな倦怠に満ちた日常に対して、人はどのように対応するか。
この映画の主人公であるサラの場合で言えば、家庭での心のすれ違いを不倫に走ることで埋めている。彼女にすれば、それは新しい挑戦といったところだろうが、僕から見れば、母としても妻としても不満だから女として生きようとした、という平凡で短絡的な姿にしか見えなかった。
だから「リトル・チルドレン」と言うべきかもしれないが、あまり共感には程遠い姿である。
そしてそれはサラに限らず、この映画に出てくる人物の多くに言えることであった(特にブラッドのラストのスケボーはガキ以外の何物でもない)。

そんな中にあって、ロニーの母親だけは僕の心に深く訴えるものがあった。
どんな不完全な息子であろうと、彼を守り愛そうとする姿はやはり麗しい。庭に描かれた落書を黙々と消している映像はどこか切なさすら感じられ、胸に迫るものがある。
ロニーの最後の行動はやりすぎな気もしなくはないが、母親への愛情に応えられなかった悔いが仄見えて、やはり悲しいシーンだ。

そしてそんな母に対する愛情がラストで、サラに変化を呼ぶあたりはなかなかに上手い。母親としての心が呼び戻された瞬間、自分だけのためではなく、他者のために責任ある行動を取っている。つまり大人の姿に立ち返ったのだ。
それはお約束と言えば、お約束の行動だが、これはこれで悪くはなく、うまく着地している、と思う。

幾分、手堅すぎて地味な映画ではあるが、大人になれない人間の思いを描いた良作である。

評価:★★★★(満点は★★★★★)


制作者・出演者の関連作品感想:
・ジェニファー・コネリー出演作
 「ブラッド・ダイヤモンド」

「ラストキング・オブ・スコットランド」

2007-03-13 19:05:56 | 映画(ら・わ行)


2006年度作品。アメリカ映画。
1971年、軍事クーデターにより大統領となったイディ・アミンが権力を得て以降、妄執な独裁者となり、大量虐殺という蛮行を犯していく様を、側近として仕えた、スコットランド人の青年医師の視点から描く。
監督は「ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実」のケヴィン・マクドナルド。
出演は本作でアカデミー賞主演男優賞を受賞したフォレスト・ウィテカー。ジェームズ・マカヴォイ ら。


映画のクレジットはフォレスト・ウィテカー演じるイディ・アミンがトップに来ているが、どう見ても、主役は医者の若者である。
で、この主人公の若者がなかなかアホなのである。
アジテーションに簡単に賛同し、批評精神を持たず、欲望に忠実な彼は、全体の大きな流れに何も考えず乗ってしまい、深入りし、引き返せないところまで来ている。そしてそれにより二人の人間を死に追いやっているのだ。そういった姿は若者らしい行動ではあるが、向こう見ずで無鉄砲と言う気がした。はっきり言うと、個人的には嫌いなタイプである。
しかしそういう人間は世の中で往々にして見られるわけで、キャラにリアリティを感じる点はおもしろい。共感できるできないはともかく、人間がきっちり描かれているという印象を受ける。

イディ・アミンのキャラも際立っている。
話や行動はユーモアがあり、人を笑わせ人を引きつける。普通につきあう分には彼のようなタイプは楽しそうだろう。だが権力を持った途端の疑心暗鬼の表情がなんともこわい。本質はユーモラスな人なのだろうが、その変貌に人間の多面性を見る気がする。
そしてそれをフォレスト・ウィテカーがきっちり演じているのが目を引いた。

映画自体はオーソドックスなつくりだ。展開としては予想外というものは少なく、きれいにまとまっているという感じがする。
しかし、本作は人間の愚かな一面をあぶりだしていて、見応えはあるだろう。それもすべて人間をきっちり描いているからだ。おもしろいかはともかく、なかなかの力作である。

評価:★★★★(満点は★★★★★)


制作者・出演者の関連作品感想:
・ジェームズ・マカヴォイ出演作
 「ナルニア国物語 第一章 ライオンと魔女」
・ケリー・ワシントン出演作
 「Mr.&Mrs.スミス」

「ルワンダの涙」

2007-02-18 12:27:16 | 映画(ら・わ行)


2005年度作品。イギリス=ドイツ映画。
1994年、ルワンダで起きたフツ族民兵によるツチ族虐殺事件を映画化。ルワンダに常駐していた国連軍と白人たちはなにもできないまま、ツチ族の虐殺を目撃。そんな白人の視点から虐殺を描く。
監督は「ジャッカル」のマイケル・ケイトン=ジョーンズ。
出演は「エレファント・マン」のジョン・ハート。「キング・アーサー」のヒュー・ダンシー ら。


「ホテル・ルワンダ」と同じくルワンダ虐殺事件を扱った映画だ。
先に断言しておくと、単純な比較なら、ドラマチックでハラハラ感に満ち、かつ感動的だった「ホテル・ルワンダ」の方がおもしろいだろう。実際、映画的に見たとき、本作の演出にはいくつかの疑問がある。
そういったわけでルワンダ内戦を知りたいという人間がいたら、僕は確実に「ホテル・ルワンダ」の方を勧める。

しかしこの映画にはこの映画なりの視点がある。それは白人側からの視点だ。
「ホテル・ルワンダ」でも多少扱われていたが、この内戦により、国連および白人は生命の危険を感じ、ツチ族を見殺しにすることとなる。
もちろん目の前で人が殺されていくことに白人側も怒りを覚えている。しかし彼らはあまりに無力でなにもできず、最後は逃げ出していかざるをえない。その後ろめたさを誠実に積み上げている。その創作姿勢はスタッフに実際の虐殺を生き延びた人物を入れていることとも無縁じゃない。
地味だが、そのために見応えのある作品に仕上がっていることはまちがいないだろう。
でも「ホテル・ルワンダ」を見たなら、こちらをあえて見る必要もないかな、という気もしなくはなかった。

しかし、つくづく思うのだが、人はなんでここまで凶暴になれるんだろうか? フツとかツチとか、身分証明書を見なければ区別できないっていうのに、くだらない理由で一方的に虐殺する。
人間ってのは愚かだ。どこかで冷静になる視点こそが重要だというのに。そんなことをあらためて思い知らされた。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

「ラッキーナンバー7」

2007-01-14 14:33:05 | 映画(ら・わ行)


2006年度作品。アメリカ映画。
ニューヨークにやってきた不運な青年スレブン。彼は訪れた友人宅で、友人にまちがえられてマフィアに拉致される。彼はマフィアに借金と引き換えにある依頼をされる。
監督は「ホワイト・ライズ」のポール・マクギガン。
出演は「ブラックホーク・ダウン」「パール・ハーバー」のジョシュ・ハートネット。「セブン」「ミリオンダラー・ベイビー」のモーガン・フリーマン ら。


考えてつくりこまれたストーリーである。
物語中に展開される、もやもやとした謎。ブルース・ウィリスの矛盾に満ちた行動などは見ている最中「?」って感じで落ち着かなかったのだが、それがラスト近くできっちりはまっていく感じは気持ちいいものがあった。作り手が考えて構築したことがわかり、好印象である。

もちろんそういった映画にありがちの細かい疑問点はある。
最大の疑問点はなんと言っても、なぜいまこの事件を起こさなければならなかったか、ということだろう。
個人的にはストーリー的に考えて、もっと早い時期にこの事件は起きるべきだったのではって気がする。ジョシュ・ハートネットよりももう少し若い人がやるべきだったのではと思うがどうだろうか。

まあ、そんな風に言いたいことはあるけれど、深く考えず、単純に楽しめばそれでいい作品かもしれない。

評価:★★★★(満点は★★★★★)


制作者・出演者の関連作品感想:
・ジョシュ・ハートネット出演作
 「ブラック・ダリア」
・ベン・キングズレー出演作
 「オリバー・ツイスト」

「リトル・ミス・サンシャイン」

2006-12-24 10:25:36 | 映画(ら・わ行)


2006年度作品。アメリカ映画。
東京国際映画祭をはじめ、多くの映画祭で絶賛されたロードムービー。
美少女コンテスト、リトル・ミス・サンシャインに出場するため、9歳の娘。バラバラでまとまりの欠いた家族はミニバスに乗り込んで会場の地、カリフォルニアを目指す。
監督はジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス。
出演は「恋愛小説家」のグレッグ・キニア。「イン・ハー・シューズ」のトニ・コレット ら。


家族の映画である。想像通りの結末に至るのだが、その過程の描き方が見事な作品だ。

ここに出てくる家族はとにかく個性が強い。
人間を勝ち組、負け組に分類したがる父親、薬物中毒の祖父、ミスコンを夢見る妹、ニーチェに心酔し無言を貫く兄、自殺未遂のゲイの伯父。どいつもこいつも、濃すぎるって言葉では足りないくらいに濃い。
そのためキャラの自己主張は激しく、食卓等では口論が巻き起こる。息子が「みんな嫌いだ」という主張しているが、その気持ちがよくわかる。

しかしそうした毒のある作品ながら、コメディタッチで進むために重々しさはない。家族の噛み合わなさをどこか笑い飛ばしながら、軽やかに物語は展開する。その描き方が心地よい。

ここに出てくる家族は全員間違いなく負け組だろう。しかし見終わった後、そこに悲壮感は感じない。
負け組であるという現実に傷付き落ち込み、へこむことはある。けれど、家族はみんな前に向かって進んでいる。そして傷ついた相手のことを思いやっている。その互いのことを思う気持ちがなんともうるわしい。

はっきり言えばはた迷惑な家族なのだが、彼らを応援してあげてもいいかなという気になってくる。暖かい気持ちになることまちがいなしの優れた作品だ。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)

「ワールド・トレード・センター」

2006-10-08 21:34:25 | 映画(ら・わ行)


2006年度作品。アメリカ映画。
9・11同時多発テロの舞台となった世界貿易センタービル。避難する人々の救助に向かい、ビルの瓦礫の下に生き埋めになりながらも奇跡的に生還した二人の港湾警察官の実話をもとに映画化。
監督は「プラトーン」などのオリバー・ストーン。
出演は「ナショナル・トレジャー」などのニコラス・ケイジ。「クラッシュ」などのマイケル・ペーニャ。


それなりに感動できる話ではある。
9・11という悲劇の結果、生き埋めになり奇跡的に生還する――これだけで感動的なお膳立ては揃っていると言えよう。
特にビル崩落までのシーンや崩落後のシーンは恐ろしく(個人的にはビル崩壊のシーンや、火が落ちてきて拳銃が暴発するシーンが特に怖かった)、そういった過程があるからこそ、救出の感動が生まれるし、家族の苦痛も見る側に伝わってくるものがあった。
それにこの映画の中には、命をかけて職務を遂行しようとする人々が主人公をはじめとして登場しており、彼らの誇りに満ちた、しかしどこか悲壮さすらただよう行動の姿も、救出劇とは違った感動を生み出すものとなっていた。

そういうわけで僕自身、いくつか見ていてそれなりに感動できるシーンはあったのだけど、それはあくまでそれなりでしかない。結果的には、何かが決定的に足りないという感が最後まで拭えなかった。

それは結論がわかりきっているからということが主たる要因だと思う。
なので、それなりのカタルシスはあるものの、あくまでそれなりのレベルにしか達していない。感動できるシーンでも、どこかそのレベルは表層的な部分にとどまっているような気がしてならなかった。
演出としても、中盤すこしだれた部分があったのは否定できない。
結論的には、実話の再現で終わってしまい、物語としてきちんと昇華できなかったのが、本作の最大の欠点だろう。

予告編は神クラスの傑作だっただけに、本編の凡庸ぶりには若干落胆せざるをえなかった。

評価:★★(満点は★★★★★)

「RENT レント」

2006-06-11 19:37:01 | 映画(ら・わ行)


2005年度作品。アメリカ映画。
ピュリッツァー賞を受賞したブロードウェイ・ミュージカルを映画化。ロックベースの音楽に乗せて、1989-1990年にかけてのニューヨークの若者の姿を描く。
監督は「ハリー・ポッター」シリーズのクリス・コロンバス。
出演はロザリオ・ドーソン、テイ・ディグス ら。


映画の冒頭を見たとき、これは傑作になるのではないか、という予感に駈られた。
まず映画のオープニングで、525,600分をあなたはどう数えるか、という歌が流れるのだが、この歌のテーマ性に途端にノックアウトされ、そこから続くレントの歌の華やかさに、心を奪われてしまったからだ。

実際、この映画の中に流れる音楽にはすばらしいものがある。
ときにエモーショナル、ときにノリノリで流れてくるそれらの歌たちは僕の心にむちゃくちゃ響いて、胸の中が湧き立つのを感じた。とにかく劇中に流れる音楽の耳に心地よいことと言ったら、この上ないものがある。
一番圧巻だったのはバーのシーンだろう。その中に流れるテーマ性、全体を包む音楽の雰囲気、そして映像の華やかさは圧倒的である。あれがこの映画の最大の山場と言っていいと思う。

だがストーリーに目を向けるとこの映画は退屈なものでしかなかった。
一応、本作では若者の夢、同性愛、ドラッグ、エイズ他いろいろな問題を盛り込み、青春群像劇に仕立てようとしているのだけど、はっきり言って焦点が散漫になってしまったような気がする。今を生きる、というテーマ性はともかくも、ストーリー的に何を訴えたいのかが、よくわからなくて、盛り上がりに欠けていた。
エンジェルをはじめ、キャラの立っているのが結構多かったので、もったいないというほかない。

個人的な結論で言うと、本作はミュージカルとして見れば大成功だけど、映画として見れば失敗、といった印象である。映画はプロットと思っている僕としては、不満の残る内容だった。

評価:★★★(満点は★★★★★)

「ラストデイズ」

2006-05-12 22:24:32 | 映画(ら・わ行)
2005年度作品。
「ニルヴァーナ」のボーカル、カート・コバーンの自殺にインスパイアされて、作り上げられた作品。アーティストの死と孤独を描く。
監督は「エレファント」のガス・ヴァン・サント。
出演は「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」のマイケル・ピット。ルーカス・ハース ら。


ニルヴァーナのカート・コバーンの自殺をテーマに映画化したものであるらしい。だけど、そういった予備知識のない人がこの映画を見て、果たしてそのテーマを十全に理解しきれるかという気がする。
確かに主人公が音楽を手がけていて、彼が精神的に病んでいるのは伝わってくる。だけど、それ以上の内容を今一つ伝えきれていないような気がした。

多分、監督はこの映画を通して、ある一人の男が自殺に至った”状況”を描きたかったのだ、と思う。
自殺直前の主人公と彼の周囲を描くことで、周囲の人間が主人公を腫れ物に触るように接していたのもわかるし、主人公に踏み込んで接しようとしていないことも見えてくる。彼の孤独は確かにはっきりと感じ取れ、繊細さも確かに伝わる。だけど、個人的にはそれだけでは不満であった。
叶うならば、もう少し主人公の内面的な部分にも踏み込んでよかったのではないか、と思う。
もちろんそれは極めて危険な試みであることはわかる。しかし架空の物語と謳っているのなら、そのぐらい大胆に挑戦してもよかったのではないだろうか。

以上のような点に不満が残り、作品そのものを楽しむことができなかった。

評価:★(満点は★★★★★)

「リバティーン」

2006-04-11 20:29:54 | 映画(ら・わ行)


17世紀、イギリスに実在したという放蕩詩人、第2代ロチェスター伯爵ことジョン・ウィルモット。彼の破天荒な人生と破滅にひた走る姿を映画化。
監督は映画初監督となるローレンス・ダンモア。
出演は「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジョニー・デップ。「イン・アメリカ」のサマンサ・モートンら。


はっきり言って印象に残らない映画だ。どうでもいい内容だったな、という程度のものしかこの作品から感じることはできない。

多分、それは脚本のせいだろう、と思う。
ロチェスターがなぜそんなことをしたかったのか、なぜそういう展開に流れていったのか、そういったつなぎにぎこちなさがあって、観客である僕の側に伝わってくるものがなかった。特に冒頭で煽っておいたロチェスターの魅力がまったく出ていない。
もちろんジョニー・デップはいい演技をしていたし、彼らしさは存分に出ていたのだけど、それ以外の部分でキャラの魅力や行動理由を伝えることには完全に失敗していた。
そのため、冒頭と呼応しているラストの独白が極めて空疎なものとなってしまった。描きようによっては極めて効果的になりえただけに残念と言うほかにない。

ジョニー・デップが好きだったら、この映画は観るに値するのかもしれない。
しかし映画はプロットと思っている僕には、退屈な映画でしかなかった。

評価:★★(満点は★★★★★)

「惑星ソラリス」

2006-04-04 21:07:01 | 映画(ら・わ行)


1972年作品。
先日亡くなったスタニスワフ・レムの原作を映画化。人間の思念を読み取り、それを物質化する惑星ソラリスで起こる哲学的な物語。
監督はソ連の巨匠、アンドレイ・タルコフスキー。


それほど好みの作品ではない。それなりに楽しむことができるが、いま一つ心に響かないのだ。
とはいえ、不安定な感覚を映像化しているあたりはなかなかのものである。そのためもあり、いくつか映像的にすばらしい面もある。
でも長いと感じたことは否定できない。ここまで長くする必要はないだろう、という気もする。幸い、眠たくはならなかったが、見ている最中、集中力が切れてしまった。
死んだ妻との出会いに対する罪悪感、ラストシーンでの意味深い出会いなど、考えさせられる部分もあるけれど、それ以上ではない。
ここまで来たら趣味の問題だろう。

評価:★★(満点は★★★★★)

「るにん」

2006-04-03 21:41:58 | 映画(ら・わ行)
流刑の地、八丈島を舞台に島抜けに挑んだ男女の姿を史実をベースにして描ききる。
監督は俳優として活躍する奥田瑛二。本作が監督二作目。
出演は松坂慶子、バレエダンサーの西島千博ら。


この映画で、僕の目を引いたのは、個々人の葛藤や苦しみである。島という閉鎖された土地での鬱屈した思い、性的な欲求、あらゆる出口のない思いや空気が感じられて印象深い。
それがこの映画の長所だと僕は思う。

だが同時に何かが足りないという感もまたある。
多分、それはストーリー的にカタルシスが足りない点から、と思う。プロット中にはいくつか小さな山があるのに、大きな盛り上がりのようなものに欠けている。
たとえば、島抜けの場面や、最後の戦闘と別れの場面などはもう少しじっくり描いても良かったのでは無いだろうか。少なくともラストに来ても、そこに心揺さぶられるような、悲壮感なり圧倒的なものを感じることができなかった。

加えて、この映画、やや冗長である。もう少し削れる場面はいくつもある。そういった無駄な場面を描くくらいなら、上記の点をじっくり描けばよかったものを。そうしていたら、好ましい作品にもなれただろう。それだけのいい素材をこの作品はもっているのだ。
つまらない作品ではないし、長所もある。それだけになんとも勿体無い作品としか言いようがない。

評価:★★★(満点は★★★★★)