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私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

『よくわかる心理学』 渋谷昌三

2008-09-04 19:47:05 | 本(人文系)

心理学ブームといわれる昨今、専門書も数多く出版されていますが、入門書としては難解なものが多い。本書の特徴は、心理学のさまざまなジャンルを網羅しながら、難解な専門知識も非常にわかりやすく紹介している。一般 の読者はもちろん、これから心理学を学ぼうと志す学生にもおすすめできる1冊。
出版社:西東社


心理学の知識はさほどないので、この手の初心者向けの本は大変ありがたい。内容も小さなテーマで2ページくらいにまとめられており、時間の合間に読む分には、非常に手頃だ。
男と女の心理の違いや、嘘に関する心理、組織や人間関係の心理など、いくつか心当たりのある内容も多く、ためになる面も多い。

素人なので、これをきっかけにさらに深く調べることもできないが、軽く勉強し、日常生活に生かすなら、この程度の軽い内容でも問題ないだろう。
知的欲求を満たし、日常に役立つ、そういう意味で本書は実に優れた本ではないだろうか。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

『トラウマの心理学 心の傷と向きあう方法』 小西聖子

2008-05-24 20:23:26 | 本(人文系)

思いもよらぬ犯罪が相次ぐ現在、人の対処能力を超えた圧倒的な出来事によって生じる心の傷、トラウマに人々の関心が集まっている。被害者学を専門とし、長い間犯罪被害者のカウンセリングを行い、援助してきた精神科医が、豊富なケースをもとに、この心の傷と支援の可能性について語る。
出版社:日本放送出版協会(NHKライブラリー)


犯罪被害者の心の傷に関してはニュースなどで聞いたり、ドラマや小説などのメディアでよく登場し、取り上げられることが多い。だが僕自身そういった感情をいままでしっかり理解できていなかったのではないか、とこの本を読み気づかされる。

心の傷は決して治らないということは知識として知っているし、頭の中でも理解している。しかしちゃんとわかっていたとしても、実際に心の傷を持った人と向き合ったとき、それを僕はどれほど受け止めることができるのだろう。
僕の周りにそういうわかりやすい犯罪被害者なりPTSDを負っていそうなほどの経験をした人はいないけれど、仮にいたら僕も彼らに何の考えもなく、がんばりなよ、と言ってしまうのかもしれない。
そんな行動を取ってしまうのは、きっと相手が受けた心の傷とその感情に対しての理解が不足していることが大きいのだろう。そう気づくことができただけでも、この本を読んだことは非常に有意義な体験であった、と僕は思う。

この本で紹介されたトラウマを抱えた人の体験はどれもきつく、読んでいても重いものが多かった。だがその分だけ切実さが伝わってきて、胸に迫りいろいろ考えさせられるものがある。

個人的にもっとも心に響き、考えさせられたのは心の傷を負った人の援助者に対する話である。
安直な感情で、心に傷を負った人と向き合えば、聞き手であるサポート役はその感情を抱えきれないし、何もできないという無力感にさいなまれ、バーンアウトに陥るというのは納得の話である。人の支えになるということは大事なことだけど、なかなか難しい問題をはらんでいるらしい。

ともかくこの本には、心のケアという広く流布された言葉では、決して理解しきれないようなリアルな現実が描かれている。一読の価値はあるだろう。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

『国家の罠 ――外務省のラスプーチンと呼ばれて――』 佐藤優

2008-04-18 20:35:38 | 本(人文系)

ロシア外交、北方領土をめぐるスキャンダルとして政官界を震撼させた「鈴木宗男事件」。その断罪の背後では、国家の大規模な路線転換が絶対矛盾を抱えながら進んでいた――。外務省きっての情報のプロとして対ロ交渉の最前線を支えていた著者が、逮捕後の検察との息詰まる応酬を再現して「国策捜査」の真相を明かす。
出版社:新潮社(新潮文庫)


僕個人は一連の鈴木宗男事件についてそこまで詳しく知っているわけでもないし、興味があったわけでもない。世間一般の人と同程度か、幾分劣る程度の知識しか持ち合わせていない。
ただ佐藤優が最近なぜかくも論壇でもてはやされるようになったかを、著作を通じて知りたかっただけである。その理由は前々から気付いていたが、こうして本書を読んでみて、改めてその理由を再確認させられる。
簡単に語るなら、彼の成功の理由は人間的魅力があるということと、物事に対する卓越した洞察力があること、そして信念に対する確固としたビジョンがあるからであろう。そういった要素が本書の端々からはにじみ出ていたように思う。

外交に関する思考、インテリジェンスに関する考え方、刺激的なソビエト崩壊直前のクーデターの話などは興味深く、彼がそのことを自身の誇りと思い(幾分自慢口調にも聞こえるが、人間だからこれは仕方ない)、信念を持って行動しているのがわかり、人間としてまっすぐな人なのだろうな、ということがうかがえる。

また情報を把握する能力を持っていて、ときにマキャベリズムに徹し、自身を客観的に判断する能力を持っていることがわかる。
特に西村氏との折り合いのつけかたは読んでいても刺激的で、この人は有能だったのだろうな、とそういうシーンを見ていると判断できる。

それでいて人間的な魅力も崩さない。人間がどういうときにうれしいと思うかをよく知っているし、知っているからこそ、信頼できる人を裏切らないでいようとする姿勢は感銘を受ける。保身を考えるのが人間ならば当然なことだろうが、筋を通し、たとえば鈴木宗男のためにハンストを行なうといういさぎよい姿が描かれている。また国益を優先して、自分を投げ出してもいいと考えている姿も心を打つ。
それは若干ヒロイズムが入りすぎているきらいはあるが(そういう意味、西村氏の「プライドが高い」という指摘は多少的を得ているし、著者自身そのことに少しは気付いているのかもしれない)、そういうところも含めてこの人について行こうと思う人間も周囲に多かったのだろう、と感じさせる。

そういう人物だからこそ、検察側である西村尚芳という個人のビジョンをもって、筋を通そうとする人物とはシンパシーを感じるのだろうと思う。
この西村氏とのやり取りは実に興味深い。互いに引けない一線を抱えた敵同士でありながら、彼らの間には奇妙な友情めいたものすら感じられる。
互いに敬意を払い、外交に関する機微や、国策捜査の実情に対して、率直に語り、教え合い、ときに互いの妥協点を探りあう姿は緊迫感をもつと共に、奇妙な親しい関係ができあがる状況を説得力をもって感じ取ることができる。本書一番の読みどころではないだろうか。

二人の会話から著者が導き出した新自由主義や排外主義的ナショナリズムが、鈴木宗男事件の遠因である、という考察は穿ちすぎの部分があるものの、パラダイムシフトの装置としての国策捜査という部分はなかなか興味深くいろいろ考えるきっかけを与えてくれた。

佐藤優の思想や、国策捜査の実態、拘置所内での被告人の状況、興味深い外務省内部の各人の思惑など、この本にこめられた内容はどれも読み応えがあり、物事を考えるきっかけを大いに与えてくれる(個人的には映像として記憶に残すため、コップの水の量を見るという点になぜか心引かれた。実にどうでもいいが)。
組織に裏切られたとき組織に生きる人間はどうにもならないかもしれないが、筋を通すことはある意味では重要だとも気付かせてくれる。

ここに書いてある話や事件の背景は、一方の側からの主観なので必ずしも鵜呑みにするわけにはいかないが(実際読んでいて幾分主観が入りすぎているな、と感じる点は多かった)、それでも読み物として優れていたのはまちがいない。大満足の一品である。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)

『図解雑学 現代思想』 小阪修平

2008-03-26 20:16:32 | 本(人文系)

フーコー、デリダ、ドゥルーズ-ガタリなどの名前を聞いたことのある人はいても、彼らがどんなことを訴えているのかを知っている人は少ないのではないでしょうか。本書は、難解で敬遠されがちな現代思想を、図版を駆使し、できるだけわかりやすく解説しています。「自明な考え方」にメスを入れようとする現代思想の問題意識をつかみとってください(裏表紙の一文より)。
出版社:ナツメ社


図解雑学シリーズは好きでたまに買ってみるが、その魅力は何と言ってもわかりやすさにあるだろう。ある領域を知りたいと思っても、専門書では小難しくて、気が引けてしまうとき、こういう初心者向けの本は大変にありがたいものだ。
今回の『現代思想』でもそんな図解雑学のわかりやすさを活用することができた。

現代思想はやはりどうもわかりにくさはある。
たとえば「アンチ・オイディプス」の説明などは、僕がアホということもあってか、いまひとつわかりにくい。不必要に新しい言葉を使い、衒学とひけらかしを用いて、空疎な理論を交わしているように見えなくもない。

しかしこの本を読んで、いくつかの理論には心を引かれるものがある。
たとえばフッサールの相互主観性などは僕がぼんやりと感じ取っていることを適切に説明してくれているし、クリステヴァの「おぞましきもの」に対する考察も視点としてはユニークだ。またデリダの脱構築や他者の肯定を唱える理論も、結構好きで、特に他者の肯定は僕も普段から感じていたことなので、背中を押されたような気分だ。

この先、気に入った思想家の専門書あるいはより詳しい解説書を読むかはわからないが、ひとつの世界を僕の前に広げてくれたという点、わかった気になれた点で、この上なくありがたい本である。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

そのほかの図解雑学シリーズ感想
 『図解雑学 重力と一般相対性理論』二間瀬敏史

『ツァラトゥストラはこう言った』 ニーチェ

2008-02-02 17:21:23 | 本(人文系)

古代の宗教家ツァラトゥストラに託し、超人、力への意思、永劫回帰の思想が展開される。ニヒリズムなどの思想で知られるフリードリヒ・ニーチェが根本的思想を体系的に記した代表作。
氷上英廣 訳
出版社:岩波書店(岩波文庫)


『ツァラトゥストラ』はきわめてかっこいい書物だ。
気の利いた警句に富み、文章は散文詩のような陶酔に満ちた味わいがある。

たとえば、
「愛の中には、つねにいくぶんかの狂気がある。しかし狂気のなかにはつねにまた、いくぶんかの理性がある」
「大きな恩恵は、感謝を膿みださない。むしろ相手の心に復讐の念を萌させる」
「結局彼らがひたすら望んでいることは、一つである。誰からも苦痛を与えられないということだ。そこで先廻りして、だれにも親切をつくすというわけだ。これは、臆病というものだ。たとえ「美徳」と呼ばれようと」
「おのおのの魂には、それぞれ別の世界が属している。おのおのの魂にとって、すべてのほかの魂は、ひとつの及びがたい彼岸の世界なのだ」

といった文章は実にカッコいい。
再読だったが、それでも読んでいる最中、はっとする文章に出会うことは多かった。

しかし書かれている内容は象徴や暗喩を駆使しているためにわかりにくく、ゆっくり読まないと、結局何を言っているのかは読み取りにくい。
展開されている論もくりかえし同じことを語っているものが多く、構成はそこまで緻密なものとも思えなかった。僕のニーチェに対する知識が、そこまで多くないのが原因かもしれないが。

正直なところ、この本をしっかり読み取れたか、僕には自信がない。だから的外れかもしれないが、僕なりの意見と感想を述べてみよう。


世界の常識を解体する、そういう点において、ニーチェの思想には大変大きな意味があるだろう。

既存の価値観を疑い、それに疑問を投げかける点には感心するものが多い。
苦悩が神を想像したという「世界の背後を説く者」の論は正論だと思うし、平等の説教者が、復讐の念からそれを行なっているという意見もおもしろい。「市場の蝿」の中のポピュリズムを否定するような文章も現代を見抜いていて、感嘆とする。
そのほかにも、世間が認める善なるものを否定する文章は刺激に満ちている。
偽善の虚飾を剥ぎ取り、既成の価値観を否定する逆説的なニーチェの筆は明らかに冴えわたっている。


しかしそれを踏まえての「超人」の思想になると、はっきり言って僕の趣味には合わない。
「人間は克服されなければならない或る物である」というマッチョな思想は確かに魅力的であり、共感できる部分もないわけではない。
意志の力で自分自身を高めようとする思いは、言うなれば向上心に近いものがあり、安寧をむさぼることなく、生を獲得していこう、という姿勢が重要であることは否定できない。

しかし人間は果たしてそこまで強いものだろうか、という気がしなくはない。
第4部の後半で「ましな人間」たちですら憂鬱の歌に捕らわれているが、それこそまさに人間の真実ではないだろうか。
どれだけ高みを目指す意志を持とうとも、人間は必ずその状況を最後まで保つことはできない。「この身があらゆる真理からいっそ追放されてしまえばいい」という言葉の中には、ニーチェ自身もその真実に気付いていたことを示すだろう。


それに超人の思想を語るために出てくる畜群という言葉にも僕は居心地の悪さを感じる。
安寧の方向へと流されて、価値を疑おうとしない人間を一方的に断罪し、卑しい者と決め付けることが果たして正しいことなのだろうか。

残念ながら僕はそうとまでは思えなかった。僕の目から見ると、それは自尊感情から他人を蔑視するだけの傲慢という気もしなくはない。


一言で言えば、『ツァラトゥストラ』には、弱者に対する愛がないのである。
それを否定しているから、当たり前と言えば当たり前なのだが、人間の弱い部分に思いをいたさない点は問題だと思う。

超人を目指しながらも、憂鬱にとらわれるのは人間なら自然なことだ。それが畜群を生むとしても、どうしてそれを責めることができるのか。
弱い人間を慈しまないで、それでも超人を目指せという考えを僕は好きになれないし、全面的に受け入れる気にはなれない。これは個人の趣味の問題だ。


ニーチェの思想は既存の価値観を疑うという点では意義があるのかもしれない。確かにその視点の鋭さはすばらしいし、読んでいてもきわめておもしろい。
本として、思想として見るなら、この作品が際立った作品ということを否定するつもりはない。一度は読んでみる価値はあると思う。

しかしそこにある論理を僕は好きにはなれない。僕は弱い人間の弱さをこそ愛する思想をこそ、受け入れたいと思う。
何かイタイ子のイタイ文章みたいになってしまったが、僕なりの意見である。

PS
挿入すべき場所が見つからなかったので、述べなかったが、永劫回帰の思想はおもしろかった。すべて同じように戻ってきて、何も改善されることはない、という点は虚無と恐怖と絶望が感じられ、思考法としてはきわめてユニークなものであろう。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)

『憲兵物語 ある憲兵の見た昭和の戦争』 森本賢吉

2007-05-15 20:06:32 | 本(人文系)


軍人かつ憲兵ながらも、日本への反感激しい中国民衆の信頼を得て、あらゆる情報を得ることができた一憲兵准尉。彼の太平洋戦争時の姿を聞き書きを元に描く。
出版社:光人社(光人社NF文庫)
構成 三宅一志


タイトルの通り、ある一憲兵の回顧録である。
多分大抵の人は憲兵=悪、という図式ができあがっていると思う。恥ずかしながら僕も浅慮な知識からそんな風に思い込んでいた。
しかしここにでてくる森本氏はそういうイメージとは異なっており、正義感にあふれ、まっすぐに物を見ることができる、憲兵としては稀有な存在である。

この人は実にキャラが立っている。
正義感があり、上官に諫言することも辞さず、頭が良くて、現地の人間の風習を学び理解するという物事を見極める能力があり、そして弱い人間の立場を慮る優しさを持ち合わせている。まるで少年マンガの主人公のようだ。
多分こういう人間に惚れこむ人間というものはいるのだろう。実際、それにより小磯国昭からは認められているし、彼を信頼した者から日本敗戦の情報を得ることができている。そういった好漢とも言うべき物語に引きこまれてしまった。

もちろん当人が語ることなので、多少なりとも自慢が入っていると思うし、それによる誇張はあるだろう、という感じはする。基本的にひねた人間なので、まるっとどこまで信じていいのか、と思い引っかかってしまう。
しかしこれはこれでおもしろい。嘘か本当かはともかくもそれだけは真実だ。
今回は単純にそれだけで納得してしまおうと思う。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

『孫子』 浅野裕一

2007-01-30 20:26:39 | 本(人文系)


二千年以上も読み継がれた最古の兵法書、『孫子』。人間に対する鋭い洞察、組織の統率法を示した古典を丹念な解説を添えて、訳出。
出版社:講談社(講談社学術文庫)


『孫子』は以前に岩波文庫版で読んだことがあるのだが、なんとなくは理解できるものの、観念的な内容が多く、イメージするのが難しかった。
今回読んだ学術文庫版の方は、岩波と違い、詳細な注釈が加えられている。読み比べて気付いたのだが、やはり古典には可能な限りの解説は必要である。他の人は知らないが、知識のバックボーンのない、無関係な分野の人間にとって、解説の有る無しの差はきわめて大きい。

「孫子」は戦術的なものというより、戦略的な面を述べる点が多いような気がする。
戦わないで相手を屈するのがいい、それが基本姿勢ととらえていいだろう。戦争は必要だが、しないに越したことはない、という観点は、僕がもっている浅はかな戦争のイメージを覆すものがある。
戦いについて語る箇所も、人の心の機微を読み、その心理をうまく操るようにしているという印象を受け、新鮮な印象を受ける。

勝つ以上は客観性を重視し、理知的に判断する。その思考法は現代においても通用する普遍的なものだろう。二千年もの古くからそのような思考法が形成されていたということに興味をひきつけられた。
いくつかの格言も目を引き、勉強になる。一度は読んでおくべき古典である。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

『歴代天皇のカルテ』 篠田達明

2006-08-24 20:42:27 | 本(人文系)


古代から今上天皇まで125代、その血脈はいかにして受け継がれてきたか。病歴、死因、精神医学の観点からその血統を読み解く。


もう少し医学的な話があるかと思ったのだが、そういうわけではない。
天皇の病気や、その関連した状況を抜き出したエピソードを紹介しており、早い話、雑学本という感じである。
そのため少し拍子抜けしたのだが、しかしこれはこれで非常におもしろかった。
病気を通してその天皇がストレスを感じていた様子やまた自閉症を思わせる天皇などのエピソードは興味深い。また孝明天皇の毒殺を医学的な推論から否定していくところは刺激的であった。

個人的には昭和天皇の病状の経緯を述べた部分が引き込まれた。これは読んでいても非常に痛々しい。どこかの段階で彼を楽にしてあげることはできなかったのだろうか、と読みながら思った。
でも天皇に安楽死をほどこすという発想自体は多分皆無なんだろう。天皇ってのも厄介な立場である。

評価:★★★(満点は★★★★★)

『組織犯罪』 読売新聞社会部治安取材班 監修・三沢明彦

2006-07-07 22:27:52 | 本(人文系)


凶悪化する外国人犯罪、危険を増す捜査現場、外国人マフィアと暴力団の結託、そして日本の犯罪組織とテロ組織とのつながり。二十一世紀の日本が直面する組織犯罪の様相を取材検証する。


僕は基本的に単純な人間でこういう危機を煽るような内容のものを読むと、簡単に戦慄し必要以上におびえる傾向にある。
というわけでこの本を読んで、おそろしいと思い、暗澹としてしまった。まあ、内容的におもしろかったわけだけど。

僕が暮らしているのは近くに野ウサギが暮らしているようなど田舎だけど、こんな内容を読んでいると、田舎だ都会だっていうのは関係ないんだなっていうことをつくづく思い知らされる。拡散していく外国人犯罪――現代のようにスピーディな時代に田舎だから安全というのは古いのだろう。
そして外国に門戸を開いている時点で、そういう日本人的なぬるま湯発想は時代遅れになっていくのかもしれない。
離合集散をくりかえし、殺人を厭わない外国人犯罪組織は、ヒット・アンド・アウェイでの犯罪のため、まったくアシがつくことはないのだから。

基本的に僕は日本という国が好きなわけで、国民がもっているいわゆるお人よしの部分も、日本人の美徳だと思っている。でももちろんそういったものは狭い国内でしか通じない常識でしかなく、国際化の波の前ではその美徳は格好のカモにしかならない。
僕は神経質で疑り深い面があるので、犯罪に対してはなるべく危機意識をもっているし、戸締りも気をつかっている。時代的にもそういった危機管理は必要と思うのだけど、悲しいものは悲しい。

通信傍受も含めて、すべては時代の流れなのだろう。そうした時代に生まれ、おそろしい犯罪の時代に直面する者の必然とも言える。
理屈ではすべて理解できる。おそろしさもこの本を通してさらにリアルに感じられる。しかし悲しいと思う気持ちと暗澹とした気分とだけは叶うものならば否定してみたいものだな、と僕は思った。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

『他人を見下す若者たち』 速水敏彦

2006-04-28 23:20:53 | 本(人文系)


現代人の間で増えている他人を見下すという傾向、この要因はどこから来るのか。教育心理学を手がける著者がその原因を探る。
ベストセラーランキングにも登場する新書。


僕の周りにも多少、他人を見下す人はいる。そしてそれは僕だって例外ではない。そしてそれは誰しもがもっているものなのだろう。

著者はそういった他人を見下す原因を自尊感情と有能感という語で説明しようとしている。
自尊感情のない人が、それを補うように有能感と自己肯定を持ち出して自己の安寧を図っているというのは説得力があるし、そういった根拠のない自信だけで、他人を見下すプロセスも納得できる論理であった。その他にもいくつか首肯できる論理はある。

もちろん、著者も述べている通り、これは仮説でしかないだろうし、統計的にもいくつか難がある。
だが、読んでいて、そして自らの体験と周囲の人間を見わたしてみて、それが全く的外れの仮説でもないと感じた。

本書は、基本的に新聞等で伝えられている何となくわかっていることを説得力のある形で指摘しようとしているだけという感を抱いた。そういったわけで、個人的に読み物としての面白みは薄いと思う。
しかし自分も基本的に、他人を見下していると感じている部分はあるわけで、そういった点を振り返り自省する上では有用な内容であろう。

評価:★★★(満点は★★★★★)

『国家の品格』 藤原正彦

2006-02-28 23:10:45 | 本(人文系)


論理と合理性だけでは社会の荒廃を食い止めることはできない。情緒と武士道精神で「国家の品格」を取り戻すことを、数学者として著名な筆者が唱える。
ベストセラーランキングで上位に入り続けている話題作。


読み終えた後の感想としては、共感と反感が相半ばするというところだろう。
作者の思い込みの強い部分もかなりあり、決してこの本には一般論だけが書かれているわけではない。その分、納得のいかない面もあるが、刺激的であることだけは確かである。

共感した部分は主として前半に書かれていたことが多い。特に論理の限界は常々思っていたことだけに首肯する部分も多々ある。
その他にもマスコミやポピュリズムの論議、平等というものの幻想、英語教育(先に日本語をしっかり身につけること)など以前から思っていたことを的確に口にしてくれるだけに、読んでいるこちらとしても膝を叩きたくなる思いだった。

だが、後半からは著者の考えや思いが前面に出すぎてしまった感は否めない。
基本的に著者の考えは保守的だ。もちろん間違っていない部分もあるが、特にイギリスに関する意見は著者の主観による所が大きく、こじつけの感があった。

だが、正しい、正しくない、共感する、共感しない、は別として、これはこれで読み物としては面白い。
それに論理や教育の方向性、社会の問題点等々、色々なことを考えるきっかけにはなってくれると思う。人には勧められないが、読んでみても悪くはないと個人的には思った。

評価:★★★★(満点は★★★★★)

『人は見た目が9割』 竹内一郎

2006-01-26 21:05:53 | 本(人文系)


ブックランキングでも上位に入り、ベストセラーとなっている本書。日本人のための「非言語コミュニケーション」入門。


予備知識なしでとりあえず買った本だ。
冒頭部分で、人間が伝達する情報の中で言葉の内容が占める割合は7%に過ぎないと出てくる。てっきりそこから非言語コミュニケーションについての実践方法とかが出てくるのかと思い込んでいたのだが、どちらかと言うと、マンガや演劇等で見られるその非言語表現についてを解説するという形になっている。少しがっかりだ。

でも読み物としてはそれなりに面白い。細かい手の動きだとか、内股で女の子が「小さく見せる」理由について述べるところとか、幾つか納得できる部分もあるし、知らなかったことを教えてくれる面もある。
他にも日本的なノンバーバルの解説、色の説明など面白いし、参考になる。色によって重く感じるというのは色彩科学に興味のなかった僕にとっては初耳で、新鮮な世界が広がった感じだ。

正直この作品はああそうなんだ、で終わるようなもので、実践的に役に立つものではない。どっちかと言うと、雑学本に近いという印象だ。
もっと実戦的なものか、と思って読んだだけに裏切られた思いがするが、新書なんて本来こんなものかもしれない。

評価:★★★(満点は★★★★★)

『下流社会 新たな階層集団の出現』三浦展

2005-12-04 21:57:40 | 本(人文系)


ベストセラーランキングで常に上位に入っている本書。

いくらか欠点のある内容である。
その例としては、サンプル数が少なく、データ取りとしては正確性に欠ける点が上げられる。そのためデータの扱いなどに恣意的な面が見られることは否定できない。本書はどちらかと言うと、精密な数字で物事を語るのではなく、著者が経験的に掴んだ世相に関して、自分自身の意見を述べているという感じがする。
そういう辺りが若干引っかかることは事実だ。
しかしそうした主観はあるものの、述べていることはまったくの間違いではないという印象を受けた。

下流社会の若者の特徴としては自分らしさを求める傾向が強いのだと言う。
基本的に無気力でコミュニケーション能力が低く、そこそこの暮らしをしていければいいと考えている。狭い社会の中に閉じこもり、そこに安定を見出そうとする。
この傾向は僕が暮らしている田舎町でも見回した感じ、いくつかこれに当てはまる人がいる。ていうか僕もその一人だし。
そうした個人的な実感からも、まったく的外れな論考ではないと思う。

本書はだからどうしろとか、そういうのはなく、指摘にとどまっているのみだが、そこから何かしら思うことは人それぞれあるだろう。そういった社会の流れの指摘について、自分はどう考えるのか、自分はどうするのか。本書はそんな問題提起としてそれなりの役割を果たしていると思う。

ちなみに冒頭の下流度チェックで僕は12個中10個的中。思いっきり下流。というよりもこの下流度チェックで、下流でないと言える人間がどれほどいるのか気になるところである。ついでに言うと、分野的にはロハス系とSPA系の中間だった。
でも下流であろうがなんだろうが、そんな自分でも別に構わないと心のどこかで思っている。俺って基本的にダメ人間なのだろう。

評価:★★★★(満点は★★★★★)