ただ生きるのではなく、よく生きる

自然の法則をとらえ、善(よ)く生きるために役に立つ情報を探して考えてみる

ふるまいのすべてに、思いやりがにじむ人に

2017-07-22 18:27:44 | 人生の生き方
私は、真夜中にかかってくる電話にでるときには、自分のトーンにことのほか気をつけます。
かけてきた相手は、深夜に私に電話せざるをえない、よほどの事態を抱えているはずなの
です。寝ている私を起こすことへの申し訳なさをおそらく十分に感じながら、それでも思い切って
ダイヤルしたのでしょうから、私はできるだけさりげなく、そして昼間と変わらぬ明るい声と
張りを意識して、
「つい先ほどまで起きて原稿を書いていたところですから、まったくご心配におよびません」
と、答えるようにしています。

横になったままで話せば、誰でも声はくぐもってしまいますから、電話の向こうの相手を
気の毒がらせてしまうことのないように、私はまず上体を起こしてから電話の受話器をとる
ようにしています。

私が深夜から早朝にかけてかかってくる電話にたいして深い配慮をするようになったのは、
もう20年も前の小さな出来事がきっかけでした。

その日も私は夜中遅くまで原稿を書いて要約床についたのです。寝入ったばかりのその朝、
随分早い時刻に電話が鳴りました。誰からの電話かの予測も立てられないまま私は
受話器をとって、生気のない、鈍く、投げ出すような声で「もしもし」と応じました。
「シーちゃん、どこか具合がわるいの?」

受話器をとった私に、すかさず電話の相手は言いました。電話をかけてきたのは私の子ども
時代からの本当に親しい友人で、彼はまた非常に早起きの人でもありました。「シーちゃん」
とは私のことで、彼は昔から私のことをそう呼んでいました。

私の発したたったひと声が友人に私の体調を案じさせたことに、私はハッとしました。別段
私のからだはどこもわるくなかったのですが、そのときの私は横たわった状態で、しかも
眠気がまさったままの声で受話器をとっていたのです。

この日以来、私は姿の見えない電話だからこそ一層、受話器をとるときの姿勢や声の
出し方に気を配るようになったのです。

「南を向くような人柄が医師には必要だ」
と私が尊敬するウィリアム・オスラー先生は言っています。病室に入る医師の足取りが
軽やかであれば、病む人の心も晴れます。医師が明るい顔に微笑みを浮かべ、会話に
ユーモアの一つ二つをはさむことができれば、患者さんの心はそれだけで慰められるのです。

態度やふるまいに人柄はにじみ出てくるものです。テクニックとしてすぐに身につけられるもの
ではありませんが、自分のふるまいを相手の視点から振り返って見つめ直すことを習慣
づければ、やがて思いやりのにじむ所作が美しく備わります。コンパッショネイト(思いやりや
やさしさ)な人柄が表情やまなざし、声の調子などのすべての所作に自然ににじみ出るような
人でありたいと、私はいつも思います。

─『続生き方上手』日野原重明 ユーリーグ株式会社

■電話をかけて暗い表情で答える人はよくいます。相手は警戒して、そうしているのかと
思うこともありますが、感じが悪く、いつもどうしてあのように出るのだろうと思います。
だから、自分は、仕事をしているときは、明るくするように意識して答えていたのを思い出し
ました。ところが歳をとって、最近の出方を振り返るとやはり、答え方が変わっていたと
反省しました。ただ、昨今かけてくる相手が保険や株、お墓、家の修理、などあらゆるセールス
が増えているので受ける側もちょっと気持ちよく出れなくなっているのにも気付きました。
日野原先生の場合は医者ですし、かかってくる内容は、大体大切なもの、ということが多いの
だと思います。私も出方をまた、気をつけたいと思います。
先生は先日亡くなられました。まもなく、宇宙人的天上世界へ転生していくでしょう。
また、新たな大切な仕事を別次元でされることを願っております。

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