ただ生きるのではなく、よく生きる

自然の法則をとらえ、善(よ)く生きるために役に立つ情報を探して考えてみる

十年間の辛抱ができる人は    勝海舟

2016-10-04 18:48:44 | 知恵の情報
上がった相場も、いつか下がるときがあるし、下がった相場も、いつかは上がるときが
あるものさ。その上がり下がりの時間も、長くて十年はかからないよ。それだから、
自分の相場が下落したとみたら、じっとかがんでおれば、しばらくするとまた上がって
くるものだ。大奸物・大逆人の勝麟太郎も、今では伯爵勝安芳だからのう。

しかし、今はこのとおりいばっていても、また、しばらくすると老いぼれてしまって、
つばの一つもはきかけてくれる人もないようになるだろうよ。世間の相場は、まあ
こんなものさ。その上がり下がり十年間の辛抱ができる人は、すなわち大豪傑だ。
(『氷川清話』角川文庫)

奸物(かんぶつ):悪知恵のはたらく心のひねくれた人間。奸知にたけた人物。
大逆(たいぎゃく):人の道にそむく最も悪質な行為。君主や親を殺す類。

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古代アテネには陶片追放(オストラキスモス)という制度があった。市民たちは陶片に、
この人がいては国家のためにならないと思う人の名を書いて投票する。そして、
最多得票者を、罪もないのに理由など関係なく十年間国外に追放するという方式
であった。アテネの政治を自分の思い通りにきりまわしたいテミストクレスは、意見
が対立している人気者のアリスチデスを、この手で追っ払おうと企んだ。

投票の日、町を歩いていたアリスチデスは、見知らぬ字の書けない男に代筆を
頼まれた。なんと、アリスチデス、と書いてくれ言う。どうして君はその人を追放
しようと思うのか、と聞くと、彼は即座にこう答えた。なあに、別に訳はないんだけど、
あんまりみんなが、アリスチデス、アリスチデス、と褒めそやすのを聞くのがうるさい
からさ(『新・プルターク英雄伝』祥伝社ノン・ポシェット)

人の世は評判に左右される。そして評判が或る限度に達すると、反転して飽きられる
のを防げないのである。

─『古典の知恵 生き方の知恵』古今東西の珠玉のことば2 
  谷沢永一著 PHP研究所より


私は、有名になろうと思わないから、あまりピントこないが、人のうわさ、評価と
いうことで考えてみると当てはまるかもしれない。十年くらいの時間で人は変わる
だろうし、世の中も動いている。パソコンの普及や、携帯、スマートフォンも十年
くらいで様変わりだ。