紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「屋上物語」北森鴻

2004年11月26日 | か行の作家
デパートの屋上には、子供の夢だけではなく、謎もいっぱい!
通称“さくら婆ァ”と呼ばれるうどんスタンドの、
いや、屋上の主がその謎解きに挑みます。
ストーリーを語るのは、屋上に棲みつくモノたちで、
宮部みゆきの某作品を思い起こさせますね(笑)。
舞台のモデルになったのは、池袋のとあるデパート。
ネットで調べるとすぐに分かります(^-^)。
そこにさくら婆ぁはいなんでしょうが、
東京にいる間に、一度くらいは訪れたいものです。

キャラクターの立った、短編の連作です。
しかしながら、終わり方があっけなくってちょっと寂しい。
それぞれの謎が、実は微妙に絡みあったりもしているので、
思いきって長編にしてもよかったんじゃないかとも思います。
が、そうなったら逆にキャラはそんなに立たなくなるんだろうなあ。

昼時ともなると、サラリーマンはもちろん、近くのOLも
やってきて、長蛇の列ができてしまう“さくら婆ァ”のうどんスタンド。
屋上の一角にあるお社からも、その風景は毎日のように見られます。
最初の物語を語るのは、そのお社に2体ならんだ狐の片割れ。
霊験があらたかだから、という理由ではないらしいのですが、
“彼(彼女?)”には、表面的に見えるモノ以外のことまで分かっています。

こういった細かなエッセンスが、後々結構重要な意味を持ってくるわけです。
そういう細かな積み重ねから生まれるストーリー(謎)と言ってもいいかも。
だからこそ、さくら婆ァのようなアクの強い人物が必要だったのかもしれません。
でも反面、謎が解けるとスッキリする、というようなことはなく、
いろんなことが複雑に絡みあったりしていて、一筋縄ではいかないこともあり、
だから連作短編という形になっているのでしょうが、
なんだかやるせない気持ちにさせられるのも事実。
ちょっと寂しかったり、悲しかったり、もどかしかったり、
そんな気持ちを掻き立てられます。
だからこそ、もっとラストで救ってほしかったんですけどねえ。
なんだかホントにあっけなく、そして素っ気なく終わっちゃうんです。
…そういうところって、北森さんらしい、のかなあ。


屋上物語(祥伝社文庫)
北森鴻著

出版社 祥伝社
発売日 2003.06
価格  ¥ 620(¥ 590)
ISBN  4396331061

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