紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「壺中の天国」倉知淳

2005年03月17日 | か行の作家
読み終わってしばらく経っているのですが、
改めて、いろんな方の書評などを見ているうちに、
ようやく“本来の姿”が見えてきた模様(^^;)。
ああ、私はやっぱりパンピーだったのねぃ。
しかもまた勘違いをしていて、ずっと猫丸先輩が
出てくるのを待ってたりして(出てきませんよ(笑))。
結構ボリュームはあるんですけど、ほとんど一気に
読んでしまいました。楽しかったです。

閑静な地方都市で起こる通り魔事件。電力会社の
送電線鉄塔建設に対する反対運動に燃える人あり、
また一部では“電波系”怪文書を話題にする人あり、
そして無差別な殺人鬼に殺される人あり…。

被害者たちに共通点がない、いわゆる“ミッシング・
リンク”。そこへ持ってきて、“電波系”の怪文書。
これらがどう繋がっていくのか。主人公たちは、
それをワイドショー的に語るわけです。その中に、
被害者の殺される直前の話が挿入されたり、また
違う人物の話が挿入されたりと、その構成も面白い。
謎解きよりも私は、そっちの小ネタの方が面白かったぞ(笑)。

主人公は、働くシングルマザー・知子さん。元気な彼女が
とてもいきいきしてて素敵(^-^)。娘をはじめ、彼女を
取り巻く人たちも、なかなか個性的でいい感じ。
シニカル、というわけではないけれども、でも、物事を
正面からまっすぐ見ているだけではない、というところが
深くて好き(笑)。あんなことやこんなことがあっても、
でも、人は極力自分だけでも“普通”に生活しようとするんですね。
…というツッコミはありでしょうか(笑)。


「壺中の天国」倉知淳(角川文庫)
【カバー裏より】
 「全能にして全知の存在から電波を受信している私を妨害しないで頂きたい」――静かな地方都市で奇妙な怪文書が見つかる。それは、あたかも同市で発生した通り魔殺人の犯行声明のようであった。その後第二、第三の通り魔殺人が起こるごとに、バラ撒かれる「電波系」怪文書。果たして犯人の真の目的は? 互いに無関係に思える被害者達を結ぶ、ミッシング・リンクは存在するのか……。本格ミステリの歴史に燦然と輝く、第1回本格ミステリ大賞受賞作!!