紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「僕を殺した女」北川歩実

2005年03月11日 | か行の作家
初・北川歩実。しかもデビュー作ということで、
作品にも少し気負いと硬さを感じつつ、読む方も、
ちょっと緊張していたりして(笑)。
なんというか、この作品のこの気負いに、
なんとなく「月光ゲーム」を思い出したり(笑)。

ある朝目覚めると、僕は女になっていた。
しかも、5年後にタイムスリップしている!

まず、こういう状況を納得するのに随分時間がかかりました。
その最初の部分が少し難解な感じがするんですけど、
最後までこの“じれったさ”を引っ張り続けながら
読ませ切る、というのはスゴイ力なんだと思いました。

主人公にとっては“自分探し”ということになるのですが、
彼(というか彼女)に関わる人たちにもそれなりにドラマが
あり、さらに次々と“謎”にぶつかって、主人公と同じ
目線で物語を進んでいく読者にとっては、ホント、
じれったいことこの上ない(笑)。だって、全く何も
分からないんだもん。しかも、なんだかとてもうさんくさかった
宗像が、最後にはかっこ良く見えてくるから不思議(笑)。

最後で憑き物が落ちたようにスッキリ、というわけには
いきませんでしたが、それはほら、やっぱりデビュー作だから。
最後の最後でも、また仕掛けを一つ仕込んであるわけですよ(^-^)。
読み終わってから全体を眺めてみると、とても面白い作品だと思います。


「僕を殺した女」北川歩実(新潮文庫)