紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「螺旋階段のアリス」加納朋子

2005年05月30日 | か行の作家
アンソロジーで何作はは読んだことがあった、アリスシリーズ。
加納さんの文庫になった作品は全部読んだと思っていたけど、
これだけ読んでなかったのですね。

最初はどうってことなかったんですよ(笑)。サラリーマンを
辞めた中年のおじさまが、私立探偵を開業したところへ、
突然やってきた“アリス”。お嬢様みたいな(というか、
実際もお嬢様なのですが)彼女と、おじさま探偵のコンビが、
依頼された“事件”を解決していく、という連作短編。
途中まではこんな感じ。でも、終盤に近づくほど加納さんらしくなる。

加納さんらしさというのは、切ないというよりも“心に痛い”ところ。
どうしてアリスは現れたのか、どうしてありすは去ったのか、
それぞれの謎解きとは関係なくストーリーによって運ばれていく
もう一つの、そして本当の“謎”が、心に痛いのですよ。
しかも、今回は“アリス”というだけあって、ロマンティックに魅せて
おいて、実はとてつもなく残酷だったりするんですよね(^^;)。
そこがまた好きなところでもあるのですが。
本作でまだ解決していない“謎”があるわけですが、それは次作に
持ち越し、なんでしょうね。文庫落ちが待ち遠しいな(^-^)。


螺旋階段のアリス」加納朋子(文春文庫)