紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「対岸の彼女」角田光代

2005年03月31日 | か行の作家
人は、一人では生きていけない。
そんな当たり前のことを、心に刻みつけられる物語。
そして、間違いなく、女性のための物語でもある。

結婚している女性、していない女性。
子供のいる女性、いない女性。
結婚していても働いている女性、働いていない女性。

こうやって並べるとよく分かるのですが、年齢に関係なく、
“女性”にはいろんな種類があるのです。しかも、
こうやって色分けしているのは、女性自身だったり。

女性は、人生において選択に迫られたとき、
どちらを選んでも、必ず“言い訳”を用意してます。
それはたいてい、自分を許すため。

仕事を続けたかったけど、夫が家にいてほしいと言うから。
(夫のために家庭を選んだ私は偉い)
子供のことを考えると、家にいた方がいいと思って。
(子供のために自分を犠牲にした私は偉い)
もう少し経済的に余裕ができてから、子供を産みたい。
(今、子供ができても、余裕がないと子供にとってもかわいそう)
結婚はいつでもできるけど、この仕事は今しかできないから。
(社会的地位を獲得した私は偉い)

そして、同じ言い訳を持つ人たちとつるんで、お互いを許し合う。
でも、そんなことをしていても、いや、すればするほど、
言い訳まみれになって、結局自分自身を見失ってしまう、
“こんなはずじゃなかった”と。

でも、そういう“他人”は、本当は必要なのです。

なんだか矛盾してるんだけど、でも、心に響く。
さすが、第132回直木賞受賞作だなあ、と(笑)。
角田光代は初めて読みましたが、読みやすいし、
案外面白いと思いました。でも、この作品はしんどかったけどね。


「対岸の彼女」角田光代(文藝春秋)