紫微の乱読部屋 at blog

活字中毒患者の乱読っぷりを披露。主にミステリーを中心に紹介します。

「沙羅は和子の名を呼ぶ」加納朋子

2004年10月27日 | か行の作家
加納さんは、どうしても思い入れの強い作家さんに
なってしまうのですが、そういうイメージを持ったまま
っていうのは、もしかしたらすごい不幸なことなのかもしれません。
というのも、「ななつのこ」「魔法飛行」の衝撃が強すぎて、
読むたびに、またあの“魔法”を期待してしまいます。
なので、どれも「うん。よかった」程度の感想…。
魔法じゃないけど、おまじないみたいな「ささらさや」
「掌の中の小鳥」はエッグ・スタンドで呪文をかけられたし、
キレイでイタイ「ガラスの麒麟」も、全部好きなんですけど。
ま、でも、どれにも裏切られていない、というのは
逆にもしかしたらすごく幸福なことなのかもしれませんね。

さて、本題です。
本書は表題作を含む10編を収録した短編集。
ミステリーっちゃあミステリーですが、
どれも幻想的で、キレイだけどちょっと心がイタイお話。
いちばんのお気に入りは表題作「沙羅は和子の名を呼ぶ」。
基本的に私の人生、行き当たりばったりだけど、
それを楽しみながら生きているので、主人公のように、
“あのとき、こっちを選んでおけば…”なんてことはないんですが。
でも、そう思うときって、誰にでもあると思うんです。
(私の場合は、単純にメニューなんかに多いんですけど(笑))
でも。それはあまり喜ばしいことではないはず。
だから、沙羅が和子の名を呼ぶんです。迷っているから。
ずっとずっと迷い続けているから。今も迷っているから。
そんな心の隙に突き入られ主人公は、最終的に、
その責任を負ったんだと解釈しました。
それは沙羅と和子から負わされた“罰”なんだと思います。

ほかにも、「フリージング・サマー」とか「オレンジの半分」
なんかは、女のイヤな面を見せつけられた気がして、
ちょっとブルーになりますね(^^;)。好きですけど。
連作ではない短編集って珍しいですよね。
加納さんのいろんな世界をたくさん楽しめて、よかったです。

沙羅は和子の名を呼ぶ(集英社文庫)
加納朋子著出版社 集英社発売日 2002.09価格  ¥ 580(¥ 552)ISBN  4087474887bk1で詳しく見る オンライン書店bk1