心理学の本(仮題)

【職場に】心理学書編集研究会(略称:心編研)による臨床心理学・精神医学関連書籍のブックレヴュー【内緒♪】

Godspeed You ! Aristotle~真・心理学の基本五書を妄案するの巻

2008-04-11 10:31:54 | 心理書一般向け
オヒサ! psy-pubです!

さて巷は4月で,いろんなところで,新入生向けのブックガイド的なホニャラララがお盛んになっとるわけで,そんじゃあ僕も……ってことで,自分の脳内でアンケート調査し,その結果を脳内自分会議で喧々諤々の議論を経て,心理学の基本五書を主観的に決め付けてみましたので,それをさらしage-Tightと思うわけです。

その前に! ご存知の良質ブログ『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』にて,

●東大、京大、北大、広大の教師が新入生にオススメする100冊
http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2008/04/100_0953.html

というエントリがあり,もうこれ,ナイスすぎるエントリで拍手の嵐ですが(ぜひ皆さんもご一読アレ!),これのマワシをちょっとお借りしようと思いますが,その100冊のなかから,心理学関連のものをPick Upしてみましたので,それからどうぞ。

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 10.「夜と霧」(ヴィクトル・エミール・フランクル、みすず書房)
 16.「種の起源」(チャールズ・ロバート・ダーウィン、岩波書店)
 17.「進化と人間行動」(長谷川寿一、東京大学出版会)
 21.「理解とは何か」(佐伯胖、東京大学出版会)
 26.「信頼の構造」(山岸俊男、東京大学出版会)
 27.「脳のなかの幽霊」(V.S.ラマチャンドラン、角川書店)
 39.「視点」(宮崎清孝、東京大学出版会)
 41.「読むということ」(御領謙、東京大学出版会)
 47.「認知心理学」(-、東京大学出版会)
 49.「夢判断」(ジークムント・フロイト、新潮社)
 54.「ユング心理学入門」(河合隼雄、培風館)
 61.「精神の生態学」(グレゴリ・ベートソン、新思索社)
 72.「自由からの逃走」(エーリッヒ・フロム、東京創元社)
 73.「魂のライフサイクル」(西平直、東京大学出版会)
 78.「人間機械論」(ノーバート・ウィーナー、みすず書房)
 87.「自然界における左と右」(マーチン・ガードナー、紀伊国屋書店)
 93.「緊急時の情報処理」(池田謙一、東京大学出版会)
 99.「心の科学は可能か」(土屋俊、東京大学出版会)
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なかなか格調高い感じでよろしゅうおますな。結構な,お手前で。

ということで,これにインスパイアされて,僕が夜中の1~3時にかけて考えた真・心理学の基本5書,レッツさらしてまいりましょう。

…………

心とは何か (講談社学術文庫)心とは何か (講談社学術文庫)
アリストテレス 桑子 敏雄

講談社 1999-02
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通称『霊魂論』。霊魂論だとちょっと読む気せんですが,人類初の心理学書なわけだから,まあ読んどけ。同時代のボンクラどもに比して,群を抜いてサイエンティフィックな目線が光ります。誤解を恐れまくって要約すると,心は機能,ということでどうでしょうか。史上初という意味だけでなく,今日の心理学の基礎といって過言denyの一品!

まあでもアリストテレスさんといえばa.k.a.万学の祖,でございまして,守備範囲マジ広すぎの超絶的知性なわけでして,この人に比べたらダヴィンチなんてただのクラスでいちばんの物知り小学生(あだ名はメガネくんないし博士)程度なんでして,アリストテレス THE GREAT INTELLIGENCEってなもんだ。



方法序説 (岩波文庫)方法序説 (岩波文庫)
デカルト Ren´e Descartes 谷川 多佳子

岩波書店 1997-07
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はい,その偉大なる大天才アリストテレスさんの1980歳年下のデカルトさん,Je pense,donc je suisとカヒミカリィがボソボソ囁いたらただのお洒落フレンチポップですが,これをインテリ気取りのスカしたダチ公がラテン語に訳しちまったところ,これがバカ受け,すなわち,Cogito ergo sum。

なんじゃそらって感じだけど,CogitoすなわちCognitonすなわち認知,ergoすなわちegoすなわち私,それがsumすなわち住む,ということで,私の中には認知が住んでいる! ということです(嘘です)。誤読をさらに進めると,住んでるってことは,私と認知はこれ別物・別ジャンルってことで,So,それが有名な心身二元論なんであります(嘘です)。

現代的には,どうだろな,自分が思ってるから自分がいる,ってなんかセカイ系的みたいだな。エヴァだエヴァ。文化の極み!



エチカ―倫理学 (上) (岩波文庫)エチカ―倫理学 (上) (岩波文庫)
スピノザ

岩波書店 1975-01
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まあそのデカルトさんの妄言を真に受けて,その妄言をさらに強化しようとしたウスラバカといえばこのスピノザさん。セカイ系一辺倒グッドリズム,グッド・ウィドゥムのデカルトさんと違って,唯心論,唯物論,どっちも言い得てMYO,ゆえに心身同行,知行合一,梵我一如,といえば聞こえのいい,どっちつかずの困ったさん(社会性あるともいう)。

ま,でも,ダマシオさんという今を時めく大脳科学者によってリイシューされたりしまして,近年またそのバランス感覚のよさがフィーチュアされたりしてます。ちょっと前にはドゥルーズさんなんていう小難しい人にもリスペクトされたりしてて,結構な人気者。Yo, check it



精神現象学精神現象学
G.W.F. ヘーゲル G.W.F. Hegel 長谷川 宏

作品社 1998-03
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ま,デカルトさんもそうなんですけど,偉大だけど頭の固い人っているもんで,哲学の親玉にカントっていうアメリカ行ったら放送禁止用語みたいな名前の人がいて,この人がまた融通が利かないわけですけど,哲学って,Meta-Physics形而上学というくらいだから,社会のことなんて知ったこっちゃねえって人,多くて困るわけですが,ドグマに染まってるのそのこと忘れちゃうのね。

ま,で,このヘーゲルさんは,カントさんって良いこと言ってるからもっと評価されて良いと思ってるんだけど,時はフランス革命マッサカリアでございまして,なんかそうもいってらんない。

うーんと考えついたのが,そう弁証法でございまして(デタラメです),これは何かと申しますと,たとえば,酒飲む⇔尿意を催す,の二項対立は小便で解決される,これがほんとの小便法もとい弁証法(by筒井康隆),テーゼ,アンチテーゼ,そしてアウフヘーベン,これ結構便利な枠組みなんですね,なんにでも使えるというか。

マジメな話,「指示的でない」心理療法における,直面化→洞察ってのはこれdialectic弁証法的なんであります。さらに最近だと「指示的な」心理療法である行動療法においても,DBTすなわち弁証法的行動療法なんていうのが出てきましてな,まあそもそも認知行動療法という名称自体がディアレクティックと言えなくもないけどこれはちょっと言葉遊びかもしれんです。あと,構成主義なんて弁証法丸出しだし,これで晴れて,すべての心理療法はヘーゲルの弁証法の名の下に,皆きょうだい,なわけですよ。すごいよね,ヘーゲル。now dialectic!



種の起原〈上〉 (岩波文庫)種の起原〈上〉 (岩波文庫)
チャールズ ダーウィン 八杉 龍一

岩波書店 1990-02
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ま,で,最後に,この人ですけど,実はこの人の大先輩に当たるのが前述のアリストテレスaka万学の祖でして,『動物誌』なんてゾッキ本もデッチ挙げてるわけですけど,人間と動物はどう違うのか,ってね考え始めたのが運の尽きでございました。まあスピノザさんなんかも,悪即斬もとい神即自然なんて,アウトローの無神論気取ったりしてたわけだけど,ダーウィンさんはもっとヒドイ。人間はサルから進化しましたなんて言っちまいましたからもうタイヘン。神様もスパゲッティ・モンスターもあったもんじゃない。

まあそのタイヘンは今でもイロイロ続いてるわけですけど,この「進化」って概念は,いろんなインパクトをもたらしたわけで,それはin out MET nightイナメナイ。動物実験の理論的支柱でもあり,心理学への影響もでかいわけですが,なんといっても「発達」という概念をもたらしたというのが心理学的には一番デカイかと。それ以前だと「子どもは大人のデキソコナイ」くらいにしか思われてなかったけど,サルと人間がスペクトラムなように,赤ちゃんと我々はスペクトラムである,というね,今となっては当たり前すぎるほど当たり前の考えですけど,200年前だと誰もそんなこと思ってなかったわけで,信じらんないけど,ほんとの話。人間は歴史的・時間的存在である,というのを観察ベースでエレガントに妄想したダーウィンさんに拍手!

……

あとはね,レニクラのRock'n Roll is Deadをモロ真に受けて,「神は死んだ」とか適当なこと糠下もといヌかしたニーチェさんとか,都合の悪いこと全部判断中止,カッコに入れろ,事なかれ主義日本の政治家の精神的支柱,エポケー,エポケーってお前アホケーのフッサールさんとか,「言葉の限界は世界の限界」なんて,それただの,アンタの限界ですから! で涙目のヴィトゲンシュタインさんとか,二極対立を超える,海賊王に俺はなると最初はいいこといってたのに,なんでそこから言語の生成ってことにいっちゃうかな,というところが残念でありつつも,名前のかっこよさがダントツのメルロ=ポンティさんとか,いろいろオモシロ人物がいるわけですが,まあ今日は割愛。

ま,ということで,心理学の基礎を考えてたら,心理学の歴史が始まる前で終わっちゃったというネ,まあでも住宅の基礎工事ってのは目には見えないものだから,基礎ってのはそういうものよ。でも,システムキッチンがどうのこうのよりも,鉄筋がちゃんと規定の本数使われてるかどうかが大事なわけですから,まあそういう意味でこれらは基礎なんであります。そういうことにしとこう。

まあでも,最近は,ナントカ入門みたいなの多いし,このエントリだってそうだけど,これら五書,どれでもいいから最初から最後まで読みきってみると分かると思いますけど,

オリジナル(原著)の凄み

これを感じるわけでして,体験としての読書が与えるものは,単なる知識などではない! そんなセコイもんであってたまるか! 上記の人たち,みんなすごい歴史上の偉人だけど,偉人だから偉人なんだというトートロジーじゃなく,テクストの力がすごいわけです。だからナントカ入門もいいんだけど,気になる人がいたら,原著を読む,ってのをネ,いちばん強調したいなと思うわけですよ。これはマジメにね。方法としての読書。


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