心理学の本(仮題)

【職場に】心理学書編集研究会(略称:心編研)による臨床心理学・精神医学関連書籍のブックレヴュー【内緒♪】

アンドロイドは電気ひつじの夢を見ますよ~続・私は夢見るペケペケ人形~

2006-06-15 14:15:38 | 心理書一般向け
 正直あまりやるつもりはなかったんですが,昨日に続いて,今日は「夢」についてやります。ちょっと気が進まない気分もあり,でもやろうかなという気分もあり,まあどっちらけだな,オイ,つう気分もあるんですが,なんとかやってみます。

 んで,夢。

 非常に素朴に考えると,人間の脳あるいは心の働きとして,もっとも身近にそして不思議に感じる現象であるのですが,アカデミックな場では,なんか人気がない。まあ人気がないというのも分かりますけどね。夢=オカルトじゃないけど,研究対象として,恥ずかしいつうのはあるのかも知れない(一般的な話ね)。
 まあでもさ,UFOが存在するかどうかはpsy-pubよくわかりませんけど,夢は確実に毎晩見てるわけですから,存在は事実(と思いたい)なわけで,その不思議遊戯を追究するのは十分アカデミックに成り立つことと思うんですけどね。
 どっかで誰かが「夢は記憶のデフラグだ」なんて言ってましたけど,自分のPCをデフラグしてる時に,秘蔵の動画群のダイジェスト版が突如再生されるなんてことはないわけで(そうなったら大変だ!),まあそんな端的に断ずることのできない性質があることだけは確かですね。



夢の科学夢の科学
アラン・ホブソン

講談社 2003-12-21
売り上げランキング : 10201

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 帯でぶち上げるわけです,「フロイトは嘘だ」と。でもどうなの? 一般的にフロイトってそんな有名なんかしら? さらにフロイトの夢判断ってそこまで浸透してるのか?って気にもなるんですけどね。
 ま,それはさておき,本書は,当然アプローチとしては,生理学的なものになるわけで,良くも悪くもダイナミックではありませんが,「夢」の研究をまとめて概括できるって意味では,類書が少ないこともあり,お値段もリーズナボーで,いい感じかも。



夢を知るための116冊夢を知るための116冊
杉野 要人 東山 紘久 西田 吉男

創元社 2006-04-14
売り上げランキング : 310286

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 さて,こちらも改訂版がお目見えです。タイトルと編者を見ればお分かりのように,その中心にゆるぎなく「ユング」を据えて,それでもなんとか公正に(というのも変ですが)やろうという姿勢は見えて,これはこれでひとつの立場としては,十分アリだと思います。後半はかなり突っ走りますけどね……。臨床応用を考えるというのなら,これですね。



脳は眠らない 夢を生みだす脳のしくみ脳は眠らない 夢を生みだす脳のしくみ
アンドレア・ロック 伊藤 和子

ランダムハウス講談社 2006-03-16
売り上げランキング : 24626

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 両極を示したところで,その中間くらいのがこんな感じになるのかなと思うのですが,うーむ,やや中途半端な立ち位置のせいで,なんか逆に一番オカルトチックになってしまってる気がしないでもないですけど。でももしかしたら,一般的な「夢が知りたい」というニーズに一番かなってる気もします。にしては高いんですけどね。一般向け。



夢の分析―生成する「私」の根源夢の分析―生成する「私」の根源
川嵜 克哲

講談社 2005-01
売り上げランキング : 193570

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 心理療法における夢を詳細に記述したものでかつ日本語のものってあまりないように思うのですが,これがそれということで,数ヶ月前に,レヴューしますと宣言し,勢い込んで読もうとしたわけですが……なんとまだ全部読めていないというorz
 己の読解能力のなさを棚に上げて,ひとつ泣き言言わせて下さい。本書,とにかく「近代」ないし「前近代」つう語が頻出してくるわけですが,これじゃあ,生成してるのは「私」じゃなく,その「二項対立」なんじゃないかと思ってしまい,なんか躓いてしまうのです。ダメですねえ,私。その二項対立そのものが近代的自我の所産なんじゃないかっつう意味ない言葉遊びをしたくなったりもして,読む視点,ズレまくり。それにシャーマンなんていわれると,ドラクエでふしぎなおどりを踊ってMPをうばう腰ミノ仮面しか思い浮かばなくって,なんつってホント言い訳がましいミグルシイ。
 でも,一応諦めずに読み進めます(頑張ります!)。



夢の木坂分岐点夢の木坂分岐点
筒井 康隆

新潮社 1990-04
売り上げランキング : 38773

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 あまりいじけてるのもなんなので,最後は自分の好きな本をば。しかし,これはホントすごい小説ですね。まさに「夢そのもの」が展開していくという稀有な小説です。終盤にググッと収束していく感じは圧巻で,まさに筒井ならではで,前衛性とエンターテイメント性が程よく融合したバランスの良い作品です。筒井中級者向けかな。


 以上,若干のやり足りなさを残しつつ,とりあえずこの辺で。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
近代人の夢 (ピノキオ)
2006-06-25 11:46:24
川嵜克哲氏の『夢の分析』は私も読みましたがおもしろいですよ。「言葉遊び」ではなく、おっしゃってるとおり、二項対立(語る私と語られる私というような意味での二項対立としての私が反省意識として私に返ってくいるという意味での二項対立ですが)が現れてくることと近代自我的な主体ができてくることが連動しているということを夢の分析を通して書いているのだと思いました。
返信する
コメントありがとうございます (psy-pub)
2006-06-25 15:20:16
>ピノキオさま



どうもはじめまして。コメントありがとうございます。おっしゃること,一応は,頭では理解してるつもりなのですが……。



本書は,僕もおもしろいとは思うのですが,別に否定的な意味ではなく,「ラカン派」の分析を読んでるのと同じような感じを受けております。もちろん解釈の仕方も何もかも違いますけど。フロイト以降の現代精神分析が,「いま,ここ」と「二者心理学」という志向になっていったのとは対極だなあと,素人的(あくまで素人的に)には見えました。



まあ少なくとも「ユング派」の治療者にとって,こういう視点が共有・理解されることが「治療的に」有用であるならば,別にそれはそれで構わないのですけどね。



適当につらつら書いてますが,まったくつまらないのならば,そもそも採り上げないですし,読み続けようとは思わないですから,専門書の政策においてしばしば出会う「おもしろいんだろうなあ」というなんとなくの印象が精一杯のところなんです。それは言い換えるならば,完成度は高い,ということですが,それでも諸手を挙げて推挙するという気分でないのは,その意義が,自分の言葉ではまだ見えてこないからということだと思います。
返信する

コメントを投稿