7:出版社の回答
さて,企画書を送りました。
速達とか書留とかではなく,普通郵便で構いません。
ただし,変に折りたたむよりも,大きめの封筒で送った方が,それらしいかもしれません。
ポストに投函したとき,柏手は打ちました? 打ってない? ダメですな~やり直し!(ってまた小芝居…)
同時に数社に企画書を送るという荒業もありますが,これは素人にはマジ勧めません。相当に優良な著者がやってもムカつかれます。時間がかかっても,一つ出し,回答を待ち,また出す,というほうがいいでしょう。
出版社の回答は2つに1つです。
諾か否か
どのくらいの時間を置くのかわかりませんが,たいていは1カ月に1回から2回は,社内での企画会議が開かれるはずなので,回答はその後になるはずです。最 長でも1カ月半くらいで回答が出るはずです。ただし,翻訳の場合は翻訳権の空きの確認などがありますので,もう少し先になります。
ちゃんとした会社でしたら,企画書の受領の葉書が届くこともあります。さっぱりとした事務的なメールなどが入ることもあります。
諾も否もないのに,編集者から連絡があることがあるかもしれません。編集者個人としては面白そうだと思っているが,会社的にはどうだか判断がつかないような場合です。
そういう場合,社内企画会議用にいろいろと質問するかもしれません。
どちらにせよ,3年つきあった恋人とのEメールのやり取りのごとく,そこそこ早いレスポンスが必要です。
あんまり早いと→(仕事,早そ~,だけど,雑? つーか,返事メンドー)となり,引き気味に。
あんまり遅いと→(つーか,何様? 面白そうと思ったが,一緒にやるとダルそう)となり,やはり引き気味に。
なかなか難しいところですね。
ここは,即レスよりも,「読ませるメール」を心がけるべきでしょう。
といって,長大なメールでもアウト。
なかなか難しい。
回答が否の場合,申し訳なさそうな編集部より連絡が入ります。
もし,ここで企画会議では「否」になったとしても,このコネは後々使えるかもしれません。大事にしておきましょう。具体的にどこがダメだったか聞くのもいいかもしれません。編集がいい人だったら他の出版社を紹介してくれることもあるかもしれません。
また出版社によっては,後述する「買い条件」をつけることで出版が可能になるかもしれません。編集部の断りの文面に「営業面での不安」があげられている場 合,もう一度,編集者に条件を付け直してみるという手もなくはないですが,かなりふっかけられることも多いでしょう。預金残高と相談しつつ,話を聞いてく ださい。
ま,否となっても,くよくよすることはありません。「ウチでは儲からない」と言っているだけです。他の会社に行けばいいのです。そして,えらい先生になってください。向こうから依頼がきたときに,呵呵大笑してやればいいのです。
会議の頻度から言えば,少なくとも,1カ月~1カ月半内には回答が出るはずです。それでも何の連絡がない場合,次の社へ移る方がよいでしょう。
「諾」といった場合も,いろいろあります。
会社によっては,
・印税あり
・印税なし
・買取の要求
・自費出版
というふうに出版を分けていることがあります。「自費出版」は例外としても,「印税あり」と「買取の要求」ではずいぶん差がありますね。
納得のいかない回答があった場合,ここはペンディングにしておいて,他の会社にするという手もあります。
基本的には,小さい会社は,買取の要求をすることが多いように思います。結局は,出版には「資金」が必要なのです。
ただ往々にしてあるのは,結局どこへもっていっても,「買取を要求された」というようなことです。
たとえば,同じような大きさで,同じような本を出している会社の場合,編集者の見方は基本的には変わりません。けっこう同じことを言うものです。
つまり,あなたの企画はそういう価値しかないということです。
残念に思いますか?
しかし,冷静に考えると,買取の冊数も300~400部でしたら,まだ自費出版よりは安く上がります。教科書やワークショップで,あるいは知り合いに売りつけることができそうならば,損をすることはありません。
また,300人くらい専門家として知り合いがいないような専門家の本は,ちょっと作れないというのも,編集者としては思うところです。
また,その本を出すことによって,「講演」などでお呼びがかかることも増えるかもしれません。そうなれば,ほんの数回の講演で元が取れるということもあるでしょう。
確かに,買取は微妙ですが,一般的に考えて売れなさそうな本(翻訳書や学術書)の場合,諦めなくてはならないこともあるでしょう。
一方で,
・自費出版
はどうでしょうか。
これは,「否」というのよりも,プライドが傷つく回答かと思います。ひどい会社では持ち込みのすべてに「自費出版」を持ちかけるようなところもあります。
企画に自信があれば他に持ち込みましょう。
しかし,とりあえず,作らなければならない本(たとえば博論だとか,師匠の退職記念本とか)の場合,自費出版で手を打つ必要もあります。
そうなると,実は立場が逆になります。
書き手は,ユーザーとなり,お客になります。どこまで仕事をやってくれるのか,出版社に聞くこともできますし,他の会社と競合入札をさせることもできます。
しかし,専門的な本の場合,一般的な自費出版専門会社よりも,その業界の専門出版社に頼んだ方が,コストはかかりますが,校正などに目が行き届いたりすることもあり,結果,楽になる=コストが安くなる,という利点もあります。
もっとコストを下げたい,という場合。
100冊とか200冊とか,そのくらい作りたい,そのくらいを今度の青年会で配るつもりだ……くらいならば,印刷屋さんに行けば,面倒なく,本を作ってくれるものです。
出版社の造本はそれなりに単価を抑えていますが,造本にお金をかけ,豪華な私家版を作るという手もあります。
手書きだと多少高いですが,ワープロ打ちしたデータのある原稿があるならば,そうですねぇ,30万円もあれば本は出来るんじゃないでしょうか。
もしかしたら,20万円以下でも出来そうです。
やり方はいろいろあって,印刷屋さんも「素人」には厳しいみたいなんですが,ネットで調べてみれば,けっこう安いところが見つかるんじゃないかと思います。
調べたことないんですけどね。
「ISBN」を入れたい! なんていう方,日本図書コード管理センター
http://www.isbn-center.jp/shutoku/index.html
のHPを見ればわかりますが,2万円もあれば取得できるようです。
これを取れば,自分で大きな本屋やアマゾンなどに売り込むことも可能です。大書店は,こうした取次(中間卸)を通さない(通せない)出版元の本の販売をけっこう手がけています。
というか,これは「出版社を立ち上げる」って話に近いですね。
出版社は机と電話と赤鉛筆さえあれば出来るって昔から言われてました。いまはさすがにPCがないと話にならないですが…。
さて,話を戻して,「印税」について一言。
けっこう小汚い出版社があって,何も言わない限り,「印税なし」としてしまうところがあります。原稿を渡す段階で,「印税はどうなるのですか?」と聞くことは大切でしょう。
知り合いで,5万部も本を売ったのに1銭も印税が入らなかった方がいます。
「持ち込みだから,印税はなしです」と言うところもあるかもしれません。
そういうところには,「もし,2刷したら,それでも印税はナシですか?」と聞くのも大切です。
気に入らなかったら,出版社を変えても構いません。
どうせちゃんとした契約書を交わしたわけではないですから。
印税は,出版コストの1割。10%です。翻訳だと,4~6%というところでしょうか。500円の文庫本でしたら1割は対制作費的に大きいですが,2千円を越える本でしたらそうでもありません。
営業的に問題はなさそうな本なのに,それを渋るような会社とはあまり深い関係にならないほうがいいかもしれません。
ともあれ,出版社の回答はまちまち。
基本はビジネスパートナーですから,お互い妥協点を見つけつつ交渉していくということが大事かもしれません。
さて,企画書を送りました。
速達とか書留とかではなく,普通郵便で構いません。
ただし,変に折りたたむよりも,大きめの封筒で送った方が,それらしいかもしれません。
ポストに投函したとき,柏手は打ちました? 打ってない? ダメですな~やり直し!(ってまた小芝居…)
同時に数社に企画書を送るという荒業もありますが,これは素人にはマジ勧めません。相当に優良な著者がやってもムカつかれます。時間がかかっても,一つ出し,回答を待ち,また出す,というほうがいいでしょう。
出版社の回答は2つに1つです。
諾か否か
どのくらいの時間を置くのかわかりませんが,たいていは1カ月に1回から2回は,社内での企画会議が開かれるはずなので,回答はその後になるはずです。最 長でも1カ月半くらいで回答が出るはずです。ただし,翻訳の場合は翻訳権の空きの確認などがありますので,もう少し先になります。
ちゃんとした会社でしたら,企画書の受領の葉書が届くこともあります。さっぱりとした事務的なメールなどが入ることもあります。
諾も否もないのに,編集者から連絡があることがあるかもしれません。編集者個人としては面白そうだと思っているが,会社的にはどうだか判断がつかないような場合です。
そういう場合,社内企画会議用にいろいろと質問するかもしれません。
どちらにせよ,3年つきあった恋人とのEメールのやり取りのごとく,そこそこ早いレスポンスが必要です。
あんまり早いと→(仕事,早そ~,だけど,雑? つーか,返事メンドー)となり,引き気味に。
あんまり遅いと→(つーか,何様? 面白そうと思ったが,一緒にやるとダルそう)となり,やはり引き気味に。
なかなか難しいところですね。
ここは,即レスよりも,「読ませるメール」を心がけるべきでしょう。
といって,長大なメールでもアウト。
なかなか難しい。
回答が否の場合,申し訳なさそうな編集部より連絡が入ります。
もし,ここで企画会議では「否」になったとしても,このコネは後々使えるかもしれません。大事にしておきましょう。具体的にどこがダメだったか聞くのもいいかもしれません。編集がいい人だったら他の出版社を紹介してくれることもあるかもしれません。
また出版社によっては,後述する「買い条件」をつけることで出版が可能になるかもしれません。編集部の断りの文面に「営業面での不安」があげられている場 合,もう一度,編集者に条件を付け直してみるという手もなくはないですが,かなりふっかけられることも多いでしょう。預金残高と相談しつつ,話を聞いてく ださい。
ま,否となっても,くよくよすることはありません。「ウチでは儲からない」と言っているだけです。他の会社に行けばいいのです。そして,えらい先生になってください。向こうから依頼がきたときに,呵呵大笑してやればいいのです。
会議の頻度から言えば,少なくとも,1カ月~1カ月半内には回答が出るはずです。それでも何の連絡がない場合,次の社へ移る方がよいでしょう。
「諾」といった場合も,いろいろあります。
会社によっては,
・印税あり
・印税なし
・買取の要求
・自費出版
というふうに出版を分けていることがあります。「自費出版」は例外としても,「印税あり」と「買取の要求」ではずいぶん差がありますね。
納得のいかない回答があった場合,ここはペンディングにしておいて,他の会社にするという手もあります。
基本的には,小さい会社は,買取の要求をすることが多いように思います。結局は,出版には「資金」が必要なのです。
ただ往々にしてあるのは,結局どこへもっていっても,「買取を要求された」というようなことです。
たとえば,同じような大きさで,同じような本を出している会社の場合,編集者の見方は基本的には変わりません。けっこう同じことを言うものです。
つまり,あなたの企画はそういう価値しかないということです。
残念に思いますか?
しかし,冷静に考えると,買取の冊数も300~400部でしたら,まだ自費出版よりは安く上がります。教科書やワークショップで,あるいは知り合いに売りつけることができそうならば,損をすることはありません。
また,300人くらい専門家として知り合いがいないような専門家の本は,ちょっと作れないというのも,編集者としては思うところです。
また,その本を出すことによって,「講演」などでお呼びがかかることも増えるかもしれません。そうなれば,ほんの数回の講演で元が取れるということもあるでしょう。
確かに,買取は微妙ですが,一般的に考えて売れなさそうな本(翻訳書や学術書)の場合,諦めなくてはならないこともあるでしょう。
一方で,
・自費出版
はどうでしょうか。
これは,「否」というのよりも,プライドが傷つく回答かと思います。ひどい会社では持ち込みのすべてに「自費出版」を持ちかけるようなところもあります。
企画に自信があれば他に持ち込みましょう。
しかし,とりあえず,作らなければならない本(たとえば博論だとか,師匠の退職記念本とか)の場合,自費出版で手を打つ必要もあります。
そうなると,実は立場が逆になります。
書き手は,ユーザーとなり,お客になります。どこまで仕事をやってくれるのか,出版社に聞くこともできますし,他の会社と競合入札をさせることもできます。
しかし,専門的な本の場合,一般的な自費出版専門会社よりも,その業界の専門出版社に頼んだ方が,コストはかかりますが,校正などに目が行き届いたりすることもあり,結果,楽になる=コストが安くなる,という利点もあります。
もっとコストを下げたい,という場合。
100冊とか200冊とか,そのくらい作りたい,そのくらいを今度の青年会で配るつもりだ……くらいならば,印刷屋さんに行けば,面倒なく,本を作ってくれるものです。
出版社の造本はそれなりに単価を抑えていますが,造本にお金をかけ,豪華な私家版を作るという手もあります。
手書きだと多少高いですが,ワープロ打ちしたデータのある原稿があるならば,そうですねぇ,30万円もあれば本は出来るんじゃないでしょうか。
もしかしたら,20万円以下でも出来そうです。
やり方はいろいろあって,印刷屋さんも「素人」には厳しいみたいなんですが,ネットで調べてみれば,けっこう安いところが見つかるんじゃないかと思います。
調べたことないんですけどね。
「ISBN」を入れたい! なんていう方,日本図書コード管理センター
http://www.isbn-center.jp/shutoku/index.html
のHPを見ればわかりますが,2万円もあれば取得できるようです。
これを取れば,自分で大きな本屋やアマゾンなどに売り込むことも可能です。大書店は,こうした取次(中間卸)を通さない(通せない)出版元の本の販売をけっこう手がけています。
というか,これは「出版社を立ち上げる」って話に近いですね。
出版社は机と電話と赤鉛筆さえあれば出来るって昔から言われてました。いまはさすがにPCがないと話にならないですが…。
さて,話を戻して,「印税」について一言。
けっこう小汚い出版社があって,何も言わない限り,「印税なし」としてしまうところがあります。原稿を渡す段階で,「印税はどうなるのですか?」と聞くことは大切でしょう。
知り合いで,5万部も本を売ったのに1銭も印税が入らなかった方がいます。
「持ち込みだから,印税はなしです」と言うところもあるかもしれません。
そういうところには,「もし,2刷したら,それでも印税はナシですか?」と聞くのも大切です。
気に入らなかったら,出版社を変えても構いません。
どうせちゃんとした契約書を交わしたわけではないですから。
印税は,出版コストの1割。10%です。翻訳だと,4~6%というところでしょうか。500円の文庫本でしたら1割は対制作費的に大きいですが,2千円を越える本でしたらそうでもありません。
営業的に問題はなさそうな本なのに,それを渋るような会社とはあまり深い関係にならないほうがいいかもしれません。
ともあれ,出版社の回答はまちまち。
基本はビジネスパートナーですから,お互い妥協点を見つけつつ交渉していくということが大事かもしれません。
いつも楽しく読ませていただいております。
学会発表→学会誌掲載→大学仕官→専門書出版
→一般書出版→講演多数→文○庁長官??
の青写真を現実のものにするには、
出版は欠かせませんです。
今後ともよろしくお願いします。
p.s.相互リンクなどお願いできれば幸いです。
どうもはじめまして,こんばんは。
コメントありがとうございました。
青写真,良いですねえ~。文化庁長官といわず,民間登用で文部科学大臣まで!
しゅうさんのブログの質の高い論議,いつも楽しみに拝見しております。謹んでリンクさせていただきました。こちらこそ,今後ともどうぞヨロシクなのです。