和州独案内あるいは野菜大全

第一回奈良観光ソムリエであり、野菜のソムリエ(笑)でもある者の備忘録のようなもの。文章力をつける為の練習帳に

lycopersicon esculentum 2

2008年08月04日 | 野菜大全

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 トマトはナス科の夏野菜。とは言え日本の気候がトマトにとって適した気候かというと不適だと言わざるを得ない。温暖湿潤と言いますが、正確には日本の夏は亜熱帯に近いのではないでしょうか。30度を超える暑さと、湿気の多さは虫と病気の温床となり、カラリとした冷涼な気候を好むトマトにとっては凌ぎにくいものです。雨の多さも致命的な病原菌の蔓延と果実の品質を下げる原因となるために、出荷栽培をする場合はハウス栽培が前提となります。
 夏場は夜温も高いために、充分に養分の果実への転流がいかず、肥大と成熟も早いために味に関しては春先に出るトマトよりも劣ると言わざるを得ない。かと言って早出のトマトはボイラーを焚いて栽培する加温栽培、促成栽培がほぼ当たり前になってしまうのでまるで油を食べていると言うと言葉が過ぎるでしょうか。
 以前にも書いたとおり、ハウスのビニルだって原料は石油ですし、出荷となれば軽トラをかっ飛ばす訳ですから変わりは無いのかもしれませんが、真冬にブーンと唸るボイラーを見てるとこれでいいのか?と思ってしまうのも事実です。トマト何かよりもイチゴの方が促成栽培の率で言ったら高そうですけど・・・
 


以前は大玉にミニだけだったのがミディ、中玉の房付きなども出回るようになりました。近年さらにカラフルなトマトが姿をあらわしています。
 黒トマト系、これにはブラウンやパープルも含まれるでしょうやグリーン、ホワイト、パイナップルなんてのもあります。黒トマト系はアントシアニンの発色でしょうがホワイトはアルビノなんでしょうか?だとしたら栄養価が他のものに比べて低くなるのかもしれません。巷で喧伝されている野菜の機能性成分ってのはこの色素由来のものが多いのは確かですから。
 赤いトマトはリコピンとカロテンの色素の発色の結果です。リコピンが無ければオレンジのトマトになってしまいます。嘘だと思われますか?たぶん本当です多分・・・。
 リコピンは気温が高いと生成されにくくなるので、冬や春先のトマトと夏のトマトでは全体に色が微妙に違う事があります。冬のトマトはピンクっぽく夏のトマトはオレンジっぽいのはリコピンとカロテンの発色によるものなのです。それじゃあ夏のトマトは駄目なのかと言うとそうではなく、火照った体を中から冷やしてくれて発汗によって失われたカリウムを補う意味ではトマトは理想的な夏の野菜です。酸味が強いのも食欲を刺激してくれるのでドレッシングをかけて味を補うなど、季節に合った食べ方を少しの工夫をすることで賢く野菜と付き合う事ができます。
 上に書いたカラードトマトは海外から種を取り寄せて栽培してみましたが、本当に全てが中途半端な味でがっかりしました。腕が悪いんじゃないかと言う疑問は甘んじて受けます。それにしても日本人の味覚や食感の違い、栽培環境や方法の違いが如実に出て、改めて日本の種苗メーカーの良さを感じました。
 種苗メーカーの話をついでにすると、流石にトマトと言えば桃太郎という盲信は無くなったでしょう。一時代を築いたこのブランドが現在10以上のシリーズを持つことは殆どの消費者は知る事もありません。日本中で100以上の品種があるトマトの中で未だに高いシェアを持つのはそれなりの理由があるはずですが、それは偉い人に考えてもらうとしましょう。