今日で 四日目
あと二日 仕事が続く
今日は バスの台数が少なくて楽だったけど
明日は20台?
うわあ 怖い
でも 走り回っている方が 色々考えなくていいから
気持ち的には 楽かな …
それにしても 鎖骨の痛みが 和らぐどころか
次第に痛くなっているんだけど
放っておいて 本当に大丈夫なのかなあ
息をするだけで 痛いんだけどな …
レントゲンなり撮ってもらって
本当に骨が折れてたり ヒビが入っていたりするのを
この目で確認していないので 不安 …
今日は 肩の方まで 痛みが広がって … ヤダなあ …
今夜は キノコの肉巻き
豆腐と ワカメの味噌汁 納豆小鉢 サラダ
そんなところかな
久しぶりに 小説描いたので 下げときます
ようやく 「高尾山」の話
ちょっと 痛ーい話になります。
緑の指と魔女の糸 「高尾山事変1」
町内の飲み会に誘われて、母さんは真っ青になっていた。
「そんなに緊張しないで下さいよ。軽~い顔合わせだと思って」
誘った猫平さんは、ニコニコしている。
「ここの商店街は、団結力が強いですから、一度は顔を出しておくべきですよ」
「はあ…、そうですか」
と云いつつ、母さんは次第に俯いてゆく…
わたし、七字 凛、5歳。この商店街の事は、友達の夏ちゃんから聞いていて、
実はもうとっくに、馴染み、親しんでいる。
外出を苦手とする母さんの代わりに、
「ついでだから…」と、わたしの保育園の送り迎えをしている夏ちゃんの母さんのお蔭。
帰り道に買い物もするので、どこのお店のおじさんの名前とかも覚えている。
いつも、コロッケを食べさせてくれる、親切なおばさんの名前も。
母さんとも、早く友達になって欲しいと思っていたよ。
それで、やっと、母さんは商店街の飲み会に参加することになったのだ。
「猫平さん、ずっと私のそばにいて下さい」
と、母さんは猫平さんにくっついたままだった。
でも、猫平さんは、うまく、私たちをみんなに紹介してくれ、
母さんは、消え入りそうな声で、「よろしくお願いします」と頭を下げたんだ。
「凜ちゃんのことは、もうみんな知っているからね」
と、コロッケ屋さんが云うと、
「ここでは、子供はみんなで育てるって気持ちが強いから、いつでも頼っていい」
と、夏ちゃんの母さんが云った。
「遠慮することは、ないんだよ。紫さん」
夏ちゃんの母さんは、ドンと、母さんの背中を叩いて笑った。
わたしの保育園の友達も沢山来ていて、とても楽しい時間が過ぎていった。
「あの、猫平さん」
その喧噪の中で、母さんがそっと、猫平さんに伝えたことがある。
「私と、凛。明日から、一週間程、出かけて留守にしますから、承知していてもらえますか」
「何処かに、行くんですか?」
「身内のいる、八王子に。…高尾山って、知ってますか」
「ああ、知ってますとも。子供の頃、遠足で行きました。駅に、大きな天狗のオブジェがある」
「そう、その山に行ってきます」
「そうですか。じゃあ、しばらく夏ちゃんは、凛ちゃんに会えないねえ」
「ええええ!? そんなあ!」
夏ちゃんが、落胆した。
「お土産に、木刀を買ってきてあげる。欲しかったんでしょ?」
わたしは、夏ちゃんに云った。
「そりゃ欲しいけどさ…、一週間も、なんで? 凜ちゃんも保育園休むの?」
母さんは、夏ちゃんに小さく、
「ごめんね」
とつぶやいて、お酒を一気にあおった。
まさか、その、「高尾山」で、あんなことが起こるなんて、
思いもしなかったよ … 。
そもそも、「高尾山」に行く理由が、わたしには判らなかった。
出発の日。
母さんは、いつもの緩い服を脱いで、なんか軍隊のような服装で準備を始めた。
「母さん、命はどうするの? おいてゆくの?」
「連れていきます。命を連れていかなきゃ、意味がない」
「高尾山に、なにをしに行くんですか?」
母さんは、ふと、いつもの優しい顏になった。
「貴女の、ひいおばあちゃんに会いにいくのよ」
「わたしの、ひいおばあちゃん … ?」
わたしは、思わず命をぎゅっと抱きしめた。「生きているんですか、その山で」
「私の祖母、白水さんは、高尾山の山伏です。山伏とは修験道を行じる行者の事のこと。
当山派、本山派、真言、天台、出羽三山… 」
ううう…
「…大峰、高尾山、立山、石鎚、熊野、白山…」
何かにとりつかれたかのように、母さんは続けた。
「… 富士山、日光、木曽御岳、など流派は様々ありますが、
各々の伝承に従って修行を行っているの。
うちの流派は特別で、何にも属さない。…祖母は、ずっと、その山で、
うちの流派を護って生きている人よ」
「母さん…、わたし、怖いです…」
「凛 …」
母さんは、そっと私と、命の頭を撫ぜた。
「怖くても、避けては通れない道があるのよ。貴女は、その山で …」
しばらく、間があった。「本当に怖い想いをするかも知れない。でも」
わたしの顔を覗き込む。「その為に、命がいる。安心なさい」
「こんな小さな命に、頼れと云うのですか?」
「その子は、お守りのようなものです。貴女が傷つくことにはしないから、
疑問に思ったこと、理不尽に感じたこと、悩みや、迷いを、貴女は貴女なりに、解決すること」
母さんは、意を決したように、云った。
「私は、駒をひとつ、進めたい」
そして、大きなリュックを担いで、笑ったのだった。
「さあ、行くよ、凛、命! 」
緑の指と魔女の糸 「高尾山事変2」に続く。