
↑ 海が穏やかだったら上陸できたのですが・・・。(2001年撮影)
チービシ 神山南 ラビリンス
ブリーフィング。
「ぽーさんはどうしますか?。またスクールの方へ行きますか?」
「いや、もういいでしょう。一通り撮りましたから」
エントリー。水深十五メートルのラビリンス。迷宮の名前通りに入り組んだ根があった。
もっともこの迷宮は五メートルも浮上すれば容易に脱出はできたが。
『光る貝、視たいですか?』とKAZUがセンセイに記した。
私はすでに何度か視ていた。ハウジングは船の上に置いて来てニコノスオンリーである。
そしてレンズ20mmは超ワイド。写真にならない。遠慮することにした。
KAZUの水中ライトに照らされて順次岩陰を覗いている。
私を除く七名がそれを確認するにはだいぶ時間が掛かりそうである。
近くの根を被写体を求めて散策。
ハナビラクマノミのファミリー。数カット撮影。
隣の根には五十センチほどのフエダイ。ゆっくりと追いかける。
漸く全員が観終わったようだ。KAZUが『視なくてもいいですか?』と眼で訊いている。
頷いた。
直径一メートル程の横穴。洞穴くぐりだ。孔が小さい故に時間が掛かる。
入口でゆっくりと構えていたらSHIMAが近寄って来た。
SHIMAが手招きをして生徒の四人を整列させた。
センセイに 『94 沖縄』と記した。
ニコノスを構えた。
前列で燥いでいるのは相変わらず小橋である。撮影。
洞穴を覗いた。まだ先が詰まっている。
岩棚の上に出た。排気泡が岩の裂け目から昇って来る。
パーティの進路は明確だった。
一山越えると直径五メートルほどのホール。三人の姿が視えた。
残りはまだ穴の中なのだろう。
静かに深度を深めた。彼らの背後に立った。
アクシデント。Ⅿ山のタンクが外れた。
※レギュレータを咥えたままBCジャケットを脱ぐ。
タンクを再固定。
BCジャケットを装着。
その気になれば誰の手を借りなくてもできる・・・はずだが?。
急いで駆け付けようとしたら傍にいたN村とW辺が泳ぎ寄った。
静観。お手並み拝見。
S谷とT村も近寄って行った。グッジョブ。
一行は再びもうひとつの横穴に入って行った。
今回もパス。岩の裂け目からの排気泡を追って先回り。
根の上ではDラスが中性浮力をとって周囲を見廻している。安全対策だ。
ボート下。講習班がエキジットを始めた。残圧はまだ充分に余裕があった。
減圧停止をしながら岩棚の上でフィッシュウォッチング。
『なにか面白いものがいたら見せてやろう』そう思いながら周囲を捜した。
珍しくは無いがサザエ。房総のものよりだいぶ小さい。
手に取って五人の方へ泳ぎ寄った。
講習班に続いてファンダイブ班もエキジット。
例により私は一番最後である。
まだ五分以上水中に留まることになりそうだ。
ニコノスを片手に周辺に眼を凝らす。
一メートルほどの岩の裂け目。一匹の魚体。
記憶を探る必要は無かった。サザナミヤッコである。
残圧確認。まだ余裕がある。
エキジットは学生たちが漸く済んで、矢野嬢とMGが梯子に取り付いている。
私に残された時間は一分ほどか?。
サザナミヤッコを追って岩の裂け目を覗き込んだ。
再びチラッと顔を出した。腕を伸ばしてノーファインダー撮影。
どうにか二カットを撮った。
顔を揚げると水中に残っているのは私とKAZUとDラスの三人だけであった。
心あとに残れどもエキジット。
ボートはすぐに波を蹴立てて走り出した。
往路よりも速度を出している。ピッチングが激しい。
スプレーは飛沫と言うよりも波そのものである。
眼を開けていられない。
後甲板から船首へと移動。揺れは激しいもののスプレーの影響はぐっと少なくなる。
船首甲板はぐったりしている者が大部分だった。
「N野!。生きてるか?」
「はい」
「オザ!。大丈夫か?」
「あんまり大丈夫じゃありません」
「吐いたら楽になるぞ」
「そうですかー」元気が無い。
そういっている間に吐き気を催したらしい。舷から身体をのり出した。
「先輩大丈夫ですか」美友紀が後ろからそれを支えた。
吐瀉物が飛んで来た。
「すみません。かかりましたか」
「気にするな
「すみません」
「もう十分ほどで港に着く。もうしばらくの辛抱だ」
一人気炎を吐いているのが直子である。
「揺れて面白ーい」
『莫迦か?』
「あーあ、運転したいなー」
「お前には無理だ」
「なんで?。ちゃんと四級免許持ってるよ。四級じゃ駄目?」
「そういう問題じゃ無いんだ」
「ロープだって結べるよ」
「だからね。そういう問題では無いのだ」
入港。接岸。
器材の搬出をしている脇をすり抜け、まずはカメラを降ろす。
安全な場所を確保して一息つける。
ウェットスーツを脱ぎ棄てる。カメラをその上に置く。
メッシュバッグを運び出して作業終了。
タンクの運搬は若い者の仕事だ。
「飯はどうする?」
「お店に行ってからにしましょう」とSHIMA。
集合写真を撮りたいのだが後片付けの真っ最中でその余裕は無さそうだ。
ダイビングサービスに到着。
「今日はきちんと洗えよ」そう言い残し撮影機材を抱えて早々と店内へ。
床の片隅にそれを置いた。
スタッフが弁当を抱えて来た。
「三種類ありますからお好きな物をどうぞ」
「よし喰おう」胃痛が始まっていたのだ。他を待たずに弁当を広げた。
半分ほど口へ運んだ頃他が洗浄を終えてテーブルに集まって来た。
「先に喰ってるぜ」
「はい」
飯を喰い終えて外に出た。一人でゆったりと器材を洗浄した。
珈琲が飲みたかった。勝手知ったる他人の家。薬缶で湯を沸かしインスタント珈琲を淹れた。カップを持ってSHIMAの隣へ。
「どうですか講習の結果は?」
「K谷さんは今日全然潜って無いんですよ。もう一人N 野君でしたか、彼も二本目を船酔いでパスしまして・・・」
「それではしょうがないな」
「明日の飛行機は最終便なんですか」
「そうです」
「でしたら昼前に砂辺あたりで追加講習しましょう。それでN野君はOKですよ」
「K谷はオマケカードがあるでしょう。それを出せますか?」
「プライマリーですか?。それは出せます」
「よろしくお願いいたします」
「他の方も宜しければ追加講習させましょうか?。一本でも多く潜っておいた方がいいでしょう。サービスさせますよ」
「では、みんなやりたいっていうだろうな」
「ファンダイブの方も希望者がいればできますよ。こちらは無料と言うわけにはゆきませんが」
「話しておきます」
「ぽーさんのカードはまだⅠでしたっけ?」
「ええ、イントラより偉いオープンウォーターを目ざしてますから」
「実力的には充分なのですからⅡにしたらどうですか?」
「必要があるかな・・・?」
「パラオの事故以来カードで判断する店が増えましてね。
千本潜っていても初心者コース。
延べ十本程度でもアドバンスなら上級コースへ組まれたりして」
「俺の行ったところはそんなことは無かったがな」
「全部が全部と言うわけでは無いようですが、結構あるそうです」
「ふーん」
「外国へもかなり行っているようなので悔しい思いをさせたくないんですよ」
「俺は初心者コースでも構わないけどな。楽だし、若いオネーサンは沢山いるし、
まあ冗談はともかくとして最近は若い者が五十人くらい周りにいるからな。
御大がオープンウォーターのままだと恰好が付かなくなってきたのも確かだな」
「そうでしょう」
「では、頼むとするか」申請用紙に必要事項を記入してK田に渡した。
申請料は三千円だった。記念にNAUIのロゴが入ったマスクストラップをくれた。
※ 左:オープンウォーターⅠ 右:オープンウォーターⅡ(現在はⅠ・Ⅱではなく オープンウォーター・アドバンスである)
オマケカード!。(プライマリーカードの写真はタンクを背負っていない・フィンを片方しか履いていない。なんてことは無い)
追加講習を受けて晴れてダイバーとなる。
オープンウォーターⅡとなってのその後。
一人でダイビングへ行くなら上級者コースを希望することもあり得るでしょうが
仲間内と一緒に潜るならパーティのランクに合わせることが必須です。
結局のところⅡの効力を発揮することはありませんでした。
資格マニアならばともかく、どこかの団体のような多数のカードを取得。およびその講習は不要です。
上 NAUIのマスクストラップ
下 一般的なストラップ 汎用のストラップカバーなる物が販売されていた。
髪の長い女性(男性も?)が好んで使用していた。
またポニーテールに束ねてストラップの裂け目からなびかせていた娘たちがけっこうおりました。
昼食時に島に上陸してそこで集合写真を撮影するのが常であるのだが、今回は荒天で叶わなかった。
陽が落ちないうちに撮っておきたかった。
「SC。記念撮影をする。店の前に全員を集めろ」
「はい」
「ねえねえ記念写真を撮るの?」と、直子。
「そうだ。・・・お前はこれを持て」店の隅にあったNAUIの金属プレートを持ち出した。
「えっー!。これを持つの?。私浮かないかなー?」
「心配するな。すでに充分浮いている」
「スタッフも誘え」SHIMAとKOが加わった。
直子が金属プレートを高く掲げてポーズをとっている。
『本当に浮いてるぞ!』
セルフタイマーで2カットを撮影。記念撮影終了。
弁当を喰い終えたテーブルの上が片付けられていた。KAZUがロギングしていた。
「あのー。光る貝って・・・?」と、N村がログブックを片手にやって来た。
「ウコンハネガイ」と、即答。
KAZUが顔を上げて頷いた。
「お前たちもここに座ってログブックに書き込め」ファンダイブ組に声をかけた。
「はい」
「ぽーさん、サインお願いします」とMG。
「あっ、はい。今日はスタンプ持って来ましたよ」似顔絵スタンプをMGのログブックに捺した。そして矢野嬢にも。
ロギングを終えたKAZUが五人衆に向かって言った。
「沖縄には何種類のクマノミがいるかご存知ですか?」
「あー!。それ昨日聴いたんですよ・・・・・・?」
「・・・・・・」
KAZUの背中越しに指で『六』のサイン。
「六種類です」
「ではどうやって見分けたらいいか判りますか?」
「・・・・・・」
「あのーですね。一ハマ、二クマ、三カクレと憶えればいいんですよ」
「・・・・・・?」
「一本線がハマクマノミ。二本がクマノミ。三本がカクレクマノミ」
「数をこなせばチラッと視るだけで判別できるようになる」と、私。
KAZUの話は次にクマノミの雌雄に至った。
『昨夜、話さなかった方が良かったかな?』
「N野、二本目パスしたんだって?」
「はい。船酔いで気持ち悪くて」
「では、お前のカードはオマケカードだな。いいなーぁ。みんなと違ったカードで、希少価値があるぞ、あれは」
「おまけカードって・・・?」
「カードの写真がオープンウォーターはタンクを背負ってるが、お前のはタンクを背負っていないんだ。シュノーケリングをしてるんだ」
「いいえ、明日一本潜れば」
「やめとけ、おまけカードの方がいいよ」
昨日に続いてDラスの撮ったビデオ上映が始まった。
今日は講習組も一緒に鑑賞している。
※三日目の水中での講習組の写真は・・・。
フィルムの時代はハウジングにリバーサルを。
水中での人物用にニコノスにネガフィルムを。
地上・船上用にはカリブにネガフィルムを装填しておりました。
ネガ番号をチェックいたしましたらニコノスで撮影したネガは六齣✖3が欠けてました。
その前(ツバメウオ) 後(サザナミヤッコ)はありました。
「クラブの勧誘に使用したい」と言われて翌春ネガを渡した記憶があります。
つ づ く
※掲載順位がランダムなのでダイビング記事の目次を作りました。
年代順となってます。
ダイビング編目次