日産自動車と仏ルノー、三菱自動車の日仏連合が自動運転分野で米グーグル陣営に参画する方針を固めた。共同で無人タクシーなどを開発し、自動運転車両を使うサービスの事業化も検討する。自動運転では走行や周囲の認識に関わる膨大なデータの収集や分析が不可欠。グーグル陣営は参加する自動車大手の年間販売台数が約1600万台規模に達し、自動運転のデータ基盤の構築で一段と優位に立つ。他の自動車やIT(情報技術)大手も対応を迫られそうだ。
日仏連合は米グーグル系の自動運転開発会社ウェイモと提携に向けた詰めの協議に入った。今春にも具体策を発表する。
日産などが車両を提供して共同で無人タクシーを開発する見込み。人の移動に関わる予約や課金なども含めたサービスも検討する。移動手段を所有せず、需要に応じてサービスのように使える「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス、マース)」分野で広範に組む。
ウェイモは自動運転の頭脳を担う人工知能(AI)に強く、標識や地図、車や周囲の人の動きなどを認識する技術を持つ。2018年10月に米国の公道での総走行距離が1千万マイル(約1600万キロメートル)を超え、18年末には自動運転車を使った配車サービスをアリゾナ州フェニックスで実用化。自動運転の開発競争の先頭を走る。
グーグルは車載分野のインフラを握る存在となりつつある。既に地図情報サービス「グーグルマップ」を使い、スマートフォン(スマホ)が従来型のカーナビゲーションの代替となりつつある。グーグルは世界の車メーカー向けに基本ソフト「アンドロイド」の提供を広げている。日仏連合も21年から主要車への搭載を決めている。

グーグルにとって、18年の世界販売台数が1075万台の日仏連合が自陣営に加わるメリットは大きい。グーグルは既に欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)や英ジャガー・ランドローバー(JLR)と提携するが、販売エリアは欧米が中心。アジアに強い日産や三菱自がいる日仏連合の参画で、陣営の販売台数が3倍に膨らむ。実用化した技術を世界市場へいち早く普及しやすくなる。
日仏連合にとって自動運転領域では初の大型提携になる。連合は18年9月に車内情報システムにグーグルのOSを使うことを決めており、自動運転の共同開発まで踏み込む。
自動運転の要となるソフトウエアの開発には膨大な走行データの集積と分析が欠かせない。米ボストン・コンサルティング・グループは無人タクシーの開発だけで、35年までに1.8兆ドル(約198兆円)の投資が必要と予測するなど、巨額の投資も発生する。単独での開発は難しくなっており、業界や陣営の垣根を越えて、複数の企業と提携を重ねる構図が定着している。