宇宙誕生直後に誕生した星は、、水素、ヘリウム、少量のLiから成り立っていて、金属の量が極端に少ない。したがってそういう星は水素を含むが他の元素を含まない星を探せば見つかることとなる。これに着目した、オーストラリア国立大学(ANU)のスカイマッパー望遠鏡には、鉄をほとんど含まない“貧血星”の独特の色を検出するユニークな能力があって、宇宙誕生の歴史で最も古い星を拝見している。自然科学の分野でも創意工夫があれば面白い発見ができるということだろう。、
ANUのスカイマッパー望遠鏡
この話は、一般社団法人STEAM教壱岐教会の科学検定というサイトなどに掲載されている::
そういった星は、宇宙誕生の直後に誕生し、天の川銀河(銀河系)の中心近くにあるという。英ケンブリッジ大学とオーストラリア国立大学の合同研究チームが発表した。
不思議な光を放つこれらの天体は、自身の重力によって凝集したガス塊で、わかっている限りでは最古の純粋な組成を持ち、極超新星(ハイパーノバ)と呼ばれる巨大爆発によって死を迎えた更に古い恒星の物質を含んでいるという。
「これらの原始の星は、宇宙で最も長く生き続けている恒星であり、われわれが見た中で最古の恒星なのは確かだ」と、研究論文の筆頭著者であるANUのルイーズ・ハウズ(Louise Howes)氏は述べる。
天の川銀河は基本的に、これらの初期形成恒星の周囲に形成された。今回見つかった9つの純粋な恒星は、初期宇宙の状況に関する現在の理論に異論を唱えるものと言える。「これらは、炭素、鉄など重い物質の含有率が驚くほど低く、最初期の恒星は通常の超新星として爆発したのではない可能性を示唆している」とハウズ氏は話す。
いま考えられるのは、「高速で回転する恒星が爆発して通常の超新星の10倍のエネルギーを放出するとされる極超新星として一生を終えたのではないかということだ」とハウズ氏。
ビッグバンの直後の宇宙は全体が、水素、ヘリウム、および少量のリチウムだけから成り立っていた。酸素やナトリウムなどを含む他の元素はすべて、恒星の内部、または恒星が超新星爆発で死ぬときに作られた。したがって古い恒星を見つけるには、金属の含有が非常に少ない恒星、つまり水素を多く含むが他の元素はほとんど含まない恒星を探せばよいことになる。
最初期の恒星は、重力の影響が最も大きい銀河の中心でできると考えられていた。しかし数十年の研究の結果、銀河系中心部のほとんどの恒星は、太陽や近隣の恒星と同程度の金属含有量であることがわかった。銀河系中心部の恒星は46億歳の太陽より70億年ほど古いが、それでも初期宇宙の状態を知るには不十分ということだ。
プロジェクトリーダーであるASU天文学・天体物理学研究学院(RSAA)のマーティン・アスプルンド(Martin Asplund)教授は、銀河系中心部にある数十億の星の中から希少な古代遺跡のような星を見つけるのは、それこそ干し草の山から針1本を見つけ出すようなものだという。
「ANUのスカイマッパー望遠鏡には、鉄をほとんど含まない“貧血星”の独特の色を検出するユニークな能力がある。今回の研究ではそれが不可欠だった」とアスプルンド氏は述べる。
研究チームはスカイマッパー望遠鏡で500万個におよぶ星を次々に観測して最も純粋、すなわち最も古い標本を選別し、ニューサウスウェールズ州にあるアングロ・オーストラリアン望遠鏡とチリにあるマゼラン望遠鏡でさらに詳細を調べ、標本の化学組成を明らかにした