思いつくまま

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佐藤勝彦著『宇宙論の飽くなき野望-それでも96%は未だ謎、だから面白い-』(技術評論社)を読む。

2010年05月30日 22時00分00秒 | 読書
アインシュタイン方程式における「トミマツ・サトウ解」のあの佐藤文隆先生ではないほうの、元・東京大学大学院理学研究系研究科教授の佐藤勝彦先生が2年前に書いた自叙伝兼研究成果兼最新の宇宙論の紹介のような本だった。
2年前に佐藤勝彦先生の宇宙論に関するTV番組を見て、この真面目な人柄の先生の研究分野についてすごく興味を持っていたし、今年の3月18日(木)の日経新聞夕刊にも先生の記事が取り上げられていて(「時空の果てに自分がいる」、「物理学で心も解く」)、いつかはこの先生の宇宙論に関する本を読んでみたいと思っていた。
http://blog.goo.ne.jp/ms1229jp/e/1971d5b6bb7336e71308ca8da62f39de
ちょうど図書館でこの先生の本を探したところ、本当に分厚い本(むずかしい数式などがちりばめられている)がたくさんあって迷ったが、この本ならば読めるかもと思って借りてみた。
自分は理科系ではないので、高校2年生の「物理」までしか学校で教えてもらったことは無いくらいのド素人なので(社会人になってから宇宙論や相対性理論の入門書+αレベルの本はこれまでにもたくさん読んで勉強してきたつもりだが)、この本を最後までちゃんと読めるかどうかは心配だった。

最初のうちは、この先生の生い立ちから順々に書かれていてスラスラと読めたが、特に「相転移」のあたりからは、なかなか理論がむずかしくて理解しがたく前に進めなかったりして、結局2回も本を借り直してしまった。それでも一応何とか最後まで進んだ。
現在の最新の宇宙論に関する興味を惹かれる内容が次から次へと満遍なく紹介されており、面白く読めたし、世の中には本当に頭の良い人がたくさんいるものだと感心させられた。

佐藤先生の専門は、「超新星爆発におけるニュートリノのトラッピング理論」や「インフレーション(急速な膨張)理論」で、この理論無くして宇宙が膨張をし続けることの説明はできないのだ。
それ以外にも宇宙に関するいろいろな問題や理論が紹介されており、「ワインバーグ=サラム理論」、「地平線問題」、「平坦性問題」、「真空のエネルギー」、「モノポール問題」、「アインシュタインの宇宙定数」などなど、宇宙論や素粒子論に関する理論、それにグレートウォール、ボイド、ワームホール、ブラックホール、ハッブル定数、宇宙年齢(137億年)、重力・色の力・電磁気力・弱い力・強い力が宇宙の進化とともに枝分かれして出てくる、「大統一理論」、「超ひも理論」、COBE衛星やWMAP衛星の観測などもわかりやすく紹介されていた。

宇宙は膨張し続けているはずなのに、そのエネルギー密度は一定(普通は容器が膨張したら中のものの密度はそれに合わせて小さくなるはずなのだが)であるとか、宇宙の組成は4%の通常の物質(私たちの体や地球、輝いている星などを構成する物質)と20%の暗黒物質(ダークマター)と76%の暗黒エネルギーでできているとか、そしてその96%のモノは未だに謎というのも非常に興味深いものがある。

一番最初に宇宙の始まり(ビッグバン)があるのなら、それ以前はどうなっていたのかとか、宇宙は膨張し続けているというが、その外はいったいどうなっているのかとか、重力に対して反重力というものが考えられるなら、それはいったいどんな力なのかとか、結局謎が解けないものは残ってしまうが、それをすべて神様がやったことだなどという考えは、科学者の立場からはありえないことのようだ。ともかく「観測と理論の矛盾から「新しい真理」が生まれる」ということのようだ。

日常生活から全く離れた内容の本を読んで、かなり気分転換になった。
これからも機会あるごとにこの分野のことにも触れ、興味を持って生活して行きたいと思ったよ。
コメント
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