ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】火車

2005年12月21日 22時33分53秒 | 読書記録2005
火車, 宮部みゆき, 新潮文庫 み-22-8, 1998年
・「火車【かしゃ】 火がもえている車。生前に悪事をした亡者をのせて地獄に運ぶという。ひのくるま。」とびらより
・ひさしぶりの小説。小説が嫌い、というわけではないのだけれど、いまいちそそられる作家がいない、ということで最近手にする事がすくないのです。 かなりの有名作家ですがその作品は初見でした(たぶん)。どんな作家でも、句読点の打ち方、改行の仕方など、たいていその文章に何らかの特徴があるものですが、この作家については無味無臭。作家の気配がほとんどしない、という不思議な印象を受けました。「自分を出さない」という点で、作家自身と登場人物の一人がダブって見えます。
・舞台:1992年、東京。あらすじ→「休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。」カバーより  自分の言葉であらすじを書こうかと思ったが、やっぱりプロの仕事にはかないません。。。
・冒頭から「綾瀬の駅」だの「常磐線」だのと具体的地名が出てくる。首都圏の人ならその情景がピンとくるのかもしれないが、そのあたりサッパリわからない。田舎者の宿命か。
・「目は心の窓というが、時として、裸電球ひとつともっていない穴蔵のような倉庫と同じぐらい、奥深い闇を宿すことがある。」p.26 これは実物を見た経験がないと出てこない表現。著者が出くわしたのは一体どんな状況だったのか、想像が膨らむ。
・以下しばらく、著者の取材の成果を書き抜き。「(住民票や戸籍謄本は)正当な理由がないかぎり、勝手な閲覧や写しの持ち出しを法律で規制されているはずのものなのに、同年輩の人間が窓口で「本人だ」と詐称すれば、簡単に手に入れることができるとは。」p.130
・「平成元年の統計で、まず『販売信用』のうちの『割賦方式』、この新規信用供与額――平たく言えば、この年の売り上げですな、これが十一兆四千とんで八十二億円。『非割賦方式』が十一兆八千五百七十二億円。つぎに『消費者金融』が同じ平成元年の統計で三十三兆九千五百十一億円。このふたつを合計すると――」p.178
・「多重債務者たちを、ひとまとめにして、『人間的に欠陥があるからそうなるのだ』と断罪するのは易しいことです。だがそれは、自動車事故に遭ったドライバーを、前後の事情も何も一切斟酌せずに、『おまえたちの腕が悪いからそうなるのだ。そういう人間は免許なんかとらないほうがよかったんだ』と切って捨てるのと同じことだ。『それが証拠に、ほら、事故を起こしていない人間だっているじゃないか』とね。そういう人間を見習え、とね」p.195
・「私はね、講演などで、とにかく夜逃げの前に、死ぬ前に、人を殺す前に、破産という手続きがあることを思い出しなさい、と話すようにしています。」p.201
・「女だって、痴情のためだけに犯罪をおかすとは限らない。変わってきているのだ――」p.223
・「何でも呑み込み、たいまち同化させてしまう東京という街のなかに入っても、不思議と関西人だけは、持ち前の色合いを失わないものだ。関西弁も強靭な生命力を持っている。」p.233
・「今の世の中でもっとも警戒心が強い人種とは、幼い子供を持った若い母親たちだろう。子供を狙った醜悪な事件があいついでいるからだ。」p.271 なんとタイムリーな言葉・・・
・「刑事には二種類いる。飲み屋のたぐいでは絶対に自分の身分を明らかにしないタイプと、ある程度場所を選びはするが、積極的に明らかにしてゆくタイプと。」p.314
・「「蛇が脱皮するの、どうしてだか知ってます?」(中略)「皮を脱いでいくでしょ?あれ、命懸けなんですってね。すごいエネルギーが要るんでしょう。それでも、そんなことやってる。どうしてだかわかります?」(中略)「いいえ、一所懸命、何度も何度も脱皮しているうちに、いつかは足が生えてくるって信じてるからなんですってさ。今度こそ、今度こそ、ってね」」p.415 いったいどこからこんな話を拾ってきたのか。ググってみるとこの文章の書き抜きが結構ひっかかる。
・なんだかおしりのあたりがムズムズしてくるよな形容→「かすかだが、声の調子が狂っていた。まるで、その話をするためには、日常使うことのない、まったく調律されていない鍵盤を引っ張り出してきてたたかなければならないのだ、というように。」p.440
・「「死」にまつわる行事にのぞんだとき、誰でも少しばかり人が変わって、できもしない誓いを立てたり、ずっと秘密にしてきた思い出を語ってみたりするものだ。」p.478
・佐高信による巻末の解説より「オウム真理教が地下鉄サリン事件を起こし、その恐ろしさが喧伝された時、なるほどと思った情報が一つあった。それは、山梨県上九一色村のサティアンにいる信者たちの中には、多重債務者が多いという情報だった。取り立てをするヤクザたちも、薄気味悪くて、あの中には入れなかっただろう。」p.589
謎の女萌え。な方には自信を持ってオススメできる一冊です。
・ネタバレになってしまうので説明は書けませんが、最後に表題とリンクした最も強烈な一文を。
頼むから死んでいてくれ。」p.457

(本書を紹介してくれた某氏に感謝!)
~~~~~~~~~~
・エピグラフ(英epigraph)1(特に建物・像・墓・硬貨などの)碑銘,碑文.  2(巻頭に付す)銘句,題辞.
・けんでん【喧伝】やかましく言い伝えること。世に盛んに言いはやすこと。

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2 コメント

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凡主婦の日常 (otoichirou)
2005-12-22 14:40:11
はじめまして!

素敵なブログですね♪私は1歳児の母で、酒の肴が多いですが、料理や、子育て、とぼけた夫との会話など、好きに書かせていただいております。これからも是非よろしくお願いいたします。

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宣伝おつかれさまです。 (ぴかりん)
2005-12-23 09:23:55
よろしくお願いします。。。
返信する

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