日記

日々の雑記にございます。

密謀を読んでみた

2009-01-17 22:02:28 | お題
 直江兼継の何がすごいのかよくわからずじまいでした。直江状と言われる書簡が有名だそうですね。そう言われればそれは確かにすごいと後から思いました。でも、もっと駆け引きとか出てくるかと思ったので少々拍子抜け。でも、時代小説もなかなかおもしろいと思いました(何だこの小学生みたいな感想は・・・)。

 妹がタイに行っちゃったので、つなぎで一本書いてみました。もう、推敲する気力もないのでそのまま上げちゃいます。お題は引き続き「コ・コ・コ」様より拝借。
 ミストとスキンブルで、ミストが街にきてちょっとしたころのお話。
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【悲しい不幸を撒き散らした】

「夜は好きかい?」

 突然隣にやってきた青年は、突然そんなことを聞いた。すでに人々は寝静まっているのか、街の家並みに明かりはない。

「僕は好きだけど、君も好きかなあと思ってね。ほら、君はよく星空を眺めているじゃないか」

 にこにことしているその青年は、名をスキンブルシャンクスという。その明るい笑顔は、闇夜の満月というよりも昼間の太陽のようだ。少なくともミストフェリーズはそう思っている。

「・・・嫌いじゃないよ。僕の身体がこの闇色に溶けてしまうからね、落ち着くんだ。星が好きで眺めてるわけじゃないよ。ただそうしてぼうっとしていれば変な力を使うこともないから」
「そう。僕だって夜が好きさ。あ、さっきも言ったかな。僕はね、夜になると出番だって思うんだ。夜行列車に乗っているお客さんの快適な旅のために働くのさ。列車っていいもんだよね」

 列車の話になると、茶虎柄の青年はいつもに増して目を輝かせる。少し変わっているとは思うけれど、ミストフェリーズはこの青年には好感を持っている。年がら年中花をつけたヒマワリのような奴だと、わかるようなわからないような例えをした仲間もいる。
 ミストフェリーズがこの街にやってきてもう随分時間が経っている。色んな町を渡り歩いてきたが、生まれ持った彼の力は、望まなくても周りの猫たちの目を好奇と畏怖の色に染めてきた。とかく、彼にとってそれは面倒な話だった。いつも彼は異分子だった。何かあれば、時には頼りにされ、時には煙たがられた。取りあえず、この街では今のところそういうことはないからいついているだけだと彼は考えている。

「ところでさ。昨日マンカスが怪我しただろう?」
「何?僕のせいだって言いたいのかい?」
「まさか。隣街のチンピラ軍団と一戦交えたんでしょ。今頃ランパス辺りが隣町に殴りこみに行ってるんじゃないかなあ。温和に収めてくれればいいけど無理だろうね。喧嘩っ早いのが売りだし」

困った売りだけどねえ、などと言ってスキンブルシャンクスは笑った。ミストフェリーズも何となくつられて笑った。

「うん、その方がいいよ」
「え?」
「笑ってる方がいいって言ったのさ。ねえ、ミスト」

 スキンブルシャンクスの目はいつになく優しく見えた。その柔らか光を湛えた眼から視線を逸らすことができずに、ミストフェリーズは何度か瞬いた。

「そろそろやめようよ」
「やめるって、何を?」
「そろそろ不幸ごっこやめないかい?」

 何を言うのだ。やめるもなにもそんなことはしていない。そう反駁しようとしてできないのはなぜか。瞠目する黒猫に、スキンブルシャンクスは淡々と話しかける。

「辛いとか悲しいとか理不尽だとかそんな過去ってみんな持ってるよ。親や友達を目の前で失ったとか、裏切られたとか、死ぬような目に遭ったとか、化け物扱いされたとかね。みんな悲しかったんだよ、いや、まだ悲しいのかもしれないね。まだ理不尽だと感じているかもしれない」
「何が言いたいのさ」
「あのね。どんな不幸であっても、それを受け止めるのって自分しかいないんだよ。どんなに不幸だって宣伝してみても、自分の周りが不幸になるわけじゃないんだ。不幸を撒きびしみたいに撒いたところで、誰かが踏んでも痛くなきゃそれで終わりさ。だから、君も不幸を撒くのはやめるんだね」
「そんなこと・・・」

するわけがない。いや、周りの目にはそう映っているのか。それとも、知らぬ間に不幸を振り撒くような言動をしていたのか。ミストフェリーズは結局言い返せずに口を閉じた。

「自分のこともっと好きになりなよ。自分にもっと誇りを持つんだ。君も誇り高い猫じゃないか。顔を上げて胸を張ってさ。この世界ってたぶん君が思ってるよりずっと楽しいよ。ね、ちょっとさっきのところからやり直してみようか」
「やり直す?」

スキンブルシャンクスはにこにこと笑って、そうだよと言った。全くよくわからない。

「ミスト。ほら、星がきれいじゃないか。仔猫たちは寝ているかなあ。かわいいよね、仔猫たちの寝顔」
「あ、うん、そうだね」

何を突然。そう思ったけれど、脳裏に浮かんだ仔猫たちの寝顔に自然と頬が緩む。

「いい夜だなあ。星もきれいで。ところでさ、ミスト。昨日マンカスが怪我したんだってね」
「そうらしいね。大丈夫かな。お見舞いに行こうか」

ああ、こういうことか。ミストフェリーズは思う。なぜかさっきとは違う言葉が口をついて出た。スキンブルシャンクスは満面の笑みを浮かべて頷いた。

「そうと決まればぐずぐずしている場合じゃないよ!」

スキンブルシャンクスは駈け出した。ミストフェリーズも軽く跳躍してその後を追った。人々が寝静まった町を駆け抜ける。
そんなある夜のお話。

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ちょっと長かったかも。
お題・・・まあ、かすってるってことで。



今になって

2008-10-26 19:09:42 | お題
 ようやく、ようやく知ることっておもしろいなあと思えます。日本史の話です。私、大学で日本史やってましたが日本史マニアってわけでもなく。それこそ、戦国時代なんかその辺の人の方がよっぽど詳しいのではないかと思うくらい。ほら、信長の野望とかってゲームとかあるじゃないですか。
 それでですね。まあ、興味はあるのですがそれほど知りたいと思っていなかったことが、最近は知ることが楽しくなっています。大学の時は読むのも厭になるくらいだった石母田正さんとか網野善彦さんの本がおもしろいです。やっぱり興味を持たないとどんな文章もただの文字列でしかないですからね。

本日は、選択制のお題を単発で。即興なんでどうなるか自分でもわかりません。今から書きます。お題は引き続き「コ・コ・コ」様より拝借しました。

そうそう。今日、初めて丸ビル行きました。お寿司おいしかった^^

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誰が隣に一緒にいるのか


 びょう、と冷たい風が唸る。
 暗く重い夜が街を覆っていた。

 今日は新月だったか。
 マンカストラップはただ茫然とそう思った。

 月の光は怪を呼び起こすという。かのマジシャン猫の言うところの、この世のものではないものたちが月の光に呼ばれるのか。はたまた、生ける者たちの内に巣くう邪な者が喚起されるのか。
 だとしたら。マンカストラップは考える。どうしてこれほど黒く闇の立ち込める月明かりのない夜に、自分は身に覚えのない言いがかりを付けられた上に、多勢に無勢の言葉そのままに殺気立った見知らぬ大勢の猫たちに囲まれなければならないのか。

「おい、ボケっとしてたら殴られんぞハゲ」
「はげてなどいるものか」

 突如、耳に飛び込んできた罵声。反射的に言い返しながらちらりと目をやれば、相手はニヤリと笑った。いつもの顔だ。マンカストラップは大きくため息をついた。

「仕方ないな。さっさと片付けて帰らないとバブが心配する」
「してねえよ。子供はおねんねの時間だぜ」

 マンカストラップは無言で構えた。相棒は、背中あわせになるようにして構えている。ざっと見て、いきり立っているよそ者は6・7匹程いるだろうか。

「多いな。面倒なことになったもんだ」
「ふん、面倒事はさっさと終わらせりゃあいい」
「簡単に言うもんだな」

 いつもの癖でぎゅっと眉を寄せたマンカストラップの背で、微かに笑う気配がした。

「何だ?」
「心配性だな、てめえも。知ってたけどな。おいお前、誰が隣にいると思ってんだよ」

 マンカストラップは思わず振り向こうとした。だが、途中で止めた。そしてフッと笑って言った。

「あいにく、隣には誰もいないようだ。背後にはいるようだがな。すっとび馬鹿が、一名ほど」
「ほう。言ってくれるじゃねえか減らず口め。覚えてろよ」
「でかい口叩いてるが、どうもさっきから酒臭い。酔いどれにこのチンピラどもを相手できるのか?」
「へっ、舐めんなよ」

 背中の男はおそらく胸を張った。そんなような動きがマンカストラップに伝わってくる。

「俺様は酔拳の名手だ。知らないたあ言わせねえぞ」
「知るか、馬鹿」

 ごく短く相手を罵倒して、マンカストラップは体勢を低くした。負けるわけはない。負ける気は全然しない。たぶん、背中を預けたのがこの男でなければもう少し悲観していたかもしれないけれど。
 脳裏で戦い方を一通り思い描く。そして、その逞しい脚で地を蹴り出した。

「そっちは任せるぞ、タガー!」

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最後のセリフっていろいろ迷ったんですけど。信頼してるぜ、という感じを出したかったけど力尽きました。制作時間は構想からはじめて55分くらい、というか構想にかかった時間がほとんど。マンカスとタガーのSSでした。時間のわりにくだらない。



レッズすら負けたし。

2008-10-23 09:30:23 | お題
 もはや西武を応援するしかない・・・かもしれない。中日と巨人の対戦に興味はないし。妹は今週末でひとやま越えそうなので、とりあえず来週あたりにはサイトに復活すると思います。

 で。「トブモノ3題」最終話です。ありきたりだけど運びが下手でろくでもない話に仕上がったもの。もはや書き直そうとも思えない。

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小鳥の泣き声


 赤く濡れた己の爪をそっと舐め、マキャヴィティは叢に丸くなった。少し冷たさの混じる風と日差しの暖かさが心地よい。

「誰か、いるのか」

 気配を感じる。さくりと、所々で枯れている草を踏む音が聞こえてくる。

「私も一緒にいいかしら」

 マキャヴィティは顔をあげ、緋色の目で声の主を見た。薄氷のような美しい水色の瞳あと目が合う。

「かまわん」

 低い声でぼそりとマキャヴィティが答える。白く美しい毛並みを持った小猫は微かに微笑んだ。

「狩ったの?」

傍に腰を下ろした白ネコ、ヴィクトリアは何でもないように問いかける。マキャヴィティは丸くなったまま、ああと呟いた。

「よくわかったな」
「ええ。小鳥たちの鳴き声がね、少し悲しそうだったから」
「そうか」

 今日の昼食は、どこにでもいる褐色の小鳥だった。最期を向かえ、またそれを見届けるけたたましい鳥たちの叫び声は嫌いではない。懸命に生きる者の魂の声。それを狩る己もまた懸命に生きている。生命の連環を厭でも感じるその一瞬が嫌いではないのだ。

「小鳥の泣き声が聞こえるの。きっとね、奪われたことが悲しくて寂しくて仕方無いのよ」

でもね、と言ってヴィクトリアは空を舞う鳥を見上げた。

「明日にはきっとまたさえずり歌っているのよ。そうでなきゃ生きていけないもの」
「そうだな」

 そう呟きながら、マキャヴィティの胸の奥は少し痛んだ。自分が傷つけたものの痛み。自分が殺めたものの苦しみ。それらを取り巻くものたちの悲しみ。憎しみ。

 悔いてもいる。
 悲しんでもいる。

 それでも、己の中にいる犯罪王は止まらない。

「ねえ、あなたは泣いてくれる?」

 そんな風に問いかけられて、マキャヴィティは身体を起こした。何を尋ねられているのかよくわからなかった。

「あなたは、私がいなくなってしまったら泣いてくれる?」

マキャヴィティは、ほんの少しだけ目を瞠った。いつもと同じように、微かな笑みを浮かべているヴィクトリアがいる。

「たぶんな」
「そう。よかったわ」

 口をついて出た答えは、考えて出したものではなくて。ただ本当にこぼれ出てしまった言葉だった。
 本当に泣くのだろうか。マキャヴィティは己に問いかけた。勿論、答えは出てこない。
 ただ、彼は思った。そんな時が来なければいいと。

 近くに佇む常緑樹の梢で小鳥が鳴いた。小さな命を失って、小鳥が泣いた。

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マキャヴィティとヴィクトリアというのは案外絡ませやすい。ああ、これでもヴィクは目の前の猫がマキャヴィティとは知らない設定です。


負けちゃいましたか。

2008-10-21 09:23:47 | お題
 残念だなあ、阪神。まあ、後半の戦い方見てて勝てる気があまりしなかったし、藤川投手で負けたのなら仕方ないよねえと思ってみたり。こうなれば西武を応援するか・・・埼玉に住んで一年半以上だし。でもなあ、地元は浦和レッズの応援はするが西武の応援はまるでしてない。所沢だもんな、遠いからかしら。

 で。とりあえずは「トブモノ3題」の第二弾。正直、あまりできが良くないのですが。いつもそんなに良くないですか、そうですか。あまり突っ込みを入れずに流してください。

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エナメルの羽根


棲みかに戻った黄色の小さなトラ猫は、今夜の戦利品を頭陀袋から引っ張り出した。
不思議な色の布だったり、ガラス細工のブタだったり。
ここに持ってきてしまえばがらくたになってしまうものばかり。
あるべき場所にあってこそ、それらは魅力的なのだ。

とまれ、そんな理屈は彼女らになんら関係はない。
彼女らにとって大事なのは、盗むという行為そのものなのだから。

「あ、羽だ。マンゴったら羽なんて盗んだのね」

青い美しい羽根。
そこいらにいる小鳥のものではないだろう。
真っ青な、空よりも青い鳥のものだ。

「ふうん、随分本物っぽいじゃない」
「さっそく見てるな、ランペル。それ、綺麗だろ」

温かいミルクを持ってきたマンゴジェリーがニカッと笑う。

「綺麗だけど何か不自然よ。なんでか生きものの一部だった感じがしない」
「言われてみりゃあそうだな」
「これはなんだか作りものっぽい。見た目とかは普通の羽なのに・・・」

いろいろな方向から手にした羽根を眺めるランペルティーザ。
もともと生きていたとは思えない。
堅そうで、温かみもなさそうな青い一枚の羽根。

「うーん。何かつやつやしてない?
 羽の光沢っていうよりどっちかって言うとガラスみたい。
 バストファさんの靴もこんな感じだったわ」
「おお、そういやあそんな感じだな」

バストファジョーンズ氏が靴を履くわけではないので、
あれはただ彼のコレクションなのだろうが。
このガラスに似た光沢には覚えがあった。

「確か、エナメルとか言ってたなあ。それもエナメルかもな。
 今日の家はちったあでかかったし、凝ったもん置いてるかもしれないな」
「ふうん。エナメルって言うんだ」

随分精巧に作られている。
もしかしたら、この光沢の内にあるのは本当の羽かもしれない。

「こんな羽じゃ飛べないね」
「それはそれでいいんじゃないか。
 それはもう飛ぶ必要もない、ただの飾りさ」

マンゴジェリーは黄色の相棒に暖かなミルクのカップを手渡した。
こくんと喉を鳴らしてミルクを少し飲みこんで、
ランペルティーザは片手にあった羽を戦利品の山の上に置いた。

「あれは綺麗だけど、綺麗なだけね。ガラス細工と同じ。
 本物の羽だったら、その持ち主想像したりお腹すいたりするけど
 その羽根にはそんな魅力はないもの」
「ああ、これは細工物なんだ。本物じゃない。
 エナメルの羽根だ。大空を飛ぶ青い鳥の羽じゃあない」
「あたしは本物がいいなあ。最近鳥も獲ってないし。
 そうだ、明日あのレストラン行こうよ」

骨付き肉を焼いている、駅に近いレストラン。
鳥の丸焼きがあるかもしれない。

「いいな、それ。そんじゃあ明日の昼にでもちょっくら下見に行くか」
「うん。絶対おいしいもの手に入れなきゃ」

目を輝かす泥棒猫たち。
エナメルの羽根のことなんてもう忘れている。
飛んでいる鳥の羽は美しい。
それは生命に溢れているから。
その生命は、彼らにとっての生きる糧かもしれないから。
彼らにとって真に美しいものは、生命の循環の中にあるものなのだ。

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エナメルは調べてみたけどよくわからなかった;マンゴとランペルの日常。

今年も波乱でしたか。

2008-10-19 19:23:30 | お題
 秋華賞の話です。賭けは嫌いだけど馬は好き。走ってる馬はとても美しいと思います。ブラックエンブレムなんて、女の子の名前にしてはいかついなあ(笑)

 それはさておき。妹が忙しいので、私が作品を作ってもHPにはあげてもらえないわけです。だからブログに投下します。隔日で今日から3本(「トブモノ3題」です)いってみます。3本合わせて総製作時間が3時間弱。短い文章なのに。題名を見てぱっと思い浮かべばいいんですけどねえ。

お題配布元は「コ・コ・コ」様。リンクはメニューのブックマークに貼っておきます。

では、本日は第一作目。
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鋼の翼


ごう、と空が鳴った。スキンブルシャンクスは歩みを止めて夜空を仰いだ。瞬く星々よりも煌びやかな光を纏い、鋼の塊が空を滑って行く。

「スキンブル、どうしたの?」
「何でもないよ、ジェミマ」

久々に街に戻ったスキンブルシャンクスが夜の散歩を楽しんでいるときに、教会から寝床に戻るところだというジェミマと出くわしたのだ。それから暫く、2匹はおしゃべりをしながらあてどなく街を歩いていた。

「何でもないのに空なんて見ないでしょ」
「いやあ、本当に何でもないことなんだけどなあ。ちょっとね、飛行機が飛んでたみたいだから何気なくね」
「ひこーき?」

ジェミマは小さく首を傾げた。

「ひこーきって鳥でもないのに空を飛ぶ人間の作った機械でしょ?ひこーきは夜も飛んでるの?夜だって目が見えるのね?」
「そうだね。僕の乗る夜行列車だって夜に走るよ」
「うーん・・・でもさあ、スキンブルの列車は地面を走ってるでしょ?私たちだって地面を走ってるし夜だって目は見えるじゃない。でも、空を飛ぶ鳥は夜は見えてないんでしょ?」

凄まじい理屈だ。スキンブルシャンクスは、そうだねと言って頷いた。

「うん、そうだね。きっと飛行機だって目は見えてないんだよ。でもね、考えてみてよジェミマ。薄暗い所で飛び回る蝙蝠たちはどうやって獲物をみつけるんだろう」
「え?うーんとね・・・うーん。どうしてなのかしら。見えてるわけじゃないわよねえ」

ジェミマは首をかしげつつ必死に考えている。蝙蝠は確か鳥ではないのだが、それはこの際どうでもいい。

「わかんないわ。スキンブルは知ってるの?」
「何故かっていうのは聞いたことはあるけど、僕にもいまいちわからない。でもね、飛行機が飛べるのも似たような能力かもしれないよ。見えないのに飛んで飛行機同士ぶつかっちゃったりしたら困るしね」
「よくわかんないけど、それもそうね。ねえ、飛行機ってどんな物なの?大きいの?」

空の向こうをただ飛んでゆく物。ジェミマにとってはそれだけの存在。時々、飛行機雲を残していくのはちょっとおもしろい。
空を飛ぶものは鳥だと思っていたジェミマに人間の作った空飛ぶ機械なのだと教えてくれたのはスキンブルシャンクスだった。

「飛行機は大きいよ。とっても大きい。でも、夜行列車の方が長いけどね」
「ふうん。あ、そうだ。空を飛ぶくらいだからひこーきにも羽があるの?」
「あるよ」

こんな形の、とスキンブルシャンクスは宙にナイフのような形を描いた。

「鋭い鋼の翼を持っているんだ」
「はがね?」
「そう。金属だよ。まあ、正確には鋼ではないんだろうけどね。そんなことは僕らが知る必要もないし。その翼はね、羽ばたくことはできないんだって」

三毛の少女の目はこぼれおちそうなくらい大きくなった。

「はばたかない翼なんてすごく変!人間って変わったもの作るのね」
「うん。すごいよね、羽ばたかない翼をもった金属の塊を飛ばすんだよ」
「それを発明した人間ってきっとすごく考えたのね。どうしたら飛べるんだろうって」

ジェミマはそう言って星をちりばめた夜空を見上げた。

「高い木に登ったら遠くまで見えるけど、ひこーきからは何が見えるのかしら」
「さあ、何が見えるんだろうね。見てみたいかい?」
「いいえ、見たくないわ。色々と想像するのが楽しいもの」
「それはいいね」

スキンブルシャンクスももう一度濃紺の空を仰いだ。人工的な煌めきはすでに見えなくなっている。

「ひこーきは大変ね、スキンブル」
「どうして?」
「だって。重くって不自由な翼つけて飛んでるんでしょ」
「うん。その分人間たちに労わってもらっているさ」
「だったらいいわ」

行こうか、とスキンブルシャンクスはジェミマを促した。ジェミマは頷いて、並んで歩き始める。
ごう、と微かに音がする。今度はスキンブルシャンクスも足を止めない。夜の空を、今日もまた鋼の翼をもった働き者が飛んでゆく。

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 単なるSSなのに長いですね、だってまとまらないんですもん。スキンブルシャンクスとジェミマで飛行機の話でした。