映画食い倒れ。

~映画は人生のデザートです~

個人的覚え書きのため、たまにネタばれありです。

『イン・ハー・シューズ ~In Her Shoes~』

2009年01月14日 | 映画~あ~
2005年 アメリカ映画

キャメロン・ディアスとトニー・コレット主演のドラマです。トニー・コレットは製作総指揮も兼任しています。監督も女性のようで、女性特有の目線で丁寧に描かれた映画だと思います。


正反対の性格、キャリア、スタイルを持った姉妹二人の関係を軸に、家族との関係を描いた作品。内容は軽い感じのものではありませんが、映画全体の色彩やキャスティング、物語の進め方により過剰な重圧感はあまり感じません。だからといって派手な映画でもありません。コメディーのはじけるようなテンポや笑いや、アクションや映像などの「ごまかし」がない分、俳優陣の演技力が試される作品といえると思います。


好きで何度も見てる映画って、感想を書くの難しいわ。1度見ただけなら印象に残った箇所について書けばいいのだけど、何度も見ているといろんなところが見えてきて絞りきれないのね。・・・まぁ言い訳はこのくらいにして。


トニー・コレットは『リトル・ミス・サンシャイン』のお母さん役もやっていたんだけど、もう全然違うのね。確かに同じ顔なんだけど、別人に見えるの。完全に。同僚(マーク・フェゥアスタイン)に食事に誘われても、もう本当に仕事以外のことに興味がなくて、その断り方も「興味のなさ」がばればれで、かなりきつい態度なのよね。そしてその自分の態度のきつさに自分は気がついていない・・・というところまで、見事に表現しているのよ。自分の容姿に自信がなくて、美人の妹にどこか引け目を感じている姉。仕事と彼との不倫とご褒美の靴。彼女の視界に入ってくるのはそれだけ。だから職場の人たちの自分への目線や同僚からの好意にも全然気がつかない。ある意味幸せなような気もするわ。そのくらい周りが見えなくなれるというのは。もしかしたら、それ以外を見ないようにしているのかもしれないけど。


演じる役柄だけでなく、女優として抱く印象もとても対照的な2人なのだけど、この映画の中では2人ともとても抑えた演技をしていてその技術の高さに驚きました。コメディーのように喜怒哀楽を大きな表情の変化やわかりやすい動作であらわすのではなく。同じ「悲しさ」でもその悲しみの深さの1mmの違いを表現しきっているような。「喜」から「怒」という感情の変化や違いではなく、同じ「喜」ならその感情の中での度合いというか。特にキャメロン・ディアスのこういう表現に驚かされました。

『ギャング・オブ・ニューヨーク』のときもダニエル・デイ・ルイスに引けをとらない演技力の高さは感じたけど、コメディーのイメージが強いから、余計に驚きだったのね。


「自分に自信が持てないから」、仕事に没頭してその心の溝を埋めようとした姉と、「自分に自信が持てないから」、その時々の楽しさや快楽で心の溝を埋めようとした妹。そして2人が抱えているトラウマには共通の理由があって、それが晴れていくと同時に彼女たちの表情や態度、服装や話し方まで変わっていく。『プリティー・ウーマン』見たいな強引なのではなく、本当に穏やかに地味に、でも確実によい方向に。



ローズが「弁護士」という肩書きを捨て、事務所の外の人たちと交流を持つようになり、いつもスーツだったのがカジュアルな服装になって行き顔つきまで変わっていく姿、なんだかすがすがしい気持ちになります。肩の力が抜けたと言うか。別に弁護士としてがんばっているのが悪いということでは決してないのだけど、のびのびしている彼女の姿が見ているこちらの気持ちまで心を軽くしてくれます。これ、どんな環境であれ日本で働いた経験のある女性なら共感できるんじゃないかな。

派手な映画ではないけれど素敵な場面がちりばめられた、そして丁寧に作られた映画だと思います。その割りにキャメロンの水着姿はしっかり(?)あってちょっと笑えるけど。かなり女性的な視点が色濃く反映された映画なので、男性には物足りない感もあるかもしれませんが素敵な映画です。



おすすめ度:☆☆☆☆


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