ピアノ連弾 2台ピアノの世界

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ブレストの軍人と作家と音楽家

2011-05-28 15:44:42 | 音楽

このところ現代企画室から出されている「越境の文学・文学の越境」シリーズの書籍をまとめて読んでいます。アフリカや中南米の作家の作品やこれまでにあまり翻訳されなかった欧州の作家の作品などが出版されています。

その中の1冊。書名も非常に興味深いヴィクトル・セガレンの「〈エグゾティスム〉に関する試論/覊旅(きりょ)」は作者のクラシック音楽への造詣の深さとドビュッシーとの関わりが文章の解説に書かれていて驚きました。セガレンと作品に関してはここでは詳しく書いても仕方ないのでこちらをご覧ください。
ヴィクトル・セガレン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%82%AC%E3%83%AC%E3%83%B3

セガレンの生まれたブレストは私たちが今も連絡を取っているアレクサンドル・タンスマンのご令嬢ミレーユさんとマリアンヌさんの母親コレット・クラとコレットの父親である軍人で作曲家のジャン・クラの出身地です。(震災の際は「テレビのニュースを見ながら心を痛めています」とメールをいただきました。)セガレンもジャン・クラと同じようにブレストの人らしく軍人を目指したのですが、近眼の為、断念して軍医を志します。しかし、音楽もきちんと勉強して作曲もしています。「べレアスとロザリンド」に感激したセガレンはドビュッシーと面会しオペラの共同製作に取り組んだそうです。結局実現はしませんでしたが、セガレンが中国に滞在中もドビュッシーと何度も新作オペラについてやりとりをした手紙が残されているそうです。ブレストの気質と音楽を愛する風土がこの逸話からもよく理解できます。

音楽の書物のなかではドビュッシーとセガレンの関わりについてこれまでに目にしたことがなかったので非常に新鮮な逸話でした。1878年と1879年生まれで一歳しか違わないセガレンとジャン・クラの邂逅については残念ながらこの書物の中では触れられていません。この二人が音楽についてなにかやりとりをしていたとしたら、それも非常に興味深いものでしょう。ジャン・クラは軍人の道を歩き、軍艦にピアノを持ちこんで作曲をしていたほどの人ですから、文筆業を主とするようになったセガレンとは接点はなかったかもしれません。

いずれにしても、フランス人からみた当時の中国の様子を知るために読み進めた書籍ではありましたが、ドビュッシーだけでなく、当時のあらゆる文化人の名前が出てきます。ドビュッシーや当時の西欧人の東洋への強い憧憬が伺われて理解が進む貴重な作品です。興味のある方は是非ご一読ください。

私たちのホームページです。
http://www16.ocn.ne.jp/~pccpiano/

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http://www.musse.jp/scores/detail/PTNA-010228

 

チェルニー 2台のピアノのための速度練習曲(40番練習曲) Op.299b
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