京都 洛北の時計師 修理日記

時計修理工房「ヌーベル・パスティーシュ」京都の洛北に展開する時計修理物語。
夜久野高原で営業再開しました。

時計師の京都時間「京の回転率2」

2017-09-05 09:53:36 | 時計修理

9月5日火曜日。今日は朝から大掃除。
トヨタ系の末端企業時代が長かったので在庫管理に強迫神経症のようなトラウマがある。
商品を仕入れて6か月売れなかったら処分していく手法を叩きこまれました。

自動車の回転率をそのまま回転率の低い年4回転がやっとの時計業界にそっくり持ち込むから大変だ。
今年の3月仕入れた新製品があっという間に9月を迎える。
即在庫セールで処分することになるので時計師にはめまいがするようなあわただしさなのだ。

自動車メーカーのお客から受注して作り始めるシステムと比較されると理不尽な要求だということは素人でもわかる。
ところが泣く子と親会社には勝てないのでしかたなく9月は在庫セールに入る。
特をするのはお客様なのだ。時計マニアは価格に敏感に反応する。
またカタログ落ちの商品も同じように処分するので9月に入るとお客さんが教えてくれることも多い。
9月は時計がお買い得なのです。そっと教えます。

ところが工具、材料まで回転率を要求されると時計師は仕事ができなくなる。ちなみにグッチの裏蓋を開ける特殊工具など1年以上使わないものもなど当たり前の業種です。回転率は無視される。
京都の伝統工芸士の皆さんも回転率の意識のない人が多い。むしろ江戸時代から一度も使っていない工具など自慢の部類です。
工具も100年たつと神様になるのが京都。九十九神です。

昨年まで古い京町屋に住んでいました。
二条城の大政奉還から150年。大火災の蛤御門後にたてられた上京区の京町家は築年不詳のものが多い。
私が住んでいた町家も築年不詳で9LDK・蔵、坪庭・座敷わらしも標準装備されていました。
応仁の乱の山名家屋敷跡に近いのでそれなりに旧住人も幽霊になって自由に出入りする開放的な家屋です。
蔵の中でチェロの演奏ができる。シッカリと防音室として使えます。
このような京町家大好き古いものにあこがれる私に回転率経営を持ち込まれるとうんざりします。
大組織なので一律標準化しないと統制が取れないのでしょう。トヨタ系子会社をあっさり辞めた理由は回転率でした。

写真はハミルトン。アメリカに住む日本人から昨年プレゼント。無事ご上洛されたピカピカの九十九神時計です。
コンディションは最高の状態。ユーザーからお抱え時計師として利用されているので長いお付き合いになりそうです。
明日は水曜日工房はお休み。午後からアイドリング開店します。5時までの営業ですがお急ぎのかたはご利用ください。


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