チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「チャイコフスキー『眠れる森の美女』#27/パ・ベリション」

2010年10月07日 00時52分45秒 | やっぱりリラだ! 百年経っても大丈夫
[Pas Berrichon/Le Petit Poucet, se freres et l'Ogre]
(パ・ベリション=Berry(ベリ)地方の踊り/
ル・プティ・プセ、セ・フルル・エ・ログル=親指小僧兄弟達と人食い鬼)

木こり夫婦の子の10人兄弟の末弟として生まれた子は、
生まれつき体が小さく、言動ものろまだったので、
「親指小僧」とあだ名されて疎外されてた。
飢饉で実入りが悪くなったとき、木こり夫婦は
「子捨て」をする。しかも、10人全部。ところが、
「親指小僧」の「機転」で兄弟全員が家に帰還してしまう。
貸掛金が回収されて大量の肉を買い込んで、
夫婦でのうのうとたらふく食ってる最中だった。が、
その肉が尽きるとまた夫婦は子供全員を捨てにいったのである。
今度は「親指小僧」の「機転」も運悪い方向にいってしまう。そして、
助けを求めに扉を叩いた家が「人食いオヤジ」の家だった。
絞められて食われるところを、また「親指小僧」の「機転」が救う。
自分達の頭巾を人食いオヤジ夫妻の娘達の王冠とすげ替えたのである。
暗い部屋に入ってきた人食いオヤジは
「被り物」に触って絞める対象を判別したのである。哀れにも
娘らは実の父に絞め殺される。舌骨は粉々だった、と
CSI・Berryの監察医は記録したことだろう。さて、
自分ら兄弟の命が助かるためには、年端もいかない娘らの命を
犠牲にしても何とも思わない「親指小僧」である。ともかくも、
夜中の間に家を抜け出して逃げた兄弟である。が、
朝起きて諮られて自分の娘らを殺したことに気づいた人食いオヤジは、
でっかい高速靴を履いて小僧らを追っかける。そして、
すぐに追っつくのである。が、またしても
小僧の機転で人食いを釘付けにして、その間に
その高速靴を履いて人食いの家にとって返し、
娘の死を嘆く母親に人食いに言づかったとウソをついて
金銀財宝のありったけを出させたのである。そうして、
大金持ちになった小僧兄弟らは両親の家に戻り、
幸せに暮らしましたとさ、という締めくくりと、
高速靴を履いてベリ地方治める王様のもとに行き、
派遣してる軍の状況をいち早く報告する代わりに
報酬をもらう約束をして金持ちになったとさ、という結末と、
どちらかだった、という、いずれにしても、
トンデモない筋立てである。

ペロはこの話に次のような教訓を充てる。
1)子だくさんだからといって苦労するばかりでもない
2)あてにならないと思ってた子が往々にしてもっとも役に立ったりする

[Allegro vivo、2/4拍子、3♯(イ長調)]
巷の演奏は遅すぎる。チャイコフスキーが
「4分音符を分母に置いた拍子で]Allegro vivoと指示したら、それは、
4分音符=144程度の速度を意味するのである。
ピッコロ+そのオクターヴ下のフルート2管+そのまたオクターヴ下のオーボエ2管がffで、
****♪ソ<ラ>ソ<ラ・>ソ<ラ>ソ<ラ│>ソ<ラ>ソ<ラ・>ソー●●(フェルマータ)♪
と吹き、vnプリーモ+そのオクターヴ下のvnセコンドがfで、
****♪ファーーー・ーーーー│ーーーー・>ミー●●(フェルマータ)♪
と弾き、クラリネット2管+ヴィオーラのユニゾンがfで、
****♪♭シ<Nシ<ド<♭レー・>♭シ<Nシ<ド<♭レー│
   >♭シ<Nシ<ド<(N)レー・>ドー●●(フェルマータ)♪
とうなり声をあげる。そして、
チャイコフスキーの音楽にときどき出てくる、
1音ずつ担当楽器を替えて繰り出される接続句が現れる。
****♪ドーーー│<ラーーー、・<♯ファーーー│<レーーー、・>(N)ファーーー│
   >ドーーー、・>ソーーー│>ドー>ソー、・>ドーーー│
   <ラーーー、・<♯ファーーー│<レーーー、・>(N)ファーーー│
   >ドーーー、・>ソーーー│>ドー>ソー♪
そして、主要主題がピッコロ+そのオクターヴ下のvnプリーモによって奏される。
****♪ドーッ<レーッ│<ミー>レ>ド>シ・>ラー、<ド>シ>ラ│
   >ソー>♯ファー、<ソーッ<ラーッ│<ド>シ>ラッ>ソッ・<シ>ラ>ソッ>ファッ♪
****♪ソー・>ファーー>ミ│>レーー、>ド・>シ>ラッ>ソッ>ファッ│
   >ミーッ、<ミーッ・>レ>ド>シッ>ラッ│>ソーッ<ミーッ・>レ>ドッ>シッ>ラッ│
   >ソーッ♪
木管群が平行調の嬰ヘ短調、次いでロ短調でmfで経過句を吹奏し、
それを受け継いだ弦がffでロ短調からイ長調に立て直し、
主要主題後半をスル・ポンティチェッロ(駒近くで)のスタッカートで再現する。と、
突然、fffで木管群が[(g>)f](ト音の前打附きヘ音)をがなり立てる。
対して、弦群は[es](変ホ音)という、イ長調の主音とはもっとも疎遠な
増4度の関係の音を切分で奏する。ゲネラル・パオゼ。
[Coda]
となり、主要主題の変型が16分音符の連続で奏されるが、
ティンパニが****♪ド<ソ>ドー・●●●●♪という打撃を3度繰り出す。
終いはイ長調の主和音で締められる。ちなみに、
チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」において「イ長調」は、
第1幕で成人したオロル姫が登場して調が確定する場面で使われ、
この第3幕の次曲の「パ・ドゥ・ドゥ」のオロル姫のヴァリアスィヨンで踊られる。

このベリ州はもともとはフランス王家の領地ではなく、
独立したベリ公爵領だった。その領民は、
カエサルの「ガリア戦記」にも登場する
ビトリゲス・クビというガリア人である。ともあれ、ベリ公ジャン1世は
美術品・工芸品・財宝などの収集に貪欲だった。ために、
その領民に重税を課したという。
飢饉のときに領民は領主の
貴金属狂いに苦しめられ、ビトゥリゲス・
クビがまわらなくなったのである。それが、
「親指小僧兄弟(=領民)と人食い鬼(=領主)」
という話では、ベリ公は
「貧乏人は苺を食え」(The poor, eat berries!)
と言ったかいわなかったかは知らないが、ともかくそんな言葉には
一語もfraise(触れず)に、
寓意が込められてるのである。
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