チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「ボクシングと鼻血と花の都フィレンツェ式のキス」

2014年05月13日 17時48分40秒 | 語彙の歴史観・ロック、ゴウゴウ
オトナになってからは漫画の類にまったく興味がない私だが、
このところ「美味しんぼ」とかいう漫画の中で、
前双葉町長が被曝のせいで鼻血が出てる、
という悪意に満ちたウソを撒き散らしてるらしいことは
耳に入ってくる。

美味しんぼといえば、
ネット投票がなかった時代に私は、
土曜開催のJRAの馬券を
"黄色い礼拝堂"と私が名付けた
後楽園の場外馬券場に買いにいってた。
そこにお布施をして、
JRAの詔を正しく理解してるかどうかの
判定を待ったのである。それが
馬券という名の護符の正しい購入である。ともあれ、
自分の理解が間違ってた場合には、結果として
多額の寄附を黄色い礼拝堂にすることになって
昼飯はウィンズの安いカツカレーですませた。対して、
理解が正しく、購入した護符の金額より
多い配当をもらえることがあった場合には、
後楽園飯店で豪勢なランチを食った。

旧後楽園球場の"ジャンボスタンド"のような
最上階の席のことを、アメリカでは、
"nosebleed section(nosebleed seats)"(鼻血席)
という。これは、
"あまりにも地上(床上)から高い位置にある安い席なので、
気圧が低すぎて毛細血管が拡張して
破れやすくなって鼻血が出てしまう"
という、わざと非科学的な論法でその席の人らを
バカにした蔑称である。そうした
"わけ"を知らないでただ
"nosebleed seats"
という言葉に出くわしたら、
大相撲でいう"砂かぶり"のように、
対戦者らの汗や血が飛んでくる
格闘技のリングのリングサイドの席ではないかと
思ってしまうかもしれない。

今日は、
かつて15ラウンドで戦われてた時代の
プロウ・ボクスィングの世界ヘヴィ級チャンピオン、
Joe Louis(ジョウ・ルイス、1914-1981)の
生誕100年にあたる日である。同人は、
11年間25回連続防衛という記録を持つ。が、
引退後、カネのためにふたたびリングにあがって、
10試合ほど対戦した。最後は、
世界王座になる前のロッキー・マルスィアーノウ、
いわゆるロッキー・マルシアノの強烈なパンチに
その37歳の老体がロウプの外に叩き倒されて
二度とリングに戻らなかった。

私が高校生のときに河出書房から
「カサノヴァ回想録」(Giacomo Casanova(ジャーコモ・カザノーヴァ、1725-1798))
の選書判12巻が出た。新刊が出るたびに買って読んだ。
今は倉庫の奥深く眠ってて容易に取り出せないので
確かめようがないのだが、
ヴェネッツィア生まれのカザノヴァはガキの頃に鼻血がよく出てた、
という話が記憶に残ってる。
ムラーノ島の婆の"治療"を受けたけれどまったく利かなかった。結局、
カザノヴァ少年の鼻血の原因は
"God KNOWS(神のみぞ知る=誰にも判らない)"
だったのだが、
福島第一原発事故によるものでないことは確かである。
鼻血は治らなかったが、
カザノヴァ少年はその非科学的な妖術には惹かれた。そして、
長じては錬金術まで試す。ちなみに、
この「カサノヴァ回想録」でもうひとつ印象的だったのが、
"フィレンツェふうキス
(bacio alla fiorentina=バーチョ・アッラ・フィオレンティーナ
→bacio alla francese=バーチョ・アッラ・フランチェ-ゼ)"
である。舌と舌とを絡め合う、tongue to tongueの、
好きな者同士が互いに求め合いむさぼり合うキスである。が、
これは20世紀になってから、頬と頬を合わせる挨拶のキスではなく、
"baiser florentin(ベゼ・フロロンタン=フィレンツェ流のキス)"
とフランス人がイタリア人流のキスを呼んでたものが、
イギリス人がフランス人がしょっちゅうするものと誤解して
"french kiss"と呼んだことで、
日本では軽いキスのことと誤解されてしまってる。ともあれ、
カザノヴァの"フィレンツェ式キス"は、さらに、
女性の顎から頬を手で包んで舌対舌のバーチョに及ぶ、
という、熱いイタリア男(と女)がいかにもやりそうなキスなのである。
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