新卒連中の暴走にはだいぶ慣れていたはずだが、彼らがクラブのブレザーを作りたいと言い出した時は本当にびっくりした。大学生や社会人のチームが試合後などのフォーマルな集まりには、クラブ独自のワッペンを胸につけたブレザーを着こみ、そろいのネクタイをする。これには、チームの結束力を高めるという効果もある。何よりかっこいい。だから連中があこがれるのもわかる。だが待て。県の社会人リーグの一部や二部で活躍するチームならわかる。しかし、当時の我々はクラブ発足から一年も経っておらず、最下位のリーグ戦で、しかも一勝もしたことがないチームである。いまだにルールをよく理解していない奴も多い。そんな下手くそチームが試合後の懇親会でそろいのブレザー姿でのこのこ現れたら…なんという羞恥プレイか。
これには、自動車などのローンで苦しんでいる何人かの部員が反対した。しかし、チームの一体感を高めるという意見もよくわかるので、最終的にそろいのスタジアムジャンパーを作ることで話はまとまった。
次に出たのが夏合宿の話である。圧倒的多数が菅平高原に行きたいという。夏の菅平はラグビー選手のメッカとなる。多くの大学や社会人のチームがここで合宿するからだ。試合もできるようなラグビー場がいくつもある。しかし、彼らの言い分を聞いていると、どうしてもぬぐい切れない疑問が残る。ジャージやブレザーの時のそうだったが、チームを強くするためというより、同僚やガールフレンドに対して自慢の種にしたいだけなのではないかという疑問だ。しかし、他のチームと接して刺激を受けるのは良いことだと思えたので、最終的に私はこの提案に賛成した。
みんなの有給休暇を調整して三泊四日の合宿である。行きも帰りもバスをチャーターしたのだが、行きは遠足気分でわいわい、帰りはぐったりして誰も口を利かなかった。泊まったペンションには他の社会人チームも投宿していたのだが、彼らが夕食時に我々を見て「えらく老けた高校生だな」という感想を漏らしたらしい。とてもラグビーをやっているとは思えない我々の貧弱な身体を見て高校生のチームだと勘違いしたようだ。
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