初勝利は予想外の形でやってきた。というのは、相手チームは前年のリーグ戦で対戦したことがあり、こっぴどくやられていたからだ。チーム力が格段に離れているというわけでもないのだが、敵のナンバーエイトがとにかく巨漢で突進力があり、タックルされても容易に倒れない。ようやく止めたところで、うまくパスをされたりラックから展開されたり。数人がかりで男を倒しにかかっているので、球出しされたら数的にこちらが不利になるのは当然だ。
今回も、前半は昨年と同じ展開だった。このナンバーエイトに翻弄されて数トライを献上。しかし前回と違ったのは「抱きつきタックル」を実行したことだ。すなわち、熱々の恋人同士がべたべたに体を寄せ合って歩くように、相手の上半身、特に腕回りにしっかり抱きついてボールを自由にさせないようにするのだ。したがって、足にタックルする奴、腰にしがみつく奴、腕に抱きつく奴の最大三名でこのナンバーエイトの動きを止めるわけである。
最初はぎこちなかったが、前半の終わりごろになると要領をつかんで、それなりに機能するようになった。また、腰にタックルにいく奴があまりに必死にしがみつくので、敵軍ナンバーエイトのパンツがずり下がり、半ケツ状態になって危うくコンニチワになるところだった。ちなみに、現在はどうか知らないが、当時はサポーターなどは使用せず、パンツの下には何もつけていない。
このことに何か恐怖を感じたのか、後半になると明らかにナンバーエイトの勢いが弱まった。同時に前半のリードで我が軍を見くびったのか、相手チームにミスや反則が多発し、終盤には同点にまで追い上げることができた。最後は、相手のこぼれ球をキックしたらボールがゴールラインの上で止まるという幸運もあり、わが軍のウィングが相手に走り勝ってトライ。そしてノーサイドの笛。
初勝利である。
高校生のように泣いたりはしなかったが、皆で歓喜の大声をあげて勝利を味わった。
これに勢いづいて、その後の二試合でも勝利し、ついに来年には県の最下位リーグから脱出して一つ上の社会人リーグに加わることが決まった。