5月21日は、物理学者、アンドレイ・サハロフが生まれた日(1921年)だが、画家のアンリ・ルソーの誕生日でもある。
アンリ・ルソーの絵は、小学校のころから知っていた。熱帯的な、でも、およそこの世のものでない感じのファンタジックな絵で、強烈な魅力があった。
アンリ・ジュリアン・フェリックス・ルソーは、1844年、仏国マイエンヌのラヴァルで生まれた。父親は配管工で、貧しかったため、家計を助けるためにアンリは子どものころから働かされた。高校生だったとき、父親は負債を負い、家を差し押さえられ、両親は立ち退く羽目になり、アンリは途中から寄宿生となって高校に通った。
弁護士事務所勤務、4年間の軍隊勤務などをへて、彼は27歳のとき、パリ市の物品税徴収係となった。以後ずっと税関にの職員として勤めながら、日曜画家として絵画を描いては展示会に出品した。
49歳のとき、税関を退職して、絵に専念。「飢えたライオン」「眠るジプシー女」「蛇使いの女」「夢」などの傑作は退職後に描かれたものである。
1910年9月、肺炎のため、パリで没した。66歳だった。
自分はニューヨークのMoMA(ニューヨーク近代美術館)へ行くたび、あそこにある20世紀の名画の数々をじっくりながめてくるけれど、そのなかの一枚に、アンリ・ルソーの「眠るジプシー女」がある。
おそらくかなりの日本人が目にしたことのある絵柄だと思うけれど、夜の荒野に、肌の黒いジプシー女が眠っている。女のかたわらにはマンドリンのような弦楽器が置かれてある。大きなおすのライオンが女の上に鼻先を寄せて、女の匂いをかいでいる。夜空には白い月が浮かんでいる。という構図で、女もライオンも、布でこしらえた人形のようで、なんとも言えない童話的な味わいがある絵である。
ピカソやアポリネールは認めていたらしいが、ルソーが生前はあまり評価されていなかったというのは、とても不思議な気がする。一目瞭然の、圧倒的な存在感と魅力である。自分などは、見るたびに、
「ああ、個性とは、こういうものだなあ。」
とため息をついてしまう。なにもいらない。「こういうもの」がほしいのである。
(2014年5月21日)
●おすすめの電子書籍!
『ポエジー劇場 天使』(ぱぴろう)
絵画連作によるカラー絵本。いたずら好きな天使たちの生活ぶりを、詩情豊かな絵画で紹介。巻末にエッセイを収録。
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http://www.meikyosha.com
アンリ・ルソーの絵は、小学校のころから知っていた。熱帯的な、でも、およそこの世のものでない感じのファンタジックな絵で、強烈な魅力があった。
アンリ・ジュリアン・フェリックス・ルソーは、1844年、仏国マイエンヌのラヴァルで生まれた。父親は配管工で、貧しかったため、家計を助けるためにアンリは子どものころから働かされた。高校生だったとき、父親は負債を負い、家を差し押さえられ、両親は立ち退く羽目になり、アンリは途中から寄宿生となって高校に通った。
弁護士事務所勤務、4年間の軍隊勤務などをへて、彼は27歳のとき、パリ市の物品税徴収係となった。以後ずっと税関にの職員として勤めながら、日曜画家として絵画を描いては展示会に出品した。
49歳のとき、税関を退職して、絵に専念。「飢えたライオン」「眠るジプシー女」「蛇使いの女」「夢」などの傑作は退職後に描かれたものである。
1910年9月、肺炎のため、パリで没した。66歳だった。
自分はニューヨークのMoMA(ニューヨーク近代美術館)へ行くたび、あそこにある20世紀の名画の数々をじっくりながめてくるけれど、そのなかの一枚に、アンリ・ルソーの「眠るジプシー女」がある。
おそらくかなりの日本人が目にしたことのある絵柄だと思うけれど、夜の荒野に、肌の黒いジプシー女が眠っている。女のかたわらにはマンドリンのような弦楽器が置かれてある。大きなおすのライオンが女の上に鼻先を寄せて、女の匂いをかいでいる。夜空には白い月が浮かんでいる。という構図で、女もライオンも、布でこしらえた人形のようで、なんとも言えない童話的な味わいがある絵である。
ピカソやアポリネールは認めていたらしいが、ルソーが生前はあまり評価されていなかったというのは、とても不思議な気がする。一目瞭然の、圧倒的な存在感と魅力である。自分などは、見るたびに、
「ああ、個性とは、こういうものだなあ。」
とため息をついてしまう。なにもいらない。「こういうもの」がほしいのである。
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