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著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

2月27日・ラルフ・ネーダーの先見

2019-02-27 | 歴史と人生
2月27日は、『エデンの東』『怒りの葡萄』を書いた文豪スタインベックが生まれた日(1902年)だが、消費者運動の先駆ラルフ・ネーダーの誕生日でもある。

ラルフ・ネーダーは1934年、米国コネティカット州のウィンステッドで生まれた。両親はレバノンからの移民で、ギリシア正教会の門徒だった。アラビア語を離す両親は、ラルフたち子どもにレバノンのことわざや説話を伝え、ドル(金銭)で価値観を測らない独立独歩の姿勢を教えた。ラルフの父親は織物工場に勤めていたが、独立しパン屋兼レストランを興した。レストランの客たちと父親が、食料品に混ざった化学物質について話すのをラルフはそばで聞いて育った。
ラルフは名門プリンストン大学に進んだ。大学は彼に奨学金の資格をとるよう勧めたが、父親は奨学金はもっとそれを必要としている学生にいくべきだとして、これを断った。
ラルフはプリンストン大をへて、ハーバード大学のロースクールに入学。学生時代から消費者の安全についての論文を雑誌に投稿していた。24歳の年に同校を卒業した彼は、当時は合衆国に徴兵制があったため、6カ月間、米陸軍で兵役についた。
除隊後の25歳から、コネティカット州のハートフォードで弁護士として働きはじめた。
また、27歳から3年間、ハートフォード大学で歴史学の助教授も務めた後、合衆国労働長官だったダニエル・モイニハンに指名され、ワシントンDCで補佐官として働きだし、上院の自動車安全に関する委員会への助言もおこなった。
ネーダーは25歳のころから、自動車の安全性に関する論文を雑誌に発表していたが、彼の名を一躍高らしめたのは、彼が31歳のときに発表した本『どんな速度でも危険(Unsafe at Any Speed)』だった。本のなかで彼は、ゼネラルモーターズ傘下のシボレー社製の車種「コルヴェア」の欠陥を指摘し、メーカー側が安全に対する出費を惜しんでいると論じた。6人乗りスポーツタイプのコルヴェアは、サスペンションに問題があり、運転中に車体がスピンしやすく、横転する可能性が高いと指摘した。
ゼネラルモーターズ側は、探偵社を雇い、ネーダーの素行や経歴を調べ、電話を盗聴し、さらに売春婦を雇って彼に近づかせることまでして、ネーダーは信用できない人物だとの評判を立てようとしたが、逆にプライバシー侵害で訴えられ、賠償金を支払うはめになった。ゼネラルモーターズは、ネーダーに謝罪し、コルヴェアは生産中止となった。
この自動車業界告発は消費者たちを目覚めさせ、米国には多くの消費者運動家が誕生し、ネーダーも環境、福祉、健康、政治腐敗など、さまざまな市民運動にかかわった。
ネーダーはまた、 共和党、民主党の二大政党に属さない、第三の候補として大統領選にしばしば出馬した。2000年の大統領選挙の際には、共和党ジョージ・W・ブッシュと民主党のアル・ゴアの接戦のなか、ゴア候補の票をネーダーが食う形となり、民主党陣営から非難を浴び、共和党側から歓迎された。選挙では不正がおこなわれブッシュが当選した。
2004年のブッシュ政権の二期目の選挙、2008年のオバマが当選したときの選挙にもネーダーは出馬したが、いずれも0コンマ5パーセント程度の得票率で落選した。

ラルフ・ネーダーは、『沈黙の春』を書いて産業界の使用する化学物質の有害性を告発したレイチェル・カーソンと並び、産業界の負の面に人々の目を向けさせた偉人である。その先見性に脱帽する。
(2019年2月27日)


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