6月9日・レス・ポールの革命

6月9日は、女流推理作家パトリシア・コーンウェルが生まれた日(1956年)だが、ギタリストで発明家のレス・ポールの誕生日でもある。

レス・ポールは、1915年、米国ウィスコンシン州ワカシャーで生まれた。本名はレスター・ウィリアム・ポルスファス。ドイツ系で、母親は、資産家の一族出身だった。
彼の両親は、レスターが幼いころに離婚した。音楽好きのレスター少年は、8歳でハーモニカを始め、ピアノ、ギターも弾くようになった。十代前半で彼は、ギターを演奏しながらハーモニカーが吹ける、肩につけるハーモニカホルダーを発明。後にボブ・ディランや吉田拓郎が使うようになるものである。
13歳のとき、プロのカントリー・シンガーとしてクラブで演奏していたレスターは、17歳で高校をやめ、本格的にミュージシャンの道を歩みだした。当時すでに彼は、なかに空洞のないソリッドボディーのエレキギターを自作していた。
19歳のとき、イリノイ州シカゴへ移ったレスターは、カントリーやジャズのバンドに加わり、ラジオやクラブのショーで演奏し、21歳でトリオの一員として初のレコードを出した。そして「レス・ポール」と名乗るようになった。
第二次大戦末期の1945年、42歳のビング・クロスビーが歌い、30歳のレスがギターを弾くデュオで「It's Been a Long, Long Time」を発売。全米第一位になった。

レスは、彼は斬新なギターテクニックを考案する一方で、楽器や音楽機器の開発も手がけ、新型エレキギター、オーバーダビング、ディレイ効果を発明した。
33歳のとき、彼は世界初のオーバーダビングで製作したレコードを発売。レコードはこのときから、一発録りでなく、音に音を重ねてレコーディングされるようになった。

レス・ポールが34歳のときに再婚した相手、メリー・フォードは歌手で、レスはこの再婚相手とコンビを組んだ。そして、彼が36歳のとき、彼ら夫婦の曲「How High the Moon」が全米ナンバーワンヒットになり、レスとメリーは、二人が主演するテレビ・ショーを7年間続けるほどの人気おしどり夫婦となった。
レス・ポールが37歳のとき、ギブソン社初のソリッドギター「レスポール」が、アンペックス社からレスが発明した世界初の8トラック・テープレコーダーが、相次いで発売された。これによって音楽業界は急激に変化しだした。
レスが38歳のとき、彼ら夫婦は「Vaya Con Dios」という全米ナンバーワンの世界的大ヒットを放った。しかし、そのころから、レスの発明品を手にした若者たちによる「ロックンロール」のブームが起こり、流行の波に押され、夫妻の人気はしだいに陰っていった。彼ら夫婦は、レスが49歳のときに離婚した。

レスは最晩年までニューヨークのジャズ・クラブで毎週ステージに立ちつづけた。彼のショーには、ポール・マッカートニー、キース・リチャーズ、ジョージ・ベンソン、ブライアン・メイなど、彼を尊敬する多くのアーティストがゲストとして駆けつけた。
2009年8月、レス・ポールは肺炎により、ニューヨークの入院先で没した。94歳だった。
レス・ポールはグラミー賞を5度受賞。「ロックの殿堂」と「発明家の殿堂」の両方に名前のある唯一の人物、音楽業界を変えた巨人である。
(2017年6月9日)



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