1日1話・話題の燃料

これを読めば今日の話題は準備OK。
著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

7/4・人気の革命家、ガリバルディ

2013-07-04 | 歴史と人生
7月4日は、アメリカ合衆国の独立記念日。米国は1776年のこの日、英国からの独立を宣言した。この7月4日は、人工雪を作った物理学者、中谷宇吉郎が生まれた日(1900年)だが、イタリア統一の英雄、ガリバルディの誕生日でもある。
自分はずっと以前、米国東部の町の公園で、屋外ステージで楽団が演奏している風景に出くわしたことがある。見ていると、やがて司会者が出てきて、こう言った。
「今日はガリバルディの生誕記念日ということで……」
それで自分は「ガリバルディって、よく知らないけど、米国で有名な人なんだ」と知った。後で調べたら、ものすごい人生を送った、とんでもない英雄だとわかった。

ジュゼッペ・ガリバルディは、1807年、フランス領のニースに生まれた。ガリバルディ一家は海運貿易を生業とする一族で、ジュゼッペも早くから船で働き、25歳のときには商船の船長になっていた。そして26歳で、祖国イタリア解放のための結社に参加した。
当時のイタリアは、国内的には小国分立の状態で、対外的には、北からオーストリアやプロシアが侵略の機会をうかがい、西からはフランスが攻めてきている状況だった。
ガリバルディは27歳のとき、北イタリアの反乱に参加したが、失敗し、南米ブラジルへ逃れた。そこで、ポルトガル系の牧童の娘、アニータ(アナ・リベイロ)と出会い、恋に落ちた。ガリバルディ32歳、アニータ18歳のときだった。3年後、二人は結婚する。
ガリバルディはウルグアイの独立戦争では、仏伊の義勇軍を率いてゲリラ戦を展開し、その勇名を上げた。彼の部隊は赤シャツを着用したところから「赤シャツ隊」と呼ばれた。馬術に長けたアニータは、ガリバルディの参謀となり、ともに戦った。
ガリバルディは41歳のとき、イタリアへもどり、祖国解放の革命に身を捧げた。圧倒的な兵力で寄せてくるナポレオン三世の軍隊を撃退し、ローマを守って、その名声は世界にとどろいたが、再度襲いかかってきた多国籍軍の前に敗走し、前線でともに戦っていたアニータはこのとき戦死した。まだ28歳になっていなかった。
敗走したガリバルディは、再起の時期を待ち、53歳のころ、南イタリアで起きた反乱に加勢するべく、彼は赤シャツ隊を率いてシチリア島に上陸した。めざましい勝利を続けて、シチリアを制し、海峡をわたってナポリに進軍し、南イタリアを配下におさめたガリバルディ陣営は、北イタリア側の王国と対峙するにいたった。敵は、ガリバルディの故郷ニースをフランスへ譲り渡した国であり、個人的な恨みもあった。イタリアを真っ二つに割る内戦が勃発する一触即発の危機だったが、ガリバルディは、北側の国王に会うと、自分の支配下にある領土をすべて国王に献上する旨を宣言し、配下の軍隊に呼びかけた。
「ここにイタリア国王がおられる」
こうして、私怨、私欲を捨てたガリバルディの英断によって、大衝突は回避され、ローマとヴェネチアを除くイタリア統一がひとまずなった。
その後も、ガリバルディの戦いは続いたが、晩年の彼は、世界的名声のなか、すべての叙勲や名誉職を辞退して、カプレーラ島の別荘で引退生活を送り、1882年6月、カプレーラ島の別荘で没した。74歳だった。

チェ・ゲバラもそのゲリラ戦術を参考にしたというガリバルディは、その卓越した統率力、戦術眼もさることながら、文字通り大西洋をまたにかけて、ふたつの大陸で、これだけ戦闘につぐ戦闘の人生を生きて、70歳すぎまで生きた、その生命力に驚かされる。
彼は祖国イタリアはもちろん、ブラジルでも、英国でも、どこへ行っても人気者で、やっぱり私心のない愛国者、自由主義者というのは世界共通で、みんなが好きなのである。
有利なのはどちらだろうかとか、どちらについたら結果的に得だろうとか、どうしたら自分の利益が増えるだろうかとか、そんなことばかり考えている時代に生きていると、どうしても人間が小さくならざるを得ない。
(2013年7月4日)



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『7月生まれについて』(ぱぴろう)
ガリバルディ、カフカ、ロックフェラー、ヘルマン・ヘッセ、バーナード・ショー、フリーダ・カーロ、プルースト、ジャクリーン・ケネディ、黒沢清、谷崎潤一郎など7月誕生の31人の人物論。ブログの元になった、より詳しく深いオリジナル原稿版。7月生まれの存在意義とは。


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