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4月1日・若松孝二の味

2024-04-01 | 映画

エイプリル・フールの4月1日は、作家、ミラン・クンデラが生まれた日(1929年)だが、映画監督、若松孝二の誕生日でもある。

若松孝二は、1936年、宮城県の涌谷町で生まれた。本名は伊藤孝。
高校を2年生で中退し、上京。職人見習い、新聞配達、暴力団員のつかいっ走りなど職を転々とし、21歳のとき、ケンカざたで逮捕され、半年間を留置場ですごした。
テレビ映画の助監督をへて、27歳のとき、警官殺しのピンク映画「甘い罠」で映画監督デビュー。その後「激しい女たち」「おいろけ作戦」「犯された白衣」「秘花」「私は濡れている」「天使の恍惚」などを撮り「ピンク映画の黒澤明」と呼ばれた。
40歳で、大島渚監督の問題作「愛のコリーダ」をプロデュース。
46歳のころ一般映画に進出し、連続暴行魔を扱った「水のないプール」を発表。以後「エロティックな関係」「完全なる飼育 赤い殺意」「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」「キャタピラー」「海燕ホテル・ブルー」「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」「千年の愉楽」などを撮った後、2012年10月、タクシーにはねられ重症を負った5日後に没した。76歳だった。

若松監督の映画を、ずっと監督の名前を知らずに観ていた。それぞれの映画が扱っている事件性、テーマ性から、
「これは観ておかなくては」
と映画館へ足を運ぶ。すると、それが若松監督の作品なのだった。若松作品は、まず素材からして「そそる」のである。
若松作品を観終わった後はたいてい、重たい気持ちをひきずって映画館を後にする。「連合赤軍」「キャタピラー」「三島由紀夫」など、自分はいまでもときどき重苦しい気持ちで思いだす。夢を見てうなされる気持ちがする。でも、観て、よかったと思う。若松作品は「後を引く」。

映画解説者の淀川長治が言ったように、ヨーロッパ映画界ではフェリーニやヴィスコンティが「映画の神様」で、ゴダールやパゾリーニが「映画の悪魔」ならば、日本映画界で言えば「映画の神様」は黒澤明や山田洋次であり、「映画の悪魔」は大島渚や若松孝二ということになるだろう。若き日の若松を描いた映画に「止められるか、俺たちを」「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」がある。
若松孝二。映画を観た人の心に切りつけ、消えない傷を残す。そういう作品を作る、おそるべき監督だった。
(2024年4月1日)


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