1日1話・話題の燃料

これを読めば今日の話題は準備OK。
著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

9月8日・堀江謙一の冒険

2019-09-08 | スポーツ
9月8日は、作曲家ドヴォルザークが生まれた日(1841年)だが、冒険家のヨットマン、堀江謙一の誕生日でもある。

堀江謙一は、1938年、大阪で生まれた。父親は自動車部品工場の経営者だった。高校のヨット部に入部した謙一は、ヨットで米国へ渡ることを夢見るようになった。
高校卒業後は、父親の工場を手伝い、冒険の資金を貯めた。そうして全長6メートル弱の小型ヨット「マーメイド号」で、1962年5月、米国を目指し西宮港を出航した。パスポートがとれなかかっため、密出国だった。
同年1962年8月、マーメイド号は米国のサンフランシスコ湾に着いた。最初、得体の知れない不法入国者の出現に、米国側は警戒したが、堀江が日本からやってきた旨を告げると、一気に歓迎ムードとなり、この人類初の冒険を祝った。ヨットでの太平洋無寄港単独横断は、こうして成功した。23歳の日本人青年がなし遂げた快挙だった。その記録『太平洋ひとりぼっち』はベストセラーとなった。
その後も、堀江は、単独無寄港世界一周や、太陽電池を積んだソーラーボートや、アルミ缶リサイクルのソーラーパワーボートなどで太平洋横断するなどの冒険に挑戦した後、高校の校長となった(後、名誉校長)。

この堀江謙一や、三浦雄一郎、植村直己など、彼らがなぜ、そんな危険をおかして冒険に挑むのか、なかなかわからなかった。
けれど、最近になってようやく、自分なりに解釈するようになってきた。
おそらく、冒険家たちは、冒険に挑まずにはいられないのだろう。なにか困難なことに挑んでいないと、退屈で退屈で、自分がしなびて死んでしまうような気がするのにちがいない。それからまた「人間はここまでできるのだ」ということをやって見せたいのだ。そうやって人間の限界を、自分の肉体で押し広げたいのだろう。
彼らの冒険談を聞くと、「よくも、そんなことをするなあ」と半分あきれる。でも、やっぱり、人間、やってみなければわからない、と勇気づけられる。

堀江謙一はこんなことを言っている。
「ヨッティングの呼吸は、自然の猛威を、うまく避けるところにある。よくそんな理論を聞かされた。しかし、かわすとか、逃げるとか、これはウソだ。わたるということは、とにかく海との戦いである。」
この「自然、海」をつい「人生」と置き換えて読んでしまう。
(2019年9月8日)


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