1日1話・話題の燃料

これを読めば今日の話題は準備OK。
著書『芸術家たちの生涯』
『ほんとうのこと』
『ねむりの町』ほか

9月17日・ちあきなおみの情景

2018-09-17 | 音楽
9月17日は、歌人の正岡子規が生まれた日(慶応3年)だが、歌手、ちあきなおみの誕生日でもある。

ちあきなおみは、1947年、東京の板橋で生まれた。本名は、瀬川三恵子。3人姉妹の末娘で、小さいころからタップダンスを習い、5歳のときに日劇の舞台に立った。
その後、神奈川の藤沢、東京の大田区、新宿区などと引っ越しと転校を繰り返しながら成長した。
喫茶店やキャバレーで歌ったり、歌手の地方巡業についていって前座で歌ったりした後、19歳のころ、レコード会社のオーディションを受けたのをきっかけに、作曲家の家に通ってレッスンを受けるようになり、1年4カ月のレッスンの後、21歳のとき「雨に濡れた慕情」で歌手としてデビューした。
デビュー後は「四つのお願い」「X+Y=LOVE」などをヒットさせ、一躍人気歌手となった。
25歳のときに歌った「喝采」で日本レコード大賞を受賞。それ以後も「夜間飛行」「円舞曲」「矢切の渡し」などの名曲を歌った。
31歳のとき結婚した、彼女の個人事務所の社長兼マネージャーの夫と、45歳のとき死別。葬儀の際には、柩にすがりついて、
「わたしもいっしょに焼いて」
と泣いた。それを機に、芸能活動を休業し、メディアの表舞台にいっさい姿を見せなくなり、復帰を望む声が鳴りやまぬまま、現在にいたっている。
亡き夫は、俳優・宍戸錠の実弟である。

以前、ある週刊誌の記者が、亡き夫の墓参りにいく途中を待ち伏せして、隠遁生活を送るちあきなおみに突撃取材したという記事があった。彼女は当惑し、やめてくださいと逃げ去ったと書いてあったけれど、ジャーナリストの悲哀についてあらためて考えさせられた。

女性歌手のなかで、誰がいちばん歌がうまいか、ということを考えてみる。
考えているうちに、そういえば、歌うために生まれてきたような人が、ときどきいる、と思いだす。美空ひばり、松田聖子、エディット・ピアフ、ジャニス・ジョップリン……そして、ちあきなおみもそのなかに入ってくる一人である。もうこのレベルになると、優劣はつけづらい。義兄の宍戸錠は言った。
「ちあきの歌の上手さはハンパじゃないんだよ」

「喝采」「矢切の渡し」「黄昏のビギン」など、彼女の歌にはドラマ性があって、歌を聴くだけでその情景が頭に浮かび、物語が展開する。そういう独特の歌い方のできる希有な才能だった。そっとしておいてやりたいファン心理と、ぜひとも活動を再開してほしいファン心理と両方をくすぐってやまない歌姫である。
(2016年9月17日)



●おすすめの電子書籍!

『女性解放史人物事典 ──フェミニズムからヒューマニズムへ』(金原義明)
平易で楽しい「読むフェミニズム事典」。女性の選挙権の由来をさぐり、自由の未来を示す知的冒険。アン・ハッチンソン、メアリ・ウルストンクラフトからマドンナ、アンジェリーナ・ジョリーまで全五〇章。人物事項索引付き。フェミニズム研究の基礎図書。また女性史研究の可能性を見通す航海図。


●電子書籍は明鏡舎。
http://www.meikyosha.com


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする