た・たむ!

言の葉探しに野に出かけたら
         空のあお葉を牛が食む食む

いちご大福

2004年12月08日 | 食べ物
 いちご大福に驚きを覚えたのは、もうはるか昔になった。大福の中にいちご? 和菓子の中に果物? 白の中に赤? もちもちのなかにジューシー? 柔らかさの中にサクッ? この意外性と、意外性を超越して奇跡的に調和した醍醐味(だいごみ)は、世界に通用するはずだ。そう考えて、海外に売り出すことを本気で検討したこともある。
 しかし、その野望も、一知人に打ち明けたときの返答で、落ち葉のごとくいとも簡単に踏み砕かれてしまった。
 「ああ、いちご大福ですか」と彼女は答えた。「かつてオーストラリアの友人に食べさせたことがありますよ」
 何、そんな、オーストラリア人としては類まれな貴重な体験に恵まれた男がいるとは幸せ者め、してその男の反応は?
 「ううん」と彼女は首をひねった。「大して感動しませんでしたねえ」
 ────けっきょく、大福の中のいちごに意外性を見出すのは、大福の固定概念をすでに培った日本人に限るのである。大福そのものを食べたことのない外国人には、いちご大福のユニークさが伝わらないのだ。その上、餡(あん)の甘味は、チョコレートの甘味に慣れた外国人にはやはり不慣れらしい。なんか知らないけどいちご大福だって? いちごケーキと比べてそんなに美味しくないね、という感想を持たれてしまうのである。
 いちご大福──いや!──いちご大福の形式にとらわれまい。いちごと和菓子、果物と和菓子の出会いというコンセプトは、海の向こうを視野におき、さらにさらに改良を重ね、飛躍しなければならない。全世界に和菓子の国から甘い驚きを!

 今夜、久しぶりにいちご大福を食べながらそんなことを思った。それにしても、今夜のそれに入っていたいちごは、干し柿のようにしぼんで黒々としていた。保存料をどれだけ使っているのか、食べた後に妙な胸焼けがする。
 甘いものに対する作り手の姿勢がまだまだ甘い。世界はまだはるかに遠い。

 
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2004年12月06日 | 写真とことば
昔 乙女と太陽のあった国
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嫉妬

2004年12月04日 | Weblog
もし友が一人いたら救われる。

もし友が二人いたら、しかし、

そこに既にして、不和と派閥と権力闘争のひこばえが見出される。

人はかくも妬(ねた)み深い。

人はかくも妬(ねた)み深い。
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