オートバイで旅して観たモノの記録

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八鬼山越え③ 桜茶屋一里塚~九木峠

2022年05月21日 | 熊野古道
【目次 : 八鬼山越え】①序章, ②七曲がり, ③桜茶屋一里塚~九木峠, ④荒神堂~八鬼山峠, ⑤さくらの森広場, ⑥江戸道,十五朗茶屋まで, ⑦終章, ⑧エンドロール



 八鬼山峠道の難所,七曲がりは無事に通過したけれど,八鬼山峠まで上り坂がまだまだ続く.山頂に近づくにつれて,苔の緑がより一層深くなっていくような気がした.目の前に広がるのは,神秘的な緑色の世界だ.



 しばらくすると,桜茶屋一里塚のポイントに出る.一里塚とは,信長や秀吉が三十六町を一里として塚を築かせたのが始まりと言う.江戸時代になると,家康が全国に一里塚を築かせたそうだ.尾鷲地方では,一里塚に松と桜を植えたと言われている.



 桜の咲く頃に訪れたら,どんなにきれいなことだろうと思いを馳せる.ところで,尾鷲地方の一里には諸説あるようだが,だいたい4キロメートルが一里に相当するらしい.当時は一里塚が,旅人の目的地までの距離の目標や馬や籠の賃銭を支払う目安にされたという.



 この峠道を籠を担いで登るなんて,数百年前の事とは言え,ちょっと信じられない.史実として1700年代に紀州藩主の徳川宗直,徳川宗将,徳川重倫の3名が,それぞれ籠で八鬼山越えしたという記録が残っているそうだ.



 わたしはただ歩いて八鬼山を登っているだけだが,すでにもうほどよい疲労感に包まれている.とはいえ,ぐったりという訳でなく,普段あまり感じることのない心地のいい疲れが全身を駆け巡っているような感じだ.



 八鬼山峠道の標柱もようやく半分までたどり着く.それにしても,この辺りには,きれいな緑色の苔が辺り一面に繁茂している.山の北側に面しているので,日中でも陽が差し込むことはほとんどないようだ.



 道は次第に大きな巨岩の間を縫って歩いていくような格好になる.そして,道の先には,とても明るい光が差し込んでいる.山頂までは1キロメートルを切ったはずだが,山頂にたどり着くまでの間には九木峠や荒神堂があるはずだ.



 巨岩の急坂道を登り終えると,なんとも明るい雰囲気の九木峠にたどり着く.九木峠には,3つの道が交差している.以前行った展望の丘へ続く道と九鬼町へ降りて行く道,そして熊野古道の八鬼山山頂へ向かう道だ.九木峠では,とても爽やかな風が吹き抜けていた.ここで少しのんびり休憩してから,山頂へ向かうことにした.

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