釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

政治の劣化で命まで奪われて行く

2020-02-22 19:09:00 | 社会
昨夜の米国金市場のClosing Price は1オンス1643.56ドルで終えている。一方、昨日の日本の金価格は1g 6442円となった。これまでで米ドルでの最高金価格は、リーマン・ショック後の2011年の1オンス1896.50ドルである。そして日本円の方は、40年前の1980年の1g 6495円であった。日本円の最高価格に迫っているが、円とドル以外の通貨では多くがすでに現在金価格は最高となっている。いずれ遠からず金価格はさらに上昇して行くことになるだろう。歴史上価値が変わらないのが金である。金価格が上昇するのは、通貨の価値が下がるからである。現代のように中央銀行が際限なく通貨を印刷し続けることが出来るようになると、なおさら、金価格は上昇しやすくなる。現在、ドルでの金価格が上昇して来た上に、日本の新型コロナウイルス感染対策のまずさから、「円」が売られ、それこそほんものの(政府の意図的なものではない)円安となっているために、円での上昇は大きくなる。世界がはっきりと日本のウイルス対策に「NO」を表明した。そして、今では世界経済の要である中国経済の停滞が、世界経済に大きな打撃を与えることが見えて来たために、ドル指数が上昇する中での金価格の上昇と言う、これまでの流れとは異なった動きが出ている。先日、政府よりのTVで、米国疾病対策センターCDC、国立感染症研究所などの勤務経験があり、2003年の猛威を振るったSARSウイルス感染では、WHOコンサルタントとして、フィリピンで対応した高橋央(たかはし ひろ)医師が、乗船者をクルーズ船内に留めた措置については「失敗した」と指摘し、今回の日本の新型コロナウイルス感染は、日本全国で数千人単位で感染している可能性があること、潜伏期間に感染することから見て、8ヶ月で終息したSRASウイルス感染とは明らかに違い、終息には1~2年は掛かる可能性があること、東京オリンピックが、大規模感染の舞台になる恐れがあることなどを語った。(SARSウイルスは潜伏期間が短く、潜伏期間には感染しない)。昨日の東洋経済ONLINEは「「中国から見た日本」の感染対策が甘すぎる理由 日本人駐在員は帰国かとどまるか判断に迷う」と言う題の記事を載せている。中国に駐在する日本人から見ると、日本の対策が中国に比べあまりにも甘く、外務省や会社からの帰国指示に従うべきか迷っていると言う。ロシアは中国人の入国を禁じる決定をした。また米国は中国への渡航を禁じる決定をしている。日本では外出に特別な制限はなく、多くの人が集まることも制限されていない。感染が拡大することは避けられない。これ以上経済の悪化を招きたくないため、政府は意図的に大袈裟にならないよう過小評価して、大々的な対策を打とうとしない。それがまた、感染拡大を促進してもいる。NHKによれば、今日新たに確認された北海道の8人、千葉県2人、熊本県2人、和歌山県の1人を含め日本での感染者は、クルーズ船634人含めて、756人となっている。WHOによると、コロナウイルスによる肺炎は、一般に3つの段階を経て重症化する。第1段階がウイルスの複製で、第2段階は免疫の過剰反応、そして最後が肺の崩壊だ。もちろん、全ての人がそうなるのではなく、8割は軽症で済んでいる。しかし、重症で最後の段階まで行くと、肺には蜂の巣のようなたくさんの孔が開く。昨日、神奈川県の黒岩祐治知事は、神奈川県下の新型コロナウイルス感染者を受け入れている医療機関で、抗インフルエンザ薬「アビガン」の投与を認めるよう政府に要望書を提出したことを発表している。日本経済新聞は「中国国内では同様の成分を持つ医薬品に同ウイルスに対する効果が認められているという。」と書いている。女性セブン2020年3月5日号の「新型コロナ、厚労省が最新検査法を導入しない呆れた理由」で、医療ガバナンス研究所上昌広理事長は、2月18日からようやく政府が整えた最大1日3000件超の検査体制について、「スイスの製薬会社『ロシュ』が開発した遺伝子検査キットで、喉の粘膜をとればいいだけの簡単なものもすでに実用化されています。しかし、日本政府はなぜか頑なに導入していません。理由は、厚労省が検査方法を独自開発するために予算をつけ、公共事業にしたからです。最初からロシュの検査キットを使っていれば、クルーズ船の感染拡大をもう少し抑えられたかもしれません」と述べている。いずれにしろ、感染の拡大はもはや避けられず、いずれ渡航制限や外出制限まで行われるようになる可能性がある。たとえ感染しても8割は軽症である。かえって、インフルエンザ の方が確実に高熱に襲われる。むしろ高齢で何らかの病気を持っている人への感染を避ける必要がある。ともかく、早急に、インフルエンザ並に検査体制を充実させるべきだろう。

追記:厚生労働大臣が「アビガン」を「観察研究」の一環として、1カ所の医療機関で新型コロナウイルスに感染した人の治療に使い始めたことを発表した。「アビガン」はインフルエンザ用に200万人分が備蓄されている。多少の前進ではあるが、やはり一番の問題は検査キットである。

来週は都合でブログ更新が出来ないと思います


膨らんで来た椿の蕾

あまりにずさんな防疫体制

2020-02-21 19:20:09 | 社会
神戸大学岩田健太郎教授をクルーズ船から退去させた厚生労働副大臣は、クルーズ船の感染防止対策が十分である証明として、船内写真を自分のツイッターに掲示した。しかし、掲示された、船内の入り口を汚染と非汚染の二つに分けた写真を、岩田教授に批判されたためか、削除してしまっている。岩田教授は、二つの入り口の手前、写真撮影位置自体が汚染と非汚染の混ざっていることを示していると指摘した。そして、岩田教授の指摘通りに、船内の対策本部にいた厚生労働省の高級幹部二人が新たに感染している。英国のFinancial Timesは一昨日、「US warns against releasing Diamond Princess passengers in Japan(米国は日本でダイヤモンドプリンセスの乗客を解放することに対して警告する)」と題する記事を載せている。「Centers for Disease Control says those disembarking vessel pose ‘ongoing risk’(米国の疾病管理予防センターは、下船が「継続的なリスク」をもたらすと述べている)」と書いている。チャーター機で米国へ帰国した人で、14人が新型コロナウイルス感染陽性が判明したが、日本での検査では陰性であった。オーストラリアや他のアメリカの帰国者でも、日本では陰性反応だったのに新型コロナウイルスが帰国後に検出されたとして、英国The Guardianも、日本の検査は万全ではないと「Coronavirus: two Australians evacuated from Diamond Princess test positive in Darwin」と題する記事で批判的に書いている。米国メディアCNNも、今日、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」からアメリカ本土に帰国したアメリカ人で、ネブラスカ大学医療センターで検査を受けた13人中11人が陽性であったことを伝えている。米国では帰国者が複数の医療センターに分散して検査を受けている。海外メディアは、下船後に乗員乗客らを一定期間隔離していないことや、検査の陰性反応だけで判断しているのはリスクが高いと批判的である。クルーズ船と言う特殊な環境は、対応を誤れば、かえって感染を拡大させる。そして、まさにそれを日本政府はやってしまった。あまりにずさんな管理が明らかであり、海外が不安になり、批判的になるのも当然である。80代の日本人乗客2人が感染で亡くなった。この人たちへの対応経過を見ても、問題だらけである。発熱があっても1週間放置され、陽性反応が出た後も、すぐに有効性のある薬が使われず、人工呼吸器を付けた後になって、ようやく使われている。この種の薬もやはり早く使わなければ、効果は期待出来ない。クルーズ船乗客を早期に検査すべく、民間検査を利用すべきであった。早期に判別した上で、早く下船させ、出来るだけ分離隔離後、再検査を行う。長期に予防策の不十分な船に乗せておいたことが感染を拡大させた。感染拡大が激しい中国武漢からさえ国立感染症研究所へ検査キットが寄付されるほど、日本の感染予防対策がお粗末である。何故、日本政府はこれほどお粗末な対応をしているのか。クルーゼ船での感染者を早くからWHOにお金を出してまで、「その他」扱いしてもらったように、政府にはともかく感染者は出来るだけ少ない必要があったのだ。検査で次々に陽性者が出ては困るのだ。その気持ちが、しっかりした感染予防体制を作ることを妨げた。自分に不都合な事実は徹底的に抑え込み、見せ掛けだけの好調を維持するやり方を続けて来た現政権の典型的な対応とも言えるだろう。昨日、内閣府が景気の現状について「緩やかに回復している」と発表したのも、同じである。2019年10~12月期の実質国内総生産(GDP)成長率は年率6.3%もの大幅なマイナスであったにもかかわらずである。昨日記したように、今回のウイルスが遺伝子的に単一系統でないのであれば、もうすでに日本国内に広く感染している可能性がある。北海道では中富良野小学校に通う兄弟2人も感染が明かになっている。検査体制が不十分なために拡大がまだ確認出来ていないだけなのかも知れない。
ダイサギ

軽症の形ですでに蔓延しているのかも知れない

2020-02-20 19:11:38 | 科学
昨日のブログで記した神戸大学岩田健太郎教授のクルーズ船の惨状を訴えた動画は削除された。削除理由は、船内の衛生区画が整ったためと伝えられている。突然の削除のため、ネットでは政府からの圧力があったのでは、と疑われている。何しろ、岩田教授をクルーズ船から退去させたのが厚生労働副大臣である。本日、午前中のNHKの放送でさえ、災害派遣医療チーム「DMAT」の一員である医師の語る、船内のレストランに設けられたクリーンなはずの対策本部がクリーンではなかった事実を伝えている。感染防護装備をしっかり身に着けているはずの、その「DMAT」の一人までが感染してもいる。船内へ入った検疫官も厚生省職員も感染したのだ。このクルーズ船での感染はあまりにも異常であり、2名の死者が出たことで、さらに世界的にも注目されている。日本政府がいくらクルーズ船の感染者は「日本」ではなく「その他」だと主張しても、欧米メディアはしっかり日本としてカウントして報道している。従って、海外から見れば、中国に次いで日本が感染拡大しており、昨日、日本貿易会の中村邦晴会長が「インドなど中国以外の複数国で、現地のパートナー企業に日本からの出張を拒否される例が出てきた。」と述べたり、実際にも日本からの渡航を拒否した国がある。英国ロンドン市長選挙の候補者の一人などは、日本でのオリンピック開催は危険だから、ロンドンでオリンピックを、と訴えている。ともかく、日本政府はクルーズ船の感染防止対応のまずさで、間違いなく国際的な信用を失くした。ただ、感染の拡大は、クルーズ船対応とは関係なく今後国内で続いて行くだろう。ところで、川崎市に日本バイオデータと言う企業がある。「各種生物系データおよび情報の研究・解析」を行っている。この企業が、中国武漢、日本、台湾、米国のそれぞれの各都市で検出された新型コロナウイルス COVID-19 の遺伝子解析を行った。その結果がとても驚くべき結果である。新型コロナウイルスは日本にすでに「何度も」来ていた可能性が高いと言うのだ。しかも、日本各地の新型コロナウイルスに、それぞれ違う系統があり、いろいろな新型コロナウイルスが混在していると言うのだ。そして、日本と台湾と米国の新型コロナウイルスは「すべて異なる遺伝子」で、「共通の祖先体系」が見られない。ウイルス侵入がこれら3か国で独立して発生したことを示唆する。同社の論文は、同じく川崎市にあるMedicale Meccanica Inc.のホームページで公表されている。「Genome phylogenetic tree analyses revealed evidence that the severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 had been introduced to Taiwan, the United States, and Japan several times」。2019年の訪日観光客は3188万2000人で過去最高を記録した。中国からの観光客は959万4300人いた。政府は今年「訪日外国人観光客4000万人」を目標に掲げている。SARSウイルスの感染が問題となった2003年は、中国人観光客は44万8000人でしかなかった。中国で最初の新型コロナウイルス感染が報告された昨年12月から今年1月初旬までに100万人の中国観光客が来日している。昨日、著名な医学雑誌THE LANCETに「Statement in support of the scientists, public health professionals, and medical professionals of China combatting COVID-19」と題して、米国の公衆衛生研究者たち中心に、今回の新型コロナウイルスは自然界発生のウイルスであり、人為的なものではないとする声明が出されている。以前のブログでは、むしろ自然界ではありえないHIVウイルスと共通のタンパク質が見出されたと言う論文を紹介したが。いずれにしろ、日本バイオデータの解析が正しければ、すでに日本国内に予想以上の感染拡大が起きている可能性がある。しかし、それは単なる風邪や場合によってはインフルエンザとして治っている可能性がある。WHOによれば8割は軽症である。
福寿草

ウイルス「製造機」

2020-02-19 19:22:32 | 科学
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の新型コロナウイルス(COVID-19)感染者は542人となったが、3700人を超える乗客・乗員数を考えれば、極めて高い感染率であるが、これは当然の帰結でもある。政府は、3700人もの人たちを閉鎖空間である船の中に監禁したのである。いわば、船がウイルスにとっての培養器となったのだ。神戸大学医学研究科感染症内科岩田健太郎教授は、自身のツィッターで、「ダイヤモンド・プリンセスはCOVID-19製造機」と書いている。感染拡大を防ぐための対策を講じようと、乗船を希望したが、なかなか許可が降りず、ようやく許可されても1日で下船させられた。船内は「いくらCDCがないとはいえ、もうすこしマシかと思っていました。気を失いそうになるくらい愕然とし、20年以上の医者人生でこれくらい自分の感染リスクを強烈に感じたことはありません。アフリカのエボラ対策でも北京でSARSに立ち向かってたときもここまで恐くはありませんでした。DMAT気の毒です。」と書かれているほど酷い状態である。政府の許可があり、日本環境感染学会の調査チームの責任者として、乗船した岩手医科大学の櫻井滋教授は、乗客と乗員をクルーズ船内に留め置いたことについて「「大勢の人を収容できる巨大な検疫所が陸上にない以上適切な方法だった」と述べ、国内での感染を抑えるうえで適切な対応だったという見解を示し」たとNHKが報じているが、乗船時間はわずかだったようで、ろくに船に対しては対策も施していない。単に「専門家」として、政府の「対策」を追認する役割を担っただけである。そもそも日本には感染症に対する米国や中国のような、まさに専門家の実行組織がないこと自体がおかしいのだ。ところで、どのメディアも伝えないが、このクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」は、形式的には英国P&O社所有であるが、実際には、米国の世界最大のクルーズ客船の運航会社カーニバル・コーポレーションのプリンセス・クルーズに所属する客船であり、2004年に三菱重工業長崎造船所によって建造された。そして、カーニバル・コーポレーションはまさにカジノ運営で世界的によく知られた企業であり、無論、この「ダイヤモンド・プリンセス」にもカジノがあり、そこで感染を広げてもいた。今、メディアはこの船のカジノについては触れたくないのだろう。カジノを推進する首相に忖度しなければならないからだ。チャーター機で帰国した米国人14人が感染していた。この人たちは日本では陰性であった。つまり、乗船していた他の人たちでも、陰性と判断された後に、陽性になる可能性があると言うことだ。当然ではあるのだが。いずれにしろ、今後は日本列島でも感染がますます広がって行くだろう。以前のブログで少し触れたが、富山大学医学部白木公康教授と富士フイルム富山化学は共同研究でインフルエンザ治療薬を開発した。しかし、日本では、「新型インフルエンザが流行し他の薬が効かないと国が判断した場合に、厚生労働大臣の要請を受けて製造を開始するという特殊な承認」を受けた薬である。日本では、「日陰」扱いだが、ドイツやフランス、スペインでは、同じRNAウイルス感染であるエボラ出血熱の感染者に、この日本のインフルエンザ薬が使われた。この薬は中国の浙江海正薬業股份有限公司へもライセンス供与されており、中国の新浪公司が運営するメディアsina新聞中心の今月16日の「瑞德西韦等药物已初步显示良好临床疗效(リベクビルなどの薬物は、良好な臨床効果を示した)」と言う記事によれば、この日本の薬(アビガン)が人口1300万人で、香港に隣接する「アジアのシリコンバレー」と呼ばれる深圳市の70人以上の新型コロナウイルス感染者に対して使われ、有効性が認められている。中国名「法维拉韦」と言うこの薬は、大量生産が始まっており、このウイルスへの治療薬として使われるようだ。ウイルス治療薬は、正常な人の細胞へもダメージを与える場合があるため、どうしても、慎重に取り扱わねばならない側面がある。とは言え、日本には優秀な人材や薬剤・機材がある。しかし、それらを今回のような感染の広がりの中で、効率よく組織だって体制を作り上げる意思が政府にはない。
節分草

ウイルスは経済停滞をもたらす

2020-02-18 19:12:23 | 経済
1995年の日本の貿易では、輸出入総額で米国がトップであった。総額の25.2%が米国で、2位の中国7.4%を大きく引き離していた。しかし、以後、中国は少しづつ増えて行き、米国は1998年の27.8%をピークに以後は減少して行く。2007年についに逆転が生じ、中国17.7%、米国16.1%となる。2019年のデータはまだ出ていないが、2018年には、中国21.4%、米国14.9%となっている。2014年以後は3位が韓国、4位が台湾の順で、変わっていない。2009年以後は、アジアがほぼ半分を占めるようになっている。2002年から2003年にかけて、中国の広東省や香港を中心に広がったSARSコロナウイルス感染が問題となった頃は、中国はまだ世界のGDPの4%を占めるに過ぎなかった。しかし、その中国は今では世界のGDPの16%を占める世界第2の経済大国である。新型コロナウイルス感染が拡大している中国の状況は、SARSコロナウイルス感染の頃とは全く異なる。今では中国は世界の工場であるばかりではなく、世界にとって、巨大な市場でもある。その典型はApple社を見れば分かる。中国はiPhoneの製造を行っているだけでなく、その購入市場でもある。日本以上に世界中の自動車会社が進出し、その中国の工場で作った自動車が中国で売られている。つまり、中国は現在、作り手であると同時に買い手でもあるのだ。石油の消費は世界一である。中東の産油国にとっては最大のお得意である。米国が2018年から仕掛けた貿易戦争で、生産に支障が出る不安を抱えた企業の一部は、東南アジアへ工場を移転させた。米中間の貿易の一部合意がなされたが、このウイルスの感染拡大である。感染はまだまだ拡大するため、工場の生産には大きく影響が出る。中国経済の減速は不可避であり、当然、世界経済への波及も不可避である。米国中央銀行は短期資金調達市場へ毎日資金を供給し続けなければならない状態が続いているが、中国の中央銀行、人民銀行もまた、今月に入り、このウイルス感染による経済への影響を緩和しようと27兆円もの資金供給を行っている。無論、貸し付けとなる。さらに、先日には金利の引き下げも行った。米国にとって、中国は戦後の日本と同様である。自分に脅威となる存在であってはならないが、自分たちが投資を行え、利益を得られる存在ではあることである。バブル生まれる前に、日本は米国を脅かした。『ジャパン・アズ・ナンバーワンJapan as Number One: Lessons for America』は1979年に出た。そして、米国は1985年にプラザ合意を日本に飲ませて、大打撃を日本に与え、日本は後のバブル崩壊の道を辿った。中国共産党中央直属のニュースサイトである中国網(チャイナネット)は、2018年8月20日の記事で、「プラザ合意、日本による対応の教訓と経験」と題する記事を載せ、「その後の流れを見ると、為替への干渉は米国の貿易赤字問題を解消せず、為替が単なる「スケープゴート」だったことが分かる。また日本政府が情勢の変化に適切に対処できず、自国経済に深刻な結果をもたらした教訓については、学習に値する。」と書いている。ちょうど、米国が中国に対し貿易戦争を仕掛けた頃である。「米国の貿易バランスの乱れを根本的に解消できないが、米国政府は常に「スケープゴート」探しを繰り返す。」とある。現在の米国を脅かすのはもはや日本ではなく、中国である。特に最先端技術である5Gは絶対に譲れない。米国の対中貿易戦争の背景にはこうした米国の思惑がある。かと言って、中国が極端に落ち込むことも米国は望んでいない。今回のウイルス感染の中国国内での拡大で、中国経済が後退するのは間違いない。従って、米国も中国への貿易戦争はしばらくは手控えるだろう。中国経済の後退は、まさしく米国経済の後退でもある。中国経済の後退は日本経済にとっても痛手となる。すでに日本は昨年10月の消費税増税により、10~12月期の国内総生産GDPは年率にしてマイナス6.3%となっている。ウイルス感染は、すでに観光客の激減と言う形で、日本の経済の後退要因を追加させている。中国での感染拡大はまだ続き、日本の感染拡大はこれから本格的になって行くだろう。経済への打撃は予想以上に大きくなる可能性がある。まさにどこかでブラック・スワンが飛び立ちかねない。
愛染山

感染への自己防衛

2020-02-17 19:11:15 | 科学
米国滞在中の息子は、猛威を振るうインフルエンザに感染したが、治癒して、日本へ帰国予定である。しかし、周囲からは、今、日本に帰国して大丈夫かと心配されている。隔離された閉鎖空間に3000人も閉じ込めれば、その中で感染が広がるのは当たり前である。それを日本政府は堂々とやってしまった。そして、クルーズ船以外でも感染者が出た時点で、もはや国内での感染の拡大は避けられない。無症状や軽傷がいれば、なおである。感染した千葉県市川市の20代の男性は、JRの総武線と都営地下鉄の浅草線を利用して通勤していた。この男性だけで、感染の拡大は避けられない。国土交通省は、「国土交通政策研究 第100号」で、「通勤時の新型インフルエンザ対策 に関する調査研究(首都圏)」と言う論文を公表している。この研究では、国立感染症研究所感染症情報センターと警察大学校警察政策研究センターも協力しており、特に前者は、2008年に鉄道を介した新型インフレエンザ感染のシミュレーションを行っている。そのシミュレーションを見ると、海外で新型インフルエンザ に感染した人が、感染後3日目に、八王子に帰って来た想定になっている。そして、感染後5日目に出社する。この5日目の出社で、感染者は700人になり、10日目には12万人に拡大している。東洋経済が「東京圏を走る主要32路線をデータで徹底分析」した結果を見ると、総武線各駅停車の混雑率は197%で、東京メトロ東西線の199%に次ぐ混雑率である。そして、都営浅草線の方は129%と、混雑率の低い順の第3位となっている。それでも100%を超える混雑である。すでに国の組織がこうしたシミュレーションを行っているにもかかわらず、何も活用されていない。中国や米国は、良くも悪くも、全国に感染拡大を防止し、検査・治療体制を専門家がトップに立って行っている。しかし、日本は「専門家会議」と称して、政治家が専門家の意見を聞くだけの会でしかなく、検査や治療の全国的な体制は全く整備されていない。まさに「カオス」「無秩序」である。日本全国に感染が行き渡るのは時間の問題である。香港では、アパートの換気ダクトを介して感染した可能性が指摘されている。2月14日、米国のCDC疾病予防管理センターのロバート・レッドフィールドRobert Redfield所長は、「ウイルスは米国でも蔓延し、感染問題は今年中に終わらず、来年まで続くかもしれない」と警告している。2月11日の段階で、米国では全国11箇所の米軍基地を隔離施設として確保している。また、米国保健福祉省長官は、CNNTVで、米政府が中国だけでなく、日本やシンガポール、香港など、感染が拡大している中国以外のアジアからの外国人の入国も禁止する規制拡大を検討していることを伝えている。もはや、中国でも日本でも、日々の感染者数の増加は、あまり意味がなくなって来ている。英米の研究者が発表したように、この感染は世界規模で拡大して行くだろう。1人でも感染者がいれば、確実に感染はねずみ算式に拡大して行く。これは避けられない。特に、日本だと中国の一部都市のように、完全に近い外出禁止の処置は取れない。だからこそ、検査、隔離、治療の体制を全国的に早期に確立しなければならない。WHOに10億円も寄付する以前に、国内のこうした体制作りに国費を費やすべきであった。国はもはや頼れないので、個人で防御するしかない。ウイルスには、RNAウイルスとDNAウイルスがあるが、インフルエンザ、ノロ、SARS、MERS、エボラ、エイズなどは、みんなRNAウイルスに属している。そのため、インフルエンザ、エボラ、エイズなどの治療薬が今回の新型コロナウイルスにも効果があった例が報告されている。しかし、日本の現在までの国の姿勢を見ていると、重症者へのこうした治療薬の使用を簡単には認めない可能性がある。要するに、現場の裁量権を認めない。個人的にこうしたウイルス感染を少しでも防御するには、海藻類を食べることがいいようだ。今回のウイルス感染でも重症化では、「免疫の暴走」と称されるサイトカインストームCytokine stormが見られていて、このため、肺だけではなく、肝臓、腎臓、心臓など多臓器不全に陥り、命を落とす。ところが、2018年と2019年に出た米国の2つの論文では、海藻に含まれるフコイダンがサイトカインの発現を低下させることが明かにされている。また、日本だと岩のりとかトコロテンなどに含まれるグリフィスシンgriffithsinと言う成分が、C型肝炎ウイルス、SARSウイルス、H5N1高病原性鳥インフルエンザ、エボラウイルスなどからの感染を抑えたことから、米国保健福祉省自らこのグリフィスシンと言う成分の効能に対して特許(Anti-viral griffithsin compounds, compositions and methods of use)をとっている。つまり、岩のりやトコロテンなどのグリフィスシンという成分が、ウイルス感染そのものを抑制し、メカブやモズクなどの海藻に含まれるフコイダンは、サイトカインを抑制してサイトカインストームと言う最悪の重症化を防いでくれる可能性があると言うことである。フコイダンの含有量はモズクが優れているようだ。感染防止にはマスクは無効なので、手洗い・うがいを頻回に行い、十分な栄養と睡眠に注意し、先の海藻類を摂るようにする。
蠟梅(ろうばい)

格差も拡大し続けている

2020-02-15 19:18:26 | 経済
1789年に始まったフランス革命は、国王ルイ16世や王妃マリー・アントワネットを断頭台に送ったが、革命の遠因はすでにルイ15世の時代の国家債務にあった。欧州諸国間の争いや米国の独立戦争支援への巨費が積み増し、債務はさらに膨らんだ。封建制度下では、聖職者や貴族などの特権階級は税が免除されており、膨らんだ国家債務の負担は平民にかかって来た。そんなところへ農作物の不作による食糧難が重なれば、国民の不満は募るばかりであった。米国では、1960年以降の20年間に、上位5%と残りの95%の実質所得はほぼ同じ割合、年間約4パーセント増加した。しかし、1980年から2007年の間には、下位95%の実質所得は上位5%の半分しか増加しなかった。2008年の金融危機後は、上位1%が成長の95%の富を獲得した。ウォルマートの従業員のほとんどはフルタイム勤務には程遠いので、持ち帰る給料は貧困の閾値を大きく下回っている。ウォルマートは、従業員が毎年26億6000万ドルの政府貧困援助を受けている。こうして米国では、就労貧困と呼ばれる新しい地位を作り出している。米国では、大企業はすでにほとんど税金を払っておらず、富裕層は資産を海外のタックス・ヘブンへ移している。超低金利とマネー印刷が、この米国の極端な格差を生み出して来た。そして、それは今後も持続して行く。つまり、格差の拡大は一層進んで行くと言うことだ。投資家の一部ですら、こうした米国の状況に危機感を抱いている。状況はまさにフランス革命前夜を思い起こさせるからだ。国家債務は膨大に積み上がっているが、大企業や富裕層は税を払わない。中間層は落ちぶれ、政府と同じく債務を抱える。4000万人を超える人がフードスタンプ、政府の食糧支援に頼っている。こうした状況の中で、今年11月の大統領選挙が行われる。民主党は、貧困に喘ぐ人々に訴えかける戦略をとっている。いわゆる社会主義的な政策である。しかし、そうした政策を掲げる民主党候補者たちは、政策の財源を確保出来ていない。現代金融論MMTが主張される所以でもある。MMTは、自国通貨での政府債務である限り、政府は無限に国債発行可能だとする。こうした極論まで登場するほどに、米国の格差問題は深刻であり、一つ間違えば、まさにフランス革命並の社会の大混乱を招く恐れがある。中央銀行FRBには経済学の博士が700人もいる。当然、中央銀行もこの状況を熟知しているはずである。自らが行っている超低金利と再びの量的金融緩和が、格差を生み出していると分かっていても、表面上の現在の「平穏」を維持するためには、それを続けなければならない。そして、それがまたさらに格差を広げる。このジレンマから抜け出せなくなっている。日本も実態は変わらないのだが、メディアが伝えないため、なお、気付かれていない。大企業や富裕層は税を逃れ、資産をやはりタックス・ヘブンへ移している。日本は世界第3位の経済大国でありながら、7人に1人が貧困にあえぎ、母と子の一人親世帯では半数以上が貧困に苦しんでいる。日本の貧困率の高さは、G7中では米国に次いでワースト2位であり、一人親世帯の貧困ではOECD加盟国35カ国中ワースト1位である。年間122万円未満の可処分所得しかない相対的貧困層である。消費税増税はこうした人々の生活をさらに窮地に追いやる。いずれ避けられない経済の大きな後退では、こうした日米の格差問題は確実に表面化して来る。経済の大きな後退を前にしても、中央銀行はもはや打つ手が限られ、政府がさらに債務を拡大させるしか道は残されていない。問題はその時、資本主義市場がそれを許すかどうかだが、ここで、中央銀行が形ふり構わず、国債の引き受けをやるかも知れない。日本ではすでに姑息にそれをやっていることだし。経済大国が表立ってこれをやれば、特に米国がこれをやれば、間違いなくドルの価値を傷付けることになる。いずれにしろ、資本主義の在り方が大きく問われることになることだけは間違いないだろう。
ウォーキング中に出会ったツグミ

世界的な感染の広がりの可能性

2020-02-14 19:14:54 | 科学
やはりと言うか、危惧していた事態が現実になったようだ。もはや日本国内の感染の拡大は防げないだろう。武漢市や中国とはつながりのない日本人感染者が次々に出て来た。昨夜は日本では初めて80代の女性がこのウイルスが原因で亡くなっている。すでに国内で気付かれないうちに感染は拡大しており、今日は沖縄でも中国とは関係ない人が感染している。問題は、日本政府が体面やメンツに拘り、クルーズ船の封じ込めにのみ集中し、しかも、感染防御のイロハも無視して行ったために、むしろ不要な感染を広げてしまったことと、その間にも予想される国内での広がりに、何ら手を打っていないことである。恐らく、今後も全国的な広がりに発展して行くだろう。そして、いよいよ、日本でも中国の医療施設で見られたような光景が出現するかも知れない。検査も治療も全国的に可能な体制は全く出来ていないのだから。さらに、仮に検査が可能であっても、治療をどうするか現場で勝手に判断することが出来ないため、この点でも後手後手になる可能性があるだろう。まさに昨夜亡くなった女性がそうだったように。先月20日過ぎから不調を訴え、何軒かの病院を受診し、最後に行った病院で亡くなった後で新型コロナウイルス感染であることが判明している。検査が限られた医療施設でしか出来なければ、感染の拡大を防ぐことは厳しいだろう。政府は昨日、「経済的な影響を受けた中小企業への支援や国内検査体制の強化」のためとして、153億円の緊急対応策を発表している。ここでもまた、お友達企業優先にならないよう祈るばかりだ。自分で減額した感染症研究所の予算を、少しでも今後補うのだろうか。国家予算を使うことを決め、「躊躇なく実行する」と言っても、ただ闇雲にやればいいと言うわけではない。何よりも、感染症対策の経験を持つ人をトップに感染防御の体制を作らなければならない。それが今も曖昧である。掛け声だけで、実効性のないもので終わるように思える。つまり、感染が拡大して行く。下手をすると、オリンピックの時期まで広がりが抑えられない可能性も出て来る。ワクチンがあり、治療薬もあるインフルエンザですら、毎年1万人を死なせてしまう医療水準である。ほとんどのメディアはこのことを問題にしないが、慣れてしまって、当たり前のようにしか思われないのだろうか。亡くなる人の大半がまさに持病があり、免疫力の低下した人だから、注意を払われないのだろうか。それは今回の新型コロナウイルス感染でも同じなのだが。昨日のBloomberg日本版は「死者数は遅行指数、SARSよりインフルエンザと比較を-専門家」と題する記事で、「医療専門家は死亡率の推計に取り組んでいる。死者数を確認症例数で割った大まかな分析では、死亡率は約2%だ。診断未確定の軽い症例を含めれば1%近くに低下する。世界保健機関(WHO)のチーフサイエンティスト、スーミャ・スワミナサン氏は「検査を受けた患者の数が増えるにつれ、死亡率は日ごとに低下している」とインタビューで述べた。」と書かれている。仮に軽症を含めて、死亡率が1%だとすれば、クルーズ船乗船者やチャーター機帰国者以外に、日本国内でもすでに100人の感染者がいると言うことだろう。今日、中国の「国家卫生与健康委员会(国家衛生健康委員会)」が発表した「截至2月13日24时新型冠状病毒肺炎疫情最新情况(2月13日24:00時点での新型コロナウイルス肺炎の最新状況)」によると、確定患者数は63851人となり、死者は1380人となった。しかも、177984人の医学的観察が必要な人がいる。今日のBloombergの別の記事では、WHO世界保健機関の顧問でもある、米国フロリダ大学の感染症を統計・定量的に分析する研究所のアイラ・ロンジーニIra Longini所長が、「最終的な感染者数は数十億人に達する可能性がある」と述べている。「隔離措置は感染拡大を遅らせるかもしれないが、隔離前の時点で既にウイルスは中国内外に広がる機会があった」ため、「感染拡大を半分に抑えたとしても、世界のおよそ3分の1が感染することになる」と言う。中国以外での感染の広がりは、今のところ急激ではないが、まさしく水面下で確実に拡大しているだろう。無論、日本も含めてだ。
Mapping the Coronavirus Outbreak Across the World

ウイルス感染症の拡大は、微生物の均衡を乱したためかも知れない

2020-02-13 19:16:37 | 科学
中国湖北省政府は12日24:00時点の新型コロナウイルス感染者数は4万8206人、死亡者1310人となったことを公表した。感染者は世界全体で6万人を超えた。中国は現在、一部で仕事が開始されてはいるが、政府は80の大都市と2つの省、人口が4億人に相当する都市、地域を封鎖したままである。スーパーに食料などが並ぶ状態になったようだが、1日に1家族1名だけが食料などの調達目的で外出出来る。やはり今回のウイルスは無症状・軽症があり得るために、予想以上に感染が拡大していると思われる。ウイルス感染が発生した中国武漢市には、中国では初めてのセーフティレベル 4 (最高レベル)の病原体を扱うことが出来る中国科学院の武漢国家生物安全研究所、通称、武漢ウイルス研究所があるが、そこではコウモリに寄生するコロナウイルスが研究されており、世界的には注目を集めていた。所長は39歳の女性である。北京大学卒業後、米国コロラド大学へ留学し、武漢大学生命科学部の准教授となり、武漢ウイルス研究所所長に抜擢されている。しかし、昨年12月12日に感染が初めて報告されてから、感染の拡大が明かになると、政府は1月26日に、人民解放軍の女性少将にこの研究所を統括するよう命じた。この人民解放軍女性少将は、かって中国でSARSウイルス感染が拡大した時、 14000人以上の医療スタッフを全国に展開し、終息させたが、その際、医療スタッフを1名も感染させなかったことで、国際的にも非常に高く評価された科学者でもある。研究所を統括した上で、感染拡大防止のための指揮をも取らせている。すでに政府は、このウイルスとの戦いを「人民戦争」と呼び、非常事態としている。米国に拠点を置き、世界的に展開されているメディアThe Epoch Times、大紀元は、中国政府に対して批判的な立場をとる中華系メディアであるが、去る6日の「Scientific Puzzles Surrounding the Wuhan Novel Coronavirus (武漢コロナウイルスを取り巻く科学的パズル)」と題する記事で、調査データや論文から判明した情報として、感染した患者の多くで免疫細胞の数が減少していたことを報じており、白血球の減少によって免疫不全が起きて、重症の場合は肺炎から多臓器不全まで陥る場合があると述べている。以前のブログで触れたように、エイズ(HIV)由来のタンパク質が、この新型コロナウイルスに含まれていることを考えれば、当然なのかも知れない。感染は今後もさらに拡大して行くと思われる。いくつかすでに試されて有効であった治療法が、早く確かなものになればいいが。この中国のコロナウイルス感染と同時進行で拡大している米国のインフルエンザ感染も、やはり深刻である。米国の疾病管理予防センターCDCは、2017〜2018年の感染者数も深刻で4500万人と推定されたが、今季は、この数を上回ると予想されるとしている。もう一度強調したいが、インフルエンザ にはワクチンも治療薬もある。過去、ワクチンの配布は年々増加して来た。にもかかわらず、インフルエンザ の感染者数も年々拡大傾向にある。一体、何故なのだろう。米国ミシガン大学の伝染病の分子・臨床疫学センターの研究では、鼻と喉の常在菌がインフルエンザウイルスから我々を守ってくれていることが指摘されている。結局、微生物の世界にも均衡状態があり、それを人間自身が自ら壊しているのだろう。過剰な清潔さや抗生物質の多用などで、微生物の均衡を崩している。少し古いが、中国の科学技術を伝える「Science Portal China」の2011年10月19日の記事では、「抗生物質の乱用が中国人の健康に危害をもたらす」と題する記事が載せられた。「中国の1人あたり抗生物質使用量、米国の10倍」である。そして、「抗生物質を使う必要がないケースが8割」だと言う。また、華南師範大学環境研究所の2018年3月23日の「China must reduce antibiotic use」と題する論文でも、人1000人に対して使用された抗生物質の量は、米国の20倍にもなっている。抗生物質の乱用が、ウイルスへの抵抗力を弱めている側面があることも事実だろう。中国政府にとって、経済成長により国民に豊かさを実感させることが政権を維持するための基盤となる。そんな政府が、今、生産を止めてまで、総力戦でウイルス感染を抑えようとしている。それだけ、御しずらいウイルスだと言うことなのだろう。昨年、海洋調査船タラ号の調査した2009年から2013年の間の資料から、これまでは15000種ほどしか知られていなかった海洋のウイルスが19万5728種もいることが発表された。地球上には未知の微生物はまだ膨大にいるのだろう。そして、それらの病原性を研究する研究所も、修飾した微生物を生み出している。人類はこれからも何度も微生物との戦いに立ち向かわざるを得ないだろう。しかし、日本の体制はとてもお粗末だと言える。ロシア外務省のザハロワ報道官は、10日、日本政府のクルーズ船内の感染対策に対して、「正直言って、日本政府は我々が期待していたイノベーションの奇跡を発揮しなかった」、「カオスで無秩序、大いに疑問の余地がある」と語っている。クルーズ船には24人のロシア人が乗船している。すでにクルーズ船以外にも、国内で感染は間違いなく拡大しているだろう。
ワクチンは確実に増加して来た

何故感染が急増するのか?

「長期停滞」から脱することが出来るのだろうか

2020-02-12 19:15:49 | 経済
一昨日、国際通貨基金IMFは、日本の経済状況と今後の課題を分析した報告書を公表した。少子高齢化と人口減少が長期的なリスクであり、40年後のGDP国内総生産は25%低下する可能性がある、とする。社会保障費の増加は確実であり、さらなる財政悪化は避けられない。このため、2030年までに消費税率を今の10%から15%に、2050年までに20%に段階的に引き上げ、富裕層の資産に対する新たな課税制度を導入することを提案している。WHOにしろ、IMFにしろ、協力金を拠出した国へは「忖度」する。日本は米国と並んでIMFへは多額を拠出している。その上、財務省からはIMFへ人材が送られてもいる。消費税導入や消費税増税は、まさに財務省の悲願である。本来ならば、大企業や富裕層へ早期に課税していなければならなかった。それを怠ったことが現在の膨大な政府債務の積み上げの一因である。政治家は日本でも米国でも政治献金に弱く、大企業や富裕層への課税は難しい。結局は抵抗の少ない消費税に頼る形になる。しかし、財務省は日本の経済よりも国の財務に直接責任を負うため、消費税増税が経済を悪化させて来たことは、ほとんど無視する。総務省が7日発表した家計調査では、2019年12月の消費支出(2人以上の世帯)は物価変動を除いた実質ベースで前年同月比4.8%減で、3カ月連続のマイナスとなっている。消費税導入、消費税増税後はこれまでも必ず消費は落ち込み、景気は悪化して来た。しかも、従来の消費税増税分は、法人税減税のために、実質税収の増加にはなって来なかった。個人から企業への所得移転でしかなかった。税制は所得の公平性のための再分配である。しかし、過去の税制は、まさにこれを180度反対方向へ所得移転して来た。税制の本来の目的を歪めた結果が、巨額政府債務である。米国の巨額政府債務も同じだ。今では国家債務を破綻させないために、中央銀行が金利を押さえ込み、人為的に超低金利を継続させざるを得なくなっている。しかし、それは一方で、安易な民間の借金や資産の極端な偏りを生み出すことになった。歴史上、戦時の統制経済はこれまでにもあったが、現在のような平時の「統制経済」はかってなかったことだ。資本主義国ではあり得ないはずの中央銀行による株式購入まで日本にはある。そして、米国でも、本来市中金融機関間だけの短期資金調達市場である、レポ市場に9月半ば以来、連日、中央銀行が資金提供せざるを得ない状況が、なお続いている。中央銀行がこれを中止すれば、担保に使われる米国債の金利が急騰する。EU欧州連合にも、債務に喘ぐ国や金融機関があるため、日本と同じくマイナス金利を持続させざるを得なくなっている。資本主義では、金利や価格は市場が決める。そのためには「自由」が重要であり、それ故に、民主的だと主張されて来た。しかし、1971年に通貨が際限なく印刷可能となると、中央銀行による金利操作が金融バブルを生み出すようになり、その崩壊のたびに、中央銀行の存在が大きくなって行った。1970年代以後、資本主義国では国や中央銀行が経済の表舞台に出るようになり、共産主義国中国は、逆に1978年末から「改革開放」路線に大きく転換し、経済に資本主義を取り入れるようになり、大きな経済成長を遂げた。今では、その中国も、資本主義の他の国同様に資本主義の悪しき面まで取り入れたため、政府系を中心に民間巨大企業が巨額債務を抱える状態になっている。世界の経済、特に資本主義では、マイナスを含む超低金利でなければ維持出来ない状態にまでなってしまった。これは、英国イングランド銀行が出した過去700年間の金利の推移を見れば、避けられないものであることが分かる。何故、金利が低下し続けるのか、理由はいくつか考えられる。一つは生産性の伸びが鈍化していることだ。これは投資の減少をもたらし、資本の需要を減らすため、金利は低くなる。次いで、人口である。少子高齢化は労働人口の減少を招くため、金利には下方への圧力が加わる。28歳で米国ハーバード大学教授となった、元財務長官ローレンス・サマーズLawrence Henry Summers氏は、この現代の状況を「secular stagnation長期停滞」と呼んでいる。