釜石の日々

岩手県釜石市に移り住んで16年8ヶ月が過ぎ、三陸沿岸部の自然の豊かさに感動する毎日。

巨大企業の低い実質法人税負担

2016-07-11 19:17:01 | 経済
大阪に住む娘の話では、大阪は連日30度を超える暑さだと言う。今日の釜石は日中の最高気温が22度だ。海の方から気持ちのいい風が吹き、暑さは感じない。昼休みに甲子川沿いに出てみると、ハマナスの花が終わって、赤橙色の実がなっていた。今は遠野でも紫陽花が咲き、今頃の時期は咲く花も差がないようだ。相変わらず、日が刺す時もあるが、空には雲が多く、梅雨が明けるにはまだ10日はかかりそうだ。ただ梅雨が明けるとさすがの釜石も気温が上がって来るだろう。時々刺す日射しはもう強い夏の日射しになっており、たまに見る晴れ間にはもう空には積乱雲を認める。 2001年に小泉内閣が成立すると、現在、人材派遣会社のパソナグループ取締役会長である竹中平蔵氏が経済財政政策担当大臣に就任し、「規制改革」に乗り出し、グローバル資本主義、市場原理主義の政策を推進し、経済格差、企業格差の発端を開いた。「派遣」の範囲を拡大したのも同氏である。日本の産業構造の推移を見ると、新興国で製造業が隆盛になるにつれて、国内の製造業が減って行き、サービス産業が増加して行った。しかし、日本のサービス産業は生産性が低く、全体としての国内生産、GDPには増加が見られていない。かえって、派遣が拡大されたことで、就業率は増えたものの、実質賃金は低下している。2012年末からの第二次安倍政権では円安株高が演出され、個人の所得格差が拡大し、企業でも巨大企業は収益を得たものの、中小企業は苦しい状況に追い込まれている。中央大学名誉教授である富岡幸雄氏はかねてから法人税の不公平性を訴えて来られた。日本の法人税率は見かけは高いが、実際の企業負担は驚くばかりに低い。一時、ソフトバンクなどはわずかに法人税負担が500万円しかないことが注目されたこともある。様々な特別措置や租税回避策によって、グローバル企業ほど法人税が少なくなる、累進課税の逆転現象が起きている。本来なら国家に入るべき企業からの税が国庫には入らないため、税収が減り、国の借金が積み上がって来た。1989年の消費税導入の時点から、ほぼ一貫して、消費税と法人税は対となって、消費税が上げられた時には法人税が下げられている。現在、巨大企業は税負担を逃れて、景気低迷の中で、過去最高の利益を上げ、GDPの6割にもなる企業の内部留保を積み上げている。日本銀行がいくら国債を市中銀行から買い上げても、市場に供給された資金は回転せず、日本銀行の当座預金に積まれるだけである。貨幣が世の中を循環しない。現政権の経済政策が基本的に日本国内の経済を見据えたものではなく、ひたすら米国の要望に応えただけのものだからだ。誰もが今後の経済は好転しないと思うから、企業の将来に向けた設備投資は伸びず、余った資金は株に向かい、一時は株高が演出された。目の前の毎日の光景は変わり映えしないが、実際には日本の経済の屋台骨が大きく傾いで来ている。
ハマナスの実

新選挙民の保守化

2016-07-09 19:15:09 | 社会
ドキュメンタリー映画の監督でもあり、明治大学の特任教授でもある森 達也氏が教えている学生に尋ねたところ、9割が自由民主党を支持し、憲法は現在のままでいいと答えたと言う。6日の読売新聞は、「18、19歳は5割近くが自民党を支持している。18、19歳は安倍内閣の経済政策を6割弱が評価していて、30歳以上の世代よりも10ポイント以上高くなっている。」と伝えている。明治大学の井田正道教授によれば、「21世紀になってから若者は保守化している」と言う。若者は現在の生活に満足しており、世の中の変化を特に望んではいない。また、今の若者は「そう簡単に戦争は起きないよ」と楽観視しているとも言う。先の森 達也氏が「君たちは自民党支持なのに、半分以上が憲法はこのままでいいという。このねじれはどういうことか」と尋ねたところ、予想以上に何も知らなかったそうだ。同氏は「憲法を守りたい」と「自民党支持」がなんとなくイコールになってしまっているレベルなら投票しないほうがいい、と述べている。物が豊かで、島国の平和を享受して生まれ育った世代は、特に世の中を知らない未成年者では不満もなく、戦争への危機感など全く感じないのだろう。近い将来に自分たちに降りかかって来る現実を認識出来ていないようだ。学校教育でも現在は太平洋戦争についても以前とは大きく変わって教えられている。旧日本軍の「侵略行為」などは教科書でも記されなくなって来ている。現代は若者が保守化して、高齢者が革新的で、かってとは逆転していると言う。誰もが平和で豊かな生活を望む。しかし、現実はその生活の基盤である経済も見通しは悪く、今回の選挙で与党が勝てば、もう憲法改正に突き進み、国内の経済不満をそらすために、戦争に繋げられて行くだろう。歴史は常に繰り返される。メディアの凋落がそうした方向への足取りに拍車をかけている。毎年発表されて来た国境なき記者団による世界の「報道の自由度ランキング」は、日本は2010年には11位であったが、以後、年を追って下がり、今年はついに180カ国・地域中72位まで下がってしまった。「多くのメディアが自主規制し、独立性を欠いている」と指摘された。にもかかわらず、情報通信政策研究所の昨年の調査ではメディアへの信頼度は、テレビが67.3%であり、新聞は70.6%と高く、雑誌はわずか17.1%でしかない。しかし、現状はかえって雑誌の方がよほど掘り下げた記事を載せている。テレビと新聞は自主規制の最たるものになった。いずれにしろ選挙の結果は国民が甘受するしかないだろう。
紫陽花

悪化に向かう世界経済

2016-07-08 19:12:37 | 経済
先月、英国の国民投票でEU離脱が明らかになると、英国とEU双方の経済力の低下が世界的に懸念されるようになった。英国貨幣のポンドの価値が低下し、相対的に米国ドルと日本の円の価値が上がる。しかし、日本と米国の貨幣の比較では米国の中央銀行に当たるFRB、連邦準備制度理事会の利上げの気配がないことから、米国の景気は良くなっていないと判断される傾向が強まり、ドルよりも円に流れが向かい、円高を招いている。これは輸出大企業には好ましくないため、株価も下がる。英国ではEU離脱が決まってから、大手不動産ファンドには投資家からの償還請求が急増し、手元資金が不足し償還請求に応じられなくなったため、顧客取引を停止し、合計約91億ポンド(約1兆2100億円)の資産が凍結された。EUも中心になるドイツのドイツ銀行が資産1兆6400億ユーロ(184兆円)に対して、負債は1兆5800億ユーロ(177兆円)にもなっており、破綻が懸念されている。中国はじめ新興国の急激な成長で、生産設備が世界的に過剰となり、需要と供給のバランスが崩れている中でのこうした英国やEUの状況は世界経済のさらなる悪化に拍車をかける。景気が好転した時に行う利上げを米国は行おうとしていたが、容易にはそれを行えなくなってしまった。米国の利上げへの姿勢はもともと見せかけの景気に基づくものであったので、かえって米国の実体経済のためには利上げしない方がいいのだが。日本は本来やらなければならない産業構造の改革を怠り、斜陽輸出産業を保護することのみに傾倒し、世界経済の波をまともに受ける体質になってしまっている。参議院選挙が迫っているが、争点は憲法改正だけではなく、アベノミクスと言う経済政策にもある。自国経済よりも依存する米国の経済を助けるための異次元の金融緩和の責任を問わなければならない。体力の弱い地方の金融機関は異常な低金利によって危機に瀕している。地方にとってはこの地方金融機関が重要な存在である。一部は破綻を免れようと合併を進めている。都市部と地方の経済格差までがますます拡大しようとしている。6月末の日本銀行の資金供給量は400兆円に達し、過去最高となった。金利も資金供給量も共に記録を更新し続けているが、実体経済は何ら好転していない。日本銀行自体のバランスシートも悪化している。軍国日本の実現しか頭になく、経済をブレインに任せる経済音痴の首相が仰々しく名付けた「アベノミクス」はただ日本経済を破壊に向けて舵取りしているだけのようだ。
マツバボタン

長袖の7月

2016-07-07 19:16:03 | 自然
やはり梅雨の時期だけにほぼ毎日のように小雨や曇天が続く。今日などは気温も20度に満たず、寒くはないがとても半袖ではいられない。若い人には半袖の人も見かけるが、長袖の人の方が多い。四国で生まれ育ったので、7月に長袖でいることには違和感もある。と言うより、とても夏の7月のようには思えない。特に今年の梅雨は、少なくともこれまでは例年よりも日照時間が少ないように感じる。それでも夏草たちはたくましく、少し見ないでいると、あっと言う間に伸びて来ている。職場の裏山でも気がつくと葛の蔓が斜面の樹木を覆って来ている。木々の間からは小鳥たちのさえずりが常に聴こえて来る。今朝は家の近所からウグイスの声も聴こえて来た。夜には家の近くを流れる甲子川からカジカガエルの澄み切った声も聴こえて来る。庭では植物たちが大きく葉を広げ、そんな葉たちの陰から、桔梗やユリの花が遠慮がちに咲いているのが見える。9月には都合で、すぐ近くへ引っ越さなければならない。大きく育って、地にしっかり根を張った木々たちは諦めるしかないようだ。杏や紅葉、紫陽花、バラなどはもう見られなくなるかも知れない。新しい場所には大きな木々は移せないので、そうした木々がなくなると小鳥たちが来なくなる。それが今は一番残念だ。市街地を挟む南北の山が迫るので、動物もそうだが、小鳥たちもたくさん来てくれていた。カワラヒワやシジュウカラは必ず群れでやって来た。いずれもが三階の高さまで伸びた紅葉の木に群がっていた。釜石へ来て間もなくの頃に、この庭に偶然、これまで一度も見たことがなかった黄レンジャクが1羽やって来た。岩手に来る前の愛知県では赤レンジャクは何度か見ていたが。冬には必ずミソサザエがやって来た。スズメよりも小さく、丸みのある可愛い小鳥だ。濃い褐色の羽根のために、木陰では注意して見ないと、見逃してしまう。山に近接する釜石はたくさんの野鳥がやって来るが、それも大きな木がなければ、近くには来てくれない。一時はウグイスも毎日のように来ていた。人間にとっては夏らしくない7月だが、ウグイスには適温の7月なのだろう。
薔薇

7世紀の朝鮮半島と日本

2016-07-06 19:12:20 | 歴史
九州王朝が存在した7世紀の朝鮮半島では北から高句麗、新羅、百済の三国が対立していた。現在の中国東北部をも領有していた高句麗は紀元前37年に建国されているが、国境を接した中国とは常に戦いが絶えなかった。高句麗の力が及びにくい朝鮮半島の南部に4世紀に入り、百済と新羅が時をおかずにそれぞれ建国され、これら三国が互いに牽制し合うことになる。領土が広く中国と接する高句麗は7世紀には中国との戦いに勝っていた。4世紀の高句麗好太王碑にも記されているように北部九州中心の倭国は度々朝鮮半島に侵略を企てていた。7世紀半ば三国は互いに牽制し合っていた中で、高句麗は隋や唐の軍隊を負かすほどの軍事力を持ち、新羅は唐と同盟を結ぶことで、他の二国の脅威に対抗した。660年に百済は唐・新羅連合軍によって滅ぼされてしまう。その後百済の残党と倭国が白村江の戦いで敗れると、百済が滅亡して8年後、唐・新羅連合軍は高句麗王室の内紛に乗じて高句麗を攻撃し、滅亡に追いやった。この後は朝鮮半島を新羅が治めることとなる。近畿王朝の時代となった9世紀には、新羅が九州を何度か攻撃している。しかし、9世紀の終わり前後には後百済や後高句麗も一時建国されるなど、新羅も次第に弱体化し、後高句麗の武将が興した高麗に帰順したことで、935年に滅亡し、朝鮮半島は高麗が統治する時代となる。朝鮮半島は半島内の国家同士の対立と、半島外からの中国や日本からの脅威にもさらされていた。1592年には秀吉による朝鮮出兵が行われ、5年後にも再出兵が行われている。1910年についに朝鮮半島は日韓併合で日本の統治下におかれることになる。朝鮮半島の歴史を見ると、平和が長く続く時代は少なかったようだ。古田武彦氏によれば、白村江の戦い当時の倭国側、九州王朝の天皇は斉明天皇ー「さいめい」ではなく、「さいみょう」ーで、白村江の戦いで九州王朝が敗れたため、斉明天皇は四国の伊予に逃れ、そこに宮殿を設けた。現地には幾つかの地名や伝承が残されている。日本書紀は「斉明(さいめい)天皇」と「皇極天皇」を同一の女帝としているが、二人はとても同一人とは思えないほど対極的な描かれ方をしている。実際には近畿王朝の「斉明(さいめい)天皇」は存在せず、九州王朝の「斉明(さいみょう)天皇」が存在していたのだ。
薬師公園入り口の額紫陽花

腸での免疫

2016-07-05 19:17:35 | 科学
奈良先端科学技術大学院大学のバイオサイエンス研究科新藏 礼子教授は免疫システムの研究をされている。人の腸はその免疫の6〜7割を担っていると言われ、同教授は腸の免疫に注目されている。このほどマウスでだが、ある抗体が腸の中で悪玉菌をターゲットとして、善玉菌には影響しない免疫の制御の仕組みを見出し、海外科学誌電子版に発表された。身体の重要な免疫を担う腸内細菌は年齢とともに変化し、善玉菌であるビフィズス菌などは年齢とともに減少して行く。昨日、職場の方の知り合いが食道の癌で、容貌までが2ヶ月前とはすっかり変わってしまったと言うお話を伺った。家庭での不幸が重なっていたそうだ。50代半ばの人のようだが、現代ではまだまだ働き盛りの年代だ。人の体内では毎日5000個もの癌細胞が発生していると言う。にもかかわらず、健康でいられるのは免疫力によって発生した癌細胞が成長しないように死滅させてくれているからだ。しかし、現代は様々な要因がこの免疫力を低下させている。その結果、日本人では2人に1人が癌になり、3人に1人が癌で亡くなっている。免疫力を低下させる大きな要因の一つはストレスだ。そして、同じように大きな要因であるのは食事の変化だろう。戦後、日本人の食事は大きく変わった。そのために腸内細菌にも変化が起き、免疫力の低下を招いている。食事量の2割は腸内細菌の餌になっているそうだが、食品添加物の多くなった食事は腸内細菌を減らし、結果的に実質的な摂取量が現代人は多くなってしまっている可能性があり、同時に免疫力も低下しているのだろう。家畜は体重を増加させて、食肉として販売するために、病気を防ぐ目的もあるのだろうが、抗生物質を接種させている。抗生物質によって腸内細菌が減少していて、そのために餌の多くが家畜の体重増に使われることになっているようだ。野菜は栄養のバランスの意味でも重要だが、腸内細菌の餌としてもとても重要のようだ。癌は現代医学でも早期発見しか手立てがない。そして何よりも癌にならないように自分で気をつけるようにしなければならない。ストレスを避け、腸に優しい食事を心がけることなのだろう。
磯崎稲荷

梅雨時の県内を移動して

2016-07-04 19:18:35 | 文化
やはり梅雨時は東北も天候が安定しない。晴れる日もたまにはあるが、曇天が多く、1日でも時間とともに大きく天候が変わったりする。晴れると、入道雲が大きく張り出し、さすがに7月に入ったことを思い出させてくれる。気温も不安定で、25度を超える夏日になる日もあれば、最高気温が20度に至らない日もある。湿度だけは高く、少し身体を動かすと汗ばんで来ることが多い。どこへ出かけても紫陽花が目立つようになった。梅雨時の代表的な花は紫陽花なのだろう。先日も山間部の道を車で走っていると、タヌキが轢かれていた。タヌキは動きに敏捷性が欠けるのだろう。北海道ではキタキツネが犠牲になっていたが、東北はタヌキが犠牲になることが多い。山が豊かなので、動物たちも多く生息出来る。毎朝、庭には小鳥がやって来て、さえずってくれ、気持ちを和ませてくれる。釜石は岩手県下でも市街地が山に接近し、細長く展開しているせいで、市街地にいながら自然を満喫出来る良さがある。しかし、釜石に限らず、沿岸部はどうしても内陸とは距離があり、広い県であるため、移動に時間がかかる。現在、急ピッチでその内陸と結ぶ自動車道が造られているが、すでに開通している自動車道は無料のために誰もが利用できる。ただそのために、せっかくの自動車道もすでに完成して有料の秋田自動車道と比べても、全体の流れが遅い。市街地でもせっかくの二車線が十分に機能していない。岩手の多くにもう慣れて来たが、この交通事情だけは未だに違和感を覚える。長い渋滞が簡単に出来てしまう。先頭車が後続車に道を譲ると言うことがほとんどないからだ。数台車が後続すると、もうその後にさらに続く車は渋滞を強いられる。同じように広い北海道ではこうした渋滞はあまり見かけることがなかった。後続車を気にしないで、マイペースで走る人が多いようだ。長距離を移動しなければならない岩手だと、必要以上に移動に時間がかかってしまう。のんびりと周囲を楽しみながら車を走らせるのはとても気持ちがいいが、急ぐ車もあるので、お互いのペースを尊重しあった運転になってくれればいいのだが。地方は高齢者にとっては車は必須である。それだけに多くの人が道路を利用する。都会以上に道路を利用する年齢層の幅は大きくなる。全国一律の交通指導ではなく、その地域にあった交通指導があれば、と思った。
紫陽花

日本銀行の異常な国債保有

2016-07-02 19:15:08 | 社会
6月30日に日本経済新聞は電子版に「日銀・政井委員が就任「黒田緩和を支持」 ブレーキ役不在懸念」と題する記事を載せた。現在まで日本銀行が推し進めて来たマイナス金利政策に反対していた石田浩二委員が退任し、交替に黒田日本銀行総裁の方針を支持する新生銀行出身の政井貴子氏が就任する。もはや日本銀行の政策委員会ではマイナス金利にブレーキをかける人がいなくなった。安倍首相の金融緩和政策に沿わない白川前総裁を黒川総裁にすげ替え、ついには政策委員までが異次元の金融緩和に同調する人で大勢を占めるまでになってしまった。日本銀行のホームページによれば、6月20日時点で日本銀行が保有する国債は369.7兆円にもなっている。日本銀行の総資産426.4兆円の87%までが国債になってしまった。GDPが500兆円ほどで、税収が60兆円しかない国の中央銀行が異常なまでの国債保有になっている。識者はもうこうした日本銀行の姿勢は変更が容易ではないと見ている。国債の買い取りを止めると、国債価格の暴落につながる恐れがあるからだ。価格が暴落すれば、金利は高騰する。要するに国債の買い取りを止めたくとも、止められない状況になってしまった。資本主義経済ではものの価格は市場で決まるが、現在はもう国債市場は機能しておらず、日本銀行が高値で買い取る異常な事態になっている。異次元の金融緩和で市中に貨幣が流れ出すことをアベノミクスは謳ったが、貨幣は市中へは流れず、一部巨大企業や富裕層の手元に溜まって行くばかりである。昨日の時事通信は公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が昨年度に株式への投資で5兆数千億円の運用損を出していたことを報じた。現政権になって、国民から集められた年金保険料をより多く株式に投資出来るように変更させられた。政府の失策に誰も責任をとらず、失策の結果だけが国民に負わされる。しかも国民の中で特に貧しい層に相対的に大きな負担がかかる。現政権は国民から預かった貴重な年金保険料を円安株高の自己の方針を推し進めるために強引に危険な株式にも投資出来るように変えてしまった。そこで損失が出ても、年金支給額を下げるだけで、誰も責任はとらない。しかし、こうした為政者を選んだのも国民だ。
柏葉紫陽花

アジアのインフラ開発

2016-07-01 19:18:46 | 経済
鳩山由紀夫元首相は中国主導の国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の「国際諮問委員会」の一人として就任を依頼された。鳩山元首相は前向きのようだ。これに対して、批判する声が出ている。AIIBには英国、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、ニュージーランド 、韓国、オーストラリア等57か国が創設メンバー国として参加氏、さらに24か国が参加を希望している。しかし、日本は米国とともに参加していない。日本政府は、中国主導のAIIBはガバナンス(統治)などに懸念があるとして、参加を見送っている。AIIBは発展途上国のインフラ整備を目的としており、欧州の主要国もこぞって参加している。「国際諮問委員会」を設けることで、さらに「ガバナンス」への懸念を払拭しようとさえしている。そうした動きに批判的になるのは、あくまで不参加を決め込んでいる日本政府の立場を単純に擁護しようとするものだろう。日本はすでに米国とともにアジア開発銀行(ADB)を設立しており、その意味でも新規に同様の目的であり、中国が主導するAIIBには組したくないのだろう。しかし、アジアの一員である日本は、将来の経済的利益を考えると、これまでのような米国一辺倒ではなく、中国とも歩み寄る必要がある。残念ながら、現政府や官僚はそのための懐の広さを持ち合わせてはいないようだ。欧州各国はAIIBに参加することで、今後発展の期待出来るアジアのインフラ開発で経済的利益が見込めると踏んで、積極的に参加している。現在、中国は市場が過熱したため、設備投資が過剰となり、景気が一気に低下したが、調整期間を過ぎれば、まだまだ市場としての奥行きを持っており、経済発展も続けて行くだろう。欧州や中国周辺のアジア諸国はその点も十分見抜いているようだ。欧州は米国と中国のバランスをとりながら、双方にコミットしている。米国経済は金融で延命を図っているが、それはあくまで延命であり、かっての大英帝国が沈下したように世界をリードして来た米国も傾きかけている。日本はそんな米国に盲従するばかりだ。10年単位でこれからは新興国の発展が見られて行くようになり、代わって日米が沈んで行くだろう。
スカシユリ