ヒヨちゃんが行く!

松本市在住「大平滋子」の写真と詩のブログ

榾火(ほたび)

2013-11-29 | ピープル



マッチを擦って
堅めに絞った新聞に火をつける
松や杉の葉を集めた上に薪を延べ
それをそっと差し込む
頃合いを見計らって
優しく団扇で火をあおる


焰は赤や朱に姿を変え
時々青く、緑に輝いた

そうして湯が沸けば
熱いのゆるいのと
五右衛門風呂を跨いだ

湯はご馳走だったころの
とおい昔の
まだ心に残る
その榾火の
温とさ


うすら

2013-11-28 | ピープル



雪待ちの空は
魚の腹の色で
粒状の何かしらが
鱗になって
ザワザワと
蠢いている




あんなに雲の底は
暗いのに
サンゴの授精のような
白く灰色のかがやきを
30㎞先の
山頂に見ることができる




ああ
それは気配というものだよ
ゴムがちびた杖を大地に刺しながら
カタカタ老婆が笑う

今朝方うすら雪が積もったがね
あんた寝てたでしょ
その後は雨だった

図星だね
雪待ち顔の気配が
漂っている


 

賀状

2013-11-23 | ピープル



そういうシーズンが来たと
コンビニのレジ横の
賀状の種種様々

赤いバイクの郵便局員が
「今日の分売れた?」
と言い合って
釣瓶落しの町を
すれ違っていく

来年の干支が
ふいにわからなくなった
自分に驚きながら
正月が来ることを
まだ
漠とであるが
感じてみる

冬の西日

2013-11-22 | ピープル




山際すれすれの光が
影を際立たせ



ため息のような吐息にも
影を作る



私の背丈には
もう届かなくなった冬の西日の
まだ空とビルの窓を染め

嗚呼
どうしようもなく
その消息が
知りたくて

この黄昏れた町を
走り出す
行き先も
見えなくなった
残照の
この空の下を