ヒヨちゃんが行く!

松本市在住「大平滋子」の写真と詩のブログ

痛み

2015-01-16 | ことば



痛いとは言えなかった
診察台の上
呪文を描くように
中指で「痛」と書く

病垂に甬(用いる)
何を用いるのだろう
痛い

まだ処置は終わらない

の字が中指の先で
踊り出す

涌(わく)
通(とおる)
樋(とい)
踊(おどる)
蛹(さなぎ)
誦(よむ)
鯒(こち)

ようやく処置から解放されて
今度は薬指で
「痛」と書く

通り過ぎねばならない痛みが

人生を豊にしてくれればと
祈るように降りた
診察台の少し暗めのベージュ色

 




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