なだれ込み研究所の一日

物語作家を目指すもの書きが、ふとしたことから変な事務所で働くことに!
日々なだれ込んでくる人や仕事、モノやコト観察記。

生まれてきたからには

2006-07-16 00:52:22 | 読書日記
森絵都の『風に舞いあがるビニールシート』(文藝春秋刊)を読んだ。短編連作6作のうち2作を読み終えた時点で、直木賞受賞を知った。
児童文学出身で、1作目からすべてリアルタイムで追ってきた作家である。

森絵都の描く世界には、懸命に突き抜けようとする人たちが登場する。突き抜け方のポイントが変わっていたり、世間の価値観とちょっとズレているため、変わり者っぽくも見える。そのズレは天才的な、社会を動かすようなズレではなく、セコいズレで、たぶん私もそういうズレ方をしているので、毎回共感するというわけだ。
こんな小説を書きたい、と思った作家の一人である。

一昨日は、S木くんから紹介された『北八ツ彷徨』(山口耀久著・平凡社刊)の一編を読んだ。「八ヶ岳へのいざない」。実体験の極めて少ない私は、当然山など登ったことはないが、小説の中では何度も山に登り、森に入り、冒険を重ねている。
イメージだけの世界が、目の前にひらけるような文章だと思った。

その後、S木くんが、山について、森について、熱く、ベラベラと語ってくれた。話を聞いていたら、何だか私も山に登ってみたくなった。その場に自分が立ち、何を感じるか知りたくなった。
「せっかく豊かな山や森のある日本に生まれてきたのだから、登らなくちゃいけません」
S木くんが言ったとき、私の好きな作家三田誠広の言葉を思い出した。
「人間として生まれてきたからには、ドストエフスキーは読んでおかなくてはいけない」
『罪と罰』の、その延々と続く情景描写に物語の核心に入る前に何度も挫折しており、いまだ読破していない。

さて、私のリアルでの山歩きは、生きているあいだに実現するのかな。
「人間として生まれてきたからにはしたいこと」
そういう意識で考えたとき、やりたいと思うことが最近どんどん増えている。困ったものだ。事情を優先しているひまなど、あるのかな。

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